69色 幼馴染は覚えてる?
クロロンの部屋に案内されたわたしたちは、さっそくクロロンの消えた記憶が入ってるかもしれないゲームのカセットを探す。
「場所の目星はついてるんですの?」
フラウムが聞くとクロロンはあごに指を当てながら考える。
「うーん、たぶんだけど、あるんだとしたらここかな?」
そういうと、クロロンは部屋のクローゼットを開ける。 そして、大きめの箱を取り出して中を確認する。
「ゲーム機やそのカセット類は大体この中に入ってると思うよ」
箱の中の物をひとつひとつ出していく。
「かなり古いゲームばっかりだね