96色 編み出せ! 商店街繁盛計画!3
「では、早速ですが、質問の方をいいでしょうか?」
「ああ」
私達はもう一度席に座ると、メガネくんに聞く。
「メガネくんの情報を頂いてもいいでしょうか」
私の質問にメガネくんは答えてくれる。
「僕の家は本屋だからね、本屋をみてきたんだが驚いたのが『他国語版の漫画』が置いてあったね」
「たこくごばん?」
「君に分かるようにいうなら、翻訳版、……いや、これでも分からないかい?」
「えーっと、他の国の人にも読める言葉でかかれたものってことかな?」
「ああ、それだ」
メガネくんの言葉を緑風くんがさらに分かりやすく説明してくれて、アカリは「なるほど」と納得する。
「あれ? でも、他の国の人に読めるならわたしたちは読めないよね? だって、わたし他国語読めないし喋れないもん!」
「ぼくも」
「自身満々にいうことじゃないだろう……」
自身満々にいうアカリと緑風くんにメガネくんは溜息交じりに返す。
「まあ、例え読めなくても、コレクションという名目で買う人はいると思うので、それはかなり面白い売り方ですね」
「へえーそうなんだ」
私の説明に二人は感嘆の声を上げる。
「それをみてメガネくんは何か対策は考えているんですか?」
「ああ、まあ、対策って程ではないけど、少しお店の『見せ方』を変えようと思ってね」
「見せ方ですか?」
「扱う商品は変わらないけど、配置や置き方を変えようと思ってね」
「なるほど、入り口などの商品でもお店の入りやすさは変わりますからね」
「そういうことさ」
メガネくんの所は問題なかったみたいですね。
「あの~」
「? はい、どうしました?」
私達で話を進めていると、抹消さんが気まずそうにいう。
「もしかして、わたしたち必要なかった感じかな?」
「そうですわね、先程から話に入れてませんからね」
くるくるお嬢様も同じことを思っていたのか、優雅に紅茶を飲みながらいう。
「おっと、これは失礼しました。 もちろん皆さんにもお願いしたいことがあります」
「ほんと!」
私の言葉にアカリは目を輝かせながらいう。
「私やトウマくんのお店は大きな変更点はありませんが、スミレのお店は何かイベントなど大きなものをやりたいと思いまして」
「きいてないわよそんなこと」
「はい、今云いましたからね」
驚くスミレに私は冷静に返す。
「ケーキ屋兼喫茶店というスミレのお店の特徴を利用して、何かイベントなどをやれればと思っているんですが、これといったのが思い付かなくてそこを皆さんに考えて頂きたくて」
「まかせて! 今はぜんぜん思いつかないけど、がんばってかんがえるよ!」
「堂々ということではないけどね」
「考える人が多ければ、その分大きなアイデアが生まれると思います」
私達はイベントの内容を考える。
「サンタさんカッコウをしてのケーキ販売とかどう?」
「時期外れにも程があるだろう……」
アカリは意気揚々というけど、メガネくんに正論を云われて「うっ……」と言葉を詰まらす。
「確かにサンタさんは時期外れですが、かなりいい案だと思います」
「なに? コスプレでもやるつもり? ワタシのお店はコスプレ喫茶じゃないわよ」
「!?」
スミレの発言に数名の人が反応した気がした。
「それだよ!」
「え?」
抹消さんが席を立ちいう。
「コスプレ喫茶ならぬ、メイド喫茶だよ」
「!?」
抹消さんの言葉に今度は緑風くんがビクリと大きくカラダを揺らせた様にみえた。
「メイドさんの格好をしての接客をするんだよ」
「それはいい案ですわね」
「わーい! たのしそう!」
「イヤよ」
盛り上がる三人にスミレはバッサリと返す。
「ええー! なんで!?」
「アナタたちはいいかもしれないけど、それと、なぜか働く前提になってるけど、ワタシがしたくないわ、そんな恰好」
スミレは顔を横に向けながらいう。
「でしたら、先輩にも手伝って頂きましょうか」
「えっ!?」
突然の飛び火に先輩は驚く。
「センパイにメイド!?」
