80色 鏡の中ではだれひとり
「あそこだよ」
ミズキは案内した場所を指さす。 そこは、町はずれの空き地のようなところだった。
「本当にいくのか?」
ミズキは心配そうにわたしに聞いてくる。
「なにかあったら俺がなんとかする」
「お、かっこいいことをいってくれるじゃないか、そのかっこいい顔にキスをしてやろうか?」
「いらんわ」
「我は朋友を守りし守護精霊」
三人もわたしを心配して一緒にきてくれた。
「ありがたいけど、わざわざついてこなくてもキミたちはゆっくりしててもよかったよ?」
「バカいうな、わたしが歩き周ってなにかやらかしたらわたしの信頼に関わるからな、見張りをかねて付いてきて当然だろう」
ジーニは別に心配してついてきた訳ではなさそうだ。
「ジーニ、それはお前の云えることではないぞ? まあ、俺としてはジーニもきてくれた方が安心してシーニの護衛ができるがな」
マコトは本気で心配して、ついてきてくれたみたいだ。
「なんだ? そんなにわたしと離れたくなかったか?」
「お前は監視対象だからだ」
「空を切り裂く牙、荒れ地に住し野獣」
三人の会話を後ろで聞きながら、わたしは空き地の入り口に近づき中を覗く。 すると、中には小さな小屋の様な建物が立っており。 近くに二段に重なった土管があった。 そして、その上にひとりの少年が座っていた。
その少年、クウタくんは服がボロボロで顔とカラダもボロボロだった。 クウタくんは空を見上げていたけど、目には一切光がなくてどこを見ているのか、本当に空を見ているのかわからなかった。
「…………」
わたしは改めてその姿を確認すると、言葉を失ってしまう。
わたしの知っているクウタくんは誰よりも純粋で優しくていつも笑っていたからだ。 しかし、わたしの今、眼に映る彼は笑顔ひとつなかった。 まるで、世界に『絶望』しているようだった。
「シーニねえ、やっぱりやめとこうよ」
ミズキはクウタくんをみるだけで動かないわたしにいってくる。
「おい、なんのようだ?」
「!?」
突然、声を向けられわたしたちは身構える。 しかし、クウタくんは空を見つめたままだった。
「気づいてたんだね……」
わたしは空き地の入り口から彼の前に姿をみせて、それに続きみんなも姿をみせる。
「……あんたは……あん時の」
クウタくんはわたしの姿を確認すると、隣にいるジーニを目でみる。
「やっぱり『別人』だったか」
「え?」
クウタくんの言葉にわたしは驚く。
「どうゆう理屈かしらんが、あん時感じたあんたの気配はおれのしってるミズキの姉貴じゃないと思った」
気配?
わたしがその言葉を疑問に思って考えていると、ジーニが口を開く。
「ほう、なかなか鋭いじゃないか、シーニいわく会ったのはほんの一瞬だといっていたが? それに久しいな、数年ぶりか? クウタ、いや今は『クウガ』って呼ばれているんだったか?」
「あんたもそれで呼ぶのか、まあいい、おれのしってるあんたはムカつくぐらい自信家でいちいち鼻に触る喋り方をしてなにかと勘に触ったからな」
一瞬、クウタくんは哀しそうな顔をした気がしたけど、すぐに無表情に戻りいう。
「いってくれるじゃないか、わたしの知っているキサマは泣き虫でいつも母親にくっついてるマンモーニだったはずだが?」
「!?」
その言葉を聞いた瞬間、無表情のままだけどクウタくんの眼の奥がさらに深く暗くなるのを感じた。
「……おまえらはなにしにきたんだ? おれをバカにしにきたのか? それともおれの……『死んだかーさん』をバカにしにきたのか?」
周りの空気がドッと重くなり、クウタくんは静かな怒りをとても重くてドス黒い魔力を放出する。
その魔力を感じたわたしたちはカラダが震えて寒気がし、顔から血の気が引くのを感じた。
ジーニも自分が失言したことに気が付き冷や汗を流しながら苦笑いしていた。
「魔導警察を連れてきたってことはそういうことだよな?」
「ち、ちが……!?」
わたしが弁解しようとするけど、もう遅かった。
クウタくんはわたしたちに向けて凄まじい風をぶつけてきた。
「……くぅっ!?」
わたしはカラダが浮いてしまい背後に飛ばされる。 それをマコトが受け止めてくれるけど、後ろに飛ばされて地面に転がる。
「念動力空間転移!!」
ピンコの呪文の詠唱が聞こえると同時にわたしの視界が別の場所へと切り替わった。 最後にみえた彼の哀しい眼を瞳に焼き付けながら……




