皆さんの税金です すぐには払えません
特別定額給付金 (とくべつていがくきゅうふきん)は、 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済的影響 への緊急経済対策の一施策として、 2020年 ( 令和 2年)日本に 住民基本台帳 がある 世帯主 に一人10万円の 現金 を給付する制度、またはその給付金である。
基準日の2020年(令和2年)4月27日において、日本の住民基本台帳に記録されている者で給付対象者1人につき10万円。
木花咲夜は 43歳
就職氷河期世代を対象にした 採用試験で令和2年から新規採用となったバツイチ女性
高校1年生の娘 桃子 と二人暮らしだ
新採研修を終え配属されたのは 保健福祉部厚生課地域福祉係だった
厚生課は 保護士や民生委員 戦没者家族の会 などを統括する地域福祉係と 生活保護係の二つからなる課である
咲夜は民生委員の係となるが 10万円の給付金の担当が 地域福祉係になったと知らされる
誰もが未知の給付金を 市民全員に渡すことができるか
地域福祉係の健闘の記録です
「はい こちらイチゴ市役所 厚生課地域福祉係です」
この名前を言うのは二度目だった。一度目は、マニュアルを見て、自分が勤める係を確認するために声に出した昨日のことだ。
だから、実際に電話に出るのは今回が初めて。
咲夜は 思いっきり通る声で 思いっきり愛想よく言った。
しかし、かえってきたのはキンキンと耳に響くだみ声だった。
『ちょと、10万円はいつくれるの?
昨日 あべが国民全員にくれるって言ってたけど、今週中にははいるの』
声の感じは30代くらいだろうか。体の大きく肥えた藍田に似ている。
ちなみに、藍田は 娘の通っていた小学校のモンペ母だ。
「イチゴ市もコロナの給付金を皆様にお支払いするため準備をしている最中です。申し訳ありませんが、準備ができ次第 市のホームページに載せますので もう少しお待ちください」
あくまでも好意的に満面の笑顔で答えた。今朝渡された 給付金のマニュアルだ。
マニュアルと呼べるものなのかどうか謎だが、これしか配られてはいない。
『はあ?あべがすぐにくれるって言ってたんだけど、どんだけまたせるの?』
あべ?だれ?
「申し訳ありません。まだ、国の方から 詳しい話が降りてこないので イチゴ市もどういう風にお支払いするか検討している最中でして」
『この、のろま
そりゃアンタラ公務員はいいわよ、税金で給料もらってられるんだから、でもね 私ら 民間は、コロナで生きてくのも大変なんだけど。あんたらにはそんな気持ちわかんないでしょう。
給付金は 国の税金から配られるんでしょう?なら、あんたらの懐は全く痛まないんじゃない。
さっさと仕事しろよ。この。無能
それで、いつ頃 お金くれるって言う書類を送ってくれるの?』
突然の怒号。
『ともかくさっさと仕事しろ。てめえら公務員だと思って 民間人を馬鹿にしてんだろう。
ともかくさっさと払えよ』
ガチャン
ぼんやりしていると 前の席の丹下さんがジーッとこっちを見ていた。
「なんか、怒られました」
醤油顔で痩せすぎの丹下さんは薄い表情を全く崩すことなくゆっくりと頷いた。
「これからは、戦場ですから。
覚悟してください」
「覚悟ですか?」
「新規採用なのにこんなところに来ちゃったっていう覚悟だよ」
桂馬の方向に座っている根本補佐が明後日の方向を見ながら言った。
「でも、この給付金の話って、昨日のニュースで初めて知ったんですけど。
皆さんは ずっと前から知っていたんですか?」
「私は、テレビを見ていないので、今日 職場に来て知りました」
丹下さん。
「もしかしたら、総理の思い付きで、国の役人も知らないんじゃね」
そんなもんなんですか、根本補佐?
「まあ、課長が税務課との戦いに負けて 給付金の係を引き当てちゃったのが 不運の始まりだからさ。
木花さんが地域福祉係に配属になった時は もうちょっと楽な係のはずだったんだけどね」
ちょっとふくよかな 綺麗どころのおばさんと言う感じの御手洗監査が隣の隣の席から言った。
そんな感じなんですか?
「まあ、まだ何に国から降りてきてないんで、ただ謝るよう 市長からの伝言だから」
根本補佐の言葉が終わらないうちに また電話が鳴った。
これは 約4か月の イチゴ市役所保健福祉部 厚生課地域福祉係の記録です。
これを読んだ方々、自分はこんな行動をしていませんでしたか?