86色 鏡の外はわたしの世界
それから数日後、わたしはピンコから大体の事情を聞いた。
こっちの世界ではわたしが『行方不明』になって大騒ぎだったとのことだ。 はじめにミズキがわたしがいないことに気が付き、魔道具を取りに来たマコトに伝えたところ、彼は大慌てでわたしの捜索をしてくれたらしい。 その後、アカリたちにも事情が伝わりみんなで大捜索とのことだった。 だけど、さすがに世間に公表とまではいかなかったそうだ。 まあ、そこまでのことじゃないけどね。 なんて、わたしが笑いながらいうと、ピンコは訝しげにいう。
「……お主、本当にわかってないのかのう?」
「え?」
「天才発明家シーニが行方不明となったら、世間が注目するに決まっておろう」
「でも、公表されてないんでしょう?」
「それは、『止めた』からのう」
「止めた?」
わたしは首を傾げる。
「マコトさんがマスコミを抑えたんじゃよ」
「え!? マコトが!?」
ピンコの言葉にわたしは驚く。
「もちろん、マコトさんだけのチカラではないがのう、できるだけ公にしないようにしたんじゃ、それに、マコトさんが一番心配しておったからのう」
「え?あのマコトが?」
今度はわたしが訝しげにいう。
「だって、マコトならわたしが少しいなくなろうが、絶対すぐに戻ってくるって、なんも心配しなさそうじゃないか」
「まあ、一目でなにかおかしいことに気づいたんじゃろうな」
「おかしい?」
笑いながらいうわたしにピンコは冷静に返す。
「お主の魔力が『めっきり途絶えておったから』のう」
「?」
「わかりやすくいえば『気配』じゃのう、あるじゃろう? 例えば、確認してないけど、家族が家にいる気配みたいなもんじゃ」
「…………」
「わたしゃもマコトさんに呼ばれてきてみたが、確かにあの時感じたのじゃ、『この世界に存在しない感覚』がのう」
「!?」
ピンコの言葉にわたしはことの重大さに気づく。
「ごめん」
わたしは申し訳なくなり謝ると、ピンコはクスリと笑いいう。
「お主も大変じゃったのう」
「……うん」
わたしは静かにそう一言だけ返す。
ピンコにはわたしが一体どうしていたのか、『鏡の世界』のことは話した。 そこで、わたしが体験したことも……
「『鏡の世界』……正しくは『平行世界』のう……人生、生きていればいろんなことがあるのう」
そう一言いうと、ピンコは紅茶を一口飲む。
「……ただいま」
「おじゃましまーす」
すると、元気な声が聞こえてきて振り返ると、ミズキがアカリ、クウタくん、はーちゃんを連れて帰ってきた。
「あ、おかえり、もうそんな時間なんだね」
わたしが驚いて時計を確認すると、もう夕方の時刻を指していた。
「あっちゃん、体調大丈夫?」
「もう仕事しても大丈夫なの?」
「むりしちゃだめですよ」
三人ともわたしを心配して聞いてくる。
「心配してくれてありがとう、おかげさまで元気だよ」
わたしが笑顔で返すと三人は安心した顔をしてくれる。
「じゃあ、わたしたちあそんでくるね」
アカリは元気にそういうとミズキのところに走っていく。
「あかりん、まってよ」
はーちゃんもそれに続き、その後ろをクウタくんがついていく。
「…………」
その後ろ姿をみてわたしはふと思い出した。 鏡の世界のクウタくんが歌っていた歌を……
なんて、歌だったっけ?
わたしは思い出しながら無意識に口ずさんでいた。
「ほ~こりま~んも♪ ご~ろごろ~♪」
「!?」
それを聞いたクウタくんは立ち止まり、振り返ると驚いた顔をしていた。
「? どうしたの?」
「あおいさん……なんでその歌しってるんですか?」
「え?」
あの歌をくちずさんでいたわたしに、クウタくんは驚きの表情をして聞いてくる。
「その歌をしってるのぼくとオニー『だけ』のはずですけど?」
「え?クウタくんとタスクくん『だけ』?」
わたしが首を傾げながら聞き返すと、クウタくんは「はい」と頷き「だって」と言葉を続ける。
「かーさんがむかし歌ってくれた『かーさんオリジナルの子守唄』だからです」
「!?」
ユウちゃんオリジナルの歌ってことは……もしかして、彼も……
わたしは笑顔をむけて答えた。
「鏡の向こうのキミが歌ってて」
それを聞いたクウタくんは笑顔になりいう。
「へぇー、そっちのぼくも『歌ってもらってた』んだね、いつかぼくも会ってみたいな」
「……そうだね」
クウタくんの純粋な笑顔をみながらわたしは優しい笑顔になるとそう一言だけ返す。
カラーメモリー ~シーニと鏡の世界編~ おしまい




