93色 敵情偵察! ニューショッピングモール3
「またせたわね、そろそろいきましょうか」
スミレは家族への連絡を済ませ、ケータイを閉じると顔を上げいう。
「そうですね、何だかんだいっていい時間になってしまいましたもんね」
私は時計を確認してそろそろ喫茶店の予約時間が迫っていることに気付く。
「ここからだと、あの道が近そうだね」
トウマくんは手に持っているパンフレットの地図をみながら案内してくれた。
丁度、予約の時間に着いた私達はスムーズに入れて中に案内された。 そして、案内された席に着くと隣の席の人と目が合った。
「あー! マル!?」
目が合って少しの間の後、その人物は私を認識したのか席を立って驚き、私のことを呼ぶ。
「はい、マルです。 取り敢えず、周りに迷惑なので声を抑えましょうか」
「あ、ごめん」
その少女の声はお店中に響き渡って視線を集めたので、私は冷静に場を落ち着かせる。
「急に叫ぶからびっくりしたよ、あかりん」
「アカリさん、元気なのは良いことですが、場所を考えてください」
「う……ごめん」
一緒にいた女性二人にも注意をされてしまう。
「こんにちは、アカリ、やはりアカリ達でしたか」
「え?」
席に座りながら、ひとりで納得する私にアカリは小首を傾げる。
「私達もこのお店に入店する前に予約表に名前を記入しましたが、私達の数個程上の欄に身に覚えのある名前が記入されていましたので、もしかしたらと思いまして」
私は記入時のことを思い出しながら説明すると納得した顔をする。
「そうなんだ、わたしはマルの名前、全然気が付かなかったな」
「まだ、記入してませんからね」
アカリの天然ボケにツッコミ私は話を続ける。
「ですが、人数の欄には『3人』と記入してあって、シーニとネム少年と先程あったので、アカリ以外の二人はてっきり、くるくるお嬢様と緑風くんかと思ったのですが、違いましたね」
「え? シーニとシアンにあったんだ」
「え!? アナタ、クウくんのことをしってるの!?」
二人はそれぞれの驚きの反応をする。
「失礼ながら、貴方とは初対面でしたね。 私は丸内林檎と申します。 アカリのトモダチです」
私が挨拶すると、ノワル達も続けて挨拶をしていく。 その後、アカリ達も自己紹介していく。
「わたしは守目葉月だよ。 最近、あかりんたちの学校に転校してきたんだ」
「ああ、貴方がアカリの云っていた『記憶抹消少女』でしたか」
「あかりん!? どんな説明したの!?」
この前アカリが教えてくれたことを思い出しながらいうと、少女がアカリに詰め寄る。
「え、え~っと、クロロンの記憶を消しちゃった新しいトモダチっていったかな」
「間違ってないけど、ちがうよ! めちゃくちゃ誤解をうむよ!」
抹消少女はアカリの肩を激しく揺する。
「…………」
私がふとスミレをみると、少し複雑そうな顔をしていた。
「ところで、アナタたちはクウくんのなんなの?」
注文を取りに来た店員さんにメニューの注文を済ませた私達に抹消少女が質問をしてきた。
「クウくんとは緑風空太郎くんのことでしょうか?」
「あれ? もしかして、別人だった?」
「いえ、多分、同一人物だと思いますわ」
「マル……アナタ……また間違えたの?」
スミレが呆れた様に私をみてきますが、気を取り直して話を進める。
「緑風くんとは『飲み仲間』ですね」
「え!? 居酒屋でも行ってるの!? 未成年飲酒!?」
「りんごちゃん、それじゃ誤解をうむよ」
何の問題も無いはずですが、トウマくんに何故か突っ込まれる。
「じゃあ、アナタは!?」
そして、何故かパニックになっている抹消少女はスミレにターゲットを向ける。
「ワタシの実家によく飲みにきてコーヒーゼリーを食べてくのよ」
「ぬゅあ!? まさかの宅飲みでクウくんの大好物を提供!?」
「誤解の連鎖だね」
「ど、どうしよう!? クウくんがわたしの知らない女二人と『宅飲みコーヒーゼリーパーティー』をしてるよー!!」
「ハヅキさん落ち着いてください。 なんですの、そのマニアックなソムリエが集まりそうなパーティーは」
乱心している抹消少女をくるくるお嬢様が落ち着かせる。 それを横目に私はアカリに気になっていたことを聞く。
「では、こちらからも質問いいでしょうか?」
「うん、いいよ」
「アカリ達は何故ここに?」
「わたしたちはね、新しくできたここに遊びにきたんだよ」
私の質問にアカリはプリンを美味しそうに食べながら答える。
「それとリーンがここのコーヒーゼリーを食べたいっていったからここにきたね」
「!?」
アカリの言葉にスミレが少し反応する。
「リーンとは抹消少女のことでしょうか?」
「なんかさっきより物騒な呼ばれ方になってる!」
私の呼び方に抹消少女は突っかかってきた。
「これは失礼しました。 なら、抹消さんでいいでしょうか?」
「いや! 根本から変わってないよ!」
抹消さんは何故かまた乱心状態になる。
「ごめんね。 りんごちゃんは人の名前を覚えるのが、超が付くほど苦手なんだ、本当にごめんね」
トウマくんが苦笑いしながら私の代わりに謝る。
「……まあ……納得したわけじゃないけど……それなら、仕方なくないけど、仕方ないか」
抹消さんはトウマくんの説明に渋々納得する。
「まあ、私達の目的とアカリ達の目的が似ていたことは驚きましたね」
「え?」
私の言葉に三人とも首を傾げる。
「私達もコーヒーゼリーが目的だったんですよ」
「え!? そうなの!?」
私の言葉にアカリは驚いて聞き返してくる。