「いえ、先輩には執事の格好をして頂きます」
何やら勘違いしたスミレに訂正する。
「空いている時間でいいので、先輩に執事の格好で接客をして頂きたいのですが、お願い出来ますよね?」
「あれ? ちょっと強制になってない?」
私は先輩に満面の笑みを向けると先輩は渋々承諾してくれました。
「先輩の執事姿がみれるなら、メイド姿になるくらい安いもんですよね?」
「ええ、やすいわ」
さっきとは打って変わって、スミレはあっさりと承諾する。
「という訳です、トウマくん達にも協力して頂きたいのですが?」
「ちょっと、恥ずかしいけど、イベントなら仕方ないね」
「わーい! マルちゃんのメイド姿がみれるなら安いもんだよ~」
ノワルの目的が不純な気がしますが、今はいいでしょう。
「執事服いいね!」
「……ん」
緑風くんも乗り気みたいで欠伸少年に語り掛けますが、欠伸少年は興味がないといった感じに返す。
「ねえねえ、マルウチさん」
「はい、なんでしょう?」
抹消さんは私にこっそりとあるものをみせてきた。 私はそれを確認すると、緑風くんに向き直り言い放つ。
「緑風くんにはメイド姿になってもらいましょうか」
「…………え?」
一瞬の間を置き、緑風くんは私の云った言葉が理解出来ないのか固まる。
「……んん? えーっと、どういう意味かきいてもいいかな?」
緑風くんは頭の上にハテナを浮かべながら私に聞いてくる。
「今先、いいものを見せて頂いたので使わない手はないと思いまして」
「えっ? みせていただいたってなにを?」
「こちらを」
緑風くんの問に私は抹消さんが手に持っている端末を指さす。 それをみた緑風くんは何かを察したのか顔を引きつらせる。
「えーっと、そこにはもしかしてもしかしなくてもなにか写ってるのかな」
「はい、『緑風くんのメイド服姿』がバッチリと写ってましたね」
「うぎゃっ!!」
私の言葉を聞いた緑風くんは謎の奇声を発する。
「さて、話も纏まりつつありますので、次は服の調達ですね」
「あれ? まとまったのかな?」
「服に関しては問題ありませんわ。 ワタクシの屋敷でご用意できますので、それをお使いください」
「もしかして話が進んでるのかな?」
「また、クロロンのメイドさん姿がみれるんだね。 楽しみだね、ねえ、シアン!」
「……ん」
「ぼくの声は届かないのかな?」
話を進める私達に緑風くんは必死にひとりで抵抗する。
「もしかして、緑風くん貴方は納得していない感じでしょうか?」
「もしかして、みんなは納得してる感じなのかな?」
私の質問に首を大きく傾げながら聞き返してくる。
「そうですか、なら、仕方ありませんね。 トウマくんスミレ、ちょっといいですか?」
「?」
私は席を立ち二人を離れた場所に呼び寄せる。
「ぼくもいっていい~?」
「どうぞご自由に」
ノワルも付いてきたので三人に話をする。
「ちょっと、ご相談が」
数分後、私達はみんなの下に戻ってきた。
「あ、おかえりーマル」
「お待たせしました。 ちょっとこちらを取りに行っていたので」
私は紙袋からあるものを取り出す。 それは、とあるおもちゃです。
「それは! 『仮面戦士勇気』の強化形態の『勇気サバイバー』になるための『勇気ランサーツヴァイ』!」
私の持ってきた物をみた緑風くんは目を輝かせるが、数名はよく分からないおもちゃをみて首を傾げている。
「ゆう……なんのこと?」
アカリが小首を傾げながら聞くと、緑風くんは興奮気味に答える。
「『仮面戦士シリーズ』でも名作と名高い『仮面戦士勇気』の最強形態になるためのアイテムだよ! はじめてなった時のあの名シーンといったら仮面戦士三大名場面っていわれてるんだ!」
「そうそう、サバイバーのチカラを手に入れて、愛する人の為に人を傷つけてでも目的を達成しようとする『勇士』を止める為に『勇気』もサバイバーのチカラを手に入れて二人が対峙するシーンだね」
緑風くんの説明にトウマくんが付け足すと、二人はさらに興奮して説明を続ける。
