ダイヤ、走り出す
四月、雪解けの匂いがまだ残る高校の入学式の日。
「よっしゃ、今日も軽く一発やってくか」
主人公・黒崎ダイヤ(くろさき だいや)は、地元ではちょっと知られた“しょうもない不良”。
中学時代は勉強も部活もろくにせず、仲間とつるんではコンビニでたむろしたり、先生に呼び出されたり…いわゆる、"走ってばっかの人生"を送っていた。
ただし、「逃げ足」だけは誰にも負けたことがない。
その日も入学式をサボって、裏の自転車置き場で先輩のバイクにちょっかいを出していたところ──
「おい、そこの一年。何してんだ?」
声がした瞬間、ダイヤは反射的に走り出していた。
見知らぬ上級生。だが、ただ者じゃない。
──速い。
逃げる。
路地を曲がる。フェンスを越える。
でも、その足音はずっと背後から離れない。
「クソッ…誰だよあいつ…!」
いつもなら、とっくに振り切っているはずだった。
だけど、その“先輩”はダイヤのすぐ後ろに迫り──
「捕まえたっ」
その腕は、まるで獲物を逃がさない野獣のようにダイヤの肩をつかんだ。
「お前、どこの中学だよ。足、速えな。陸上やってたのか?」
「…やってねーよ」
「嘘だろ? そのスピード、もったいねぇな」
ダイヤはそのとき、初めて「追いつかれる」という経験をした。
悔しい。
でも、どこか…胸が熱くなった。
「お前さ、陸上部 入れよ。…面白くなるぜ?」
その日から、ダイヤの人生は少しずつ走り出す。
不良がオリンピックを目指すなんて、誰も信じない。
でもダイヤは思った──
(オレ、まだ誰にも「本気」で走ってねぇ)
四月、雪解けの匂いがまだ残る高校の入学式の日。
「よっしゃ、今日も軽く一発やってくか」
主人公・黒崎ダイヤ(くろさき だいや)は、地元ではちょっと知られた“しょうもない不良”。
中学時代は勉強も部活もろくにせず、仲間とつるんではコンビニでたむろしたり、先生に呼び出されたり…いわゆる、"走ってばっかの人生"を送っていた。
ただし、「逃げ足」だけは誰にも負けたことがない。
その日も入学式をサボって、裏の自転車置き場で先輩のバイクにちょっかいを出していたところ──
「おい、そこの一年。何してんだ?」
声がした瞬間、ダイヤは反射的に走り出していた。
見知らぬ上級生。だが、ただ者じゃない。
──速い。
逃げる。
路地を曲がる。フェンスを越える。
でも、その足音はずっと背後から離れない。
「クソッ…誰だよあいつ…!」
いつもなら、とっくに振り切っているはずだった。
だけど、その“先輩”はダイヤのすぐ後ろに迫り──
「捕まえたっ」
その腕は、まるで獲物を逃がさない野獣のようにダイヤの肩をつかんだ。
「お前、どこの中学だよ。足、速えな。陸上やってたのか?」
「…やってねーよ」
「嘘だろ? そのスピード、もったいねぇな」
ダイヤはそのとき、初めて「追いつかれる」という経験をした。
悔しい。
でも、どこか…胸が熱くなった。
「お前さ、陸上部 入れよ。…面白くなるぜ?」
その日から、ダイヤの人生は少しずつ走り出す。
不良がオリンピックを目指すなんて、誰も信じない。
でもダイヤは思った──
(オレ、まだ誰にも「本気」で走ってねぇ)