「はい、こちらのコーヒーゼリーが絶品との口コミを聞いたので食べにきました。 抹消さんもお好きなんですね」
「わたしはクウくんの為に視察しにきたんだよ」
「え? そうなんですか」
彼女の意外な返しに、私は聞き返すと答えてくれる。
「クウくんはコーヒーゼリーが好きだから、もしここのがよかったら今度誘おうと思って」
「…………」
「それでね、クウくんの美味しそうに食べるかわいい笑顔を引き出すんだ……ぐへへ」
抹消さんはヨダレを垂らしながら顔をふにゃりと歪ませて笑う。
「は~楽しみだな~」
「…………ワタシの方が彼の笑顔を引き出せるわよ」
「?」
不服そうに黙っていたスミレが突然口を開きみんなの視線を集める。
「ワタシのコーヒーゼリーの方が彼の笑顔を引き出せるわよ」
「アナタなに? クウくんのなんなの?」
抹消さんは少し訝しげな顔をしながらスミレに詰め寄る。
「アナタこそナニよ、さっきから聞いていれば、緑風くんに馴れ馴れしいわね」
「わたしはクウくんの幼馴染だよ。 だから、アナタよりもきっと詳しいよ」
抹消さんは挑発する様にいう。
「わあ~お、すごい修羅場だね~」
「え? え!? もしかして、クロロンを取り合う、乙女のシレツな戦いがはじまっちゃうの!? キャーキャー♪」
アカリは何故か興奮していますが、私はこの場を抑える為に私はスミレをくるくるお嬢様は抹消さんを止める。
「スミレ、気持ちは分かりますが落ち着いてください」
「ハヅキさん、貴方もですわ、周りの迷惑になりますので静粛にですわ。 ついでにアカリさんも」
「へぇ?」
ほぼ飛び火ですが、注意されたアカリは間の抜けた声をだす。
「くぅ……わたしのしらない間にライバルが二人も増えてたなんて……」
ライバル? はて、何のことでしょうか? なんて考えていると私達の注文の品が届きました。 そして、私達は手を合わせて口々にいただきますというとそれぞれの品を口にする。
「ほう、これはなかなかコクがあって甘すぎず、苦すぎない絶妙なバランスでかなりいいまろやかな舌触りですね」
「…………」
私は感じた感想を口にするとスミレを確認する。 スミレはかなり驚いた様な悔しい様な表情を浮かべていた。 そして、少し考え込んだ後一度スプーンを机に置き口を開く。
「…………おいしいわ」
同じく喫茶店を経営する身として、スミレは素直に賞賛する。
「あはは~もしかして、完敗ってやつ~?」
「ノ、ノワル……」
「うるさい、まだ……まけたわけじゃないわ」
挑発する様にいうノワルをいつも通り強気な言葉で返すけど、動揺を隠せてないみたいです。
「まあ、負けを認める訳ではありませんが、事実を受け止めるのは大切です」
私は冷静に返し、アップルティーを口にする。
「こちらはかなりいい甘さが引き立ってますね」
「先程から思っていたのですが、細か過ぎる分析ですわね。 もしかして、普通に味わいにきたのではないのですか?」
冷静に分析していると、くるくるお嬢様が聞いてくる。
「おっと、これは失礼しました。 軽くですが、説明します」
私はシーニにした説明をアカリ達にもする。
「なるほど、だから、さっきからなにかと目を光らせてたのですね」
「すみません、つい癖で」
お嬢様はやっと納得がいったという感じの溜息を付きながらいう。
「どうにかして地元の商店街に活気を取り戻せるかを考えていたんです」
「じゃあさ、それ、わたしにも手伝わせてくれないかな」
「え?」
突然、アカリが意気揚々という。
「正直、お店の売り上げとかうんぬんかんぬんはわからないけど!」
「自信満々にいうことではありませんわよ」
お嬢様に突っ込まれながらもアカリは「あはは」と頬を搔きながらいう。
「それでも、トモダチが困ってるなら助けたいよ!」
アカリの真剣で純粋な言葉を向けられ、私はクスリと笑い。 それをみたアカリは「え? へんだった?」とあたふたとしだす。
「いえ、すみません、バカにした訳ではなく嬉しくて」
「え?」
「私はいいトモダチを持ったなと」
私の言葉にアカリは照れながらも嬉しそうに笑う。
「ワタクシもその話乗らせてもらってもいいでしょうか」
「え? いいんですか?」
くるくるお嬢様からも突然そんな言葉が出て、私は反射的に返してしまう。
「はい、友人のご友人が困っているのであれば断る理由はありませんわ。 それに、そんな話を聞かされたからには、すこしでも協力したいですわ。 なんなら資金でお困りならワタクシの実家が援助しますわ」
「まあ、乗り掛かった舟って感じだけど、楽しそうだね。 わたしも乗ろうかな。 それにクウくんの為にもなりそうだしね」
二人も協力してくれるみたいで私は頭を下げてお礼をいう。
「ありがとうございます。感謝してもしきれません」
「…………」
スミレはずっと考えてる表情を浮かべていたけど、口を開く。
「彼は食べたのかしら……どっちがいいのかしら……」
誰かに聞いている訳ではなく独り言の様に呟く。
「彼に聞いてみればいいんじゃないでしょうか」
「!?」
私がいうとスミレは『声に出てた!?』というような驚いた顔をして私の顔をみる。
「また今度あった時にでも話せばいいと思います。 それで、スミレの作ったモノがいいと言ってもらえる様に努力すればいいと思います」
私の考えを述べるとスミレは「……そうね」と髪を少しかき上げながらいう。
「ちょーっとまってー! なんかいい感じの話になってるけど、クウくんは渡さないからね」
抹消さんが割り込んできましたが、私達は少しゆっくりした後にショッピングモールを後にする。