「うんうん、名言を名言で返すあのシーンが生まれたんだよね!」
「『俺はもう後戻りできない』」
「『なら、俺が戻してやる』」
ヒートアップした二人は名シーン再現をはじめた。
「テーテーテ♪ テーテーテ♪ テーテテテー♪」
「やーみーに♪ とーもーる♪ ゆーうきがー♪」
主題歌再現まではじめてしまいました。
「オープニング再現はそこまでにして話を戻しましょうか」
「あ、うん」
作品再現ごっこをしている二人の間に入り私は話を続ける。
「こちらを緑風くんに差し上げましょう」
「え!? いいの!?」
私の言葉に緑風くんは目を輝かせる。
「ですが、条件があります」
「じょ、じょうけんってまさか……」
「メイド服を受け入れることですね」
「うぐぅっ!!」
緑風くんは目を閉じ眉を潜ませる。
「ですが、もうひとつサービスがあります」
「?」
私はとっておきの言葉を口にする。
「村サ喫茶特別コーヒーゼリー無料券をお付けしましょう」
「味見をして感想をくれるなら、試作品も食べれるようにサービスするわ」
「やらせていただきます」
緑風くんはあっさりと承諾してくれた。 スミレにお願いして特別にこのチケットを作ってもらいました。
バシーンッ!!
お嬢様と抹消さんは勢いよく立ち上がると、スポーツ漫画の様な熱いハイタッチをする。
「そうと決まりましたら、早速、準備に取り掛かりますわ」
云うが早いかお嬢様はケータイを取り出して何やら何処かにメッセージを送って連絡を取っているみたいです。
数十分後、少し外が騒がしい音がしたと思ったら執事服に身を包んだみたところ私達と歳の変わらなさそうな青年が入ってきた。
「あ、イブキくん」
「皆様お久しぶりです。それとはじめまして」
アカリに名前を呼ばれて会釈を返すと、私達にもザ・執事といったお辞儀をする。 そして、緑風くんの前に立った。
「?」
「お待たせしました。 早速ですが、よろしくお願いします」
目の前でお辞儀をした青年に緑風くんは何の事かと首を傾げていましたが、それを、気にせずに緑風くんを肩に担ぎだした。
「んえ?」
突然担がれた緑風くんは状況が読めずに間の抜けた声を出す。
「んんん?? イブキくん?」
「では、皆様しばらくお待ちください」
ガチ困惑する緑風くんをよそに青年は私達に一言いうと、いつの間にか用意されていたカーテンで区切られた疑似更衣室の様な場所に入っていく。
「……え!? ちょ!? うそでしょ!?」
「嘘ではございません」
「まって! まって!? ほんとうにだめだからー!!」
「大丈夫です。 私がお手伝いしますので」
緑風くんの悲鳴が響き渡り、それを、聞いた数名が何故か血を流して突っ伏していましたが、数分後に悲鳴が収まり、カーテンが開かれ、そこから俯き顔を真っ赤にした緑風くんが台車に乗せられ私達の前に運ばれてきた。
「…………」
目をぐるぐるとさせながら緑風くんは子犬の様にカラダを縮ませる。
「ギャッハアァーーーーー!!!」
抹消さんは奇声を発しながら、何処からか取り出したカメラを構え凄まじいフラッシュの連写をする。
緑風くんは半ば諦めた表情を浮かべていましたが、顔を上げて一言いう。
「……ひとつだけお願いします。 かーさんには言わないでください!」
『ピロリン♪』
緑風くんがいうのと同時に電子音が鳴り響いた。
『ピロリン♪ ピロリン♪』
「あはは~ごめんねー」
シーニは苦笑いをしながらケータイの画面をみせる。 そこには、様々な表情と動きのパンダのスタンプが物凄い勢いで送信されてきていた。
『ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪』
「もうユウちゃんにはクウタくんの写真送っちゃった」
シーニは舌をぺろりと出して頭に軽く拳を当ててドジっ子の様なポーズをしますが、それが彼へのトドメの一撃となり、緑風くんの悲痛な叫びが商店街に響き渡った。




