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歌おう!
そして週が明けた月曜日
昼休みの中庭には、いつものように少年の歌声が響いていた。
穏やかで、どこまでも伸びやかで——何よりも楽しそうな歌声。
ふと、その笑顔に、幼い頃の妹の姿が重なった。
——あの日の妹は、何よりも楽しそうだった。
少女「あ……あは」
その瞬間、胸の奥で何かが弾ける。
——そうか! そんな簡単なことだったんだ!!
少女「あはははは!」
肩の力が抜けるように、少女は声をあげて笑った。
目尻に浮かんだ涙を、慌てて袖で拭う。
少年「おい? どうした」
少女「ううん、何でもない!」
息を吸い込む。
心が軽い。
そうだ、楽しむだけでいい。
あの頃のように——
少女「ね、歌おう?」
その日の帰り道。
夕焼けに染まる空の下、口の中でのど飴が躍る
それを久しぶりに楽しみながら思う
(発声練習やり直そうかな)
久しぶりに、思う存分歌った。
喉は少し痛むけれど、心は軽かった。
風が吹く。
微かに残る自分の歌声の余韻とともに、ふと考える。
(……あの子(妹)は、何であんな歌を?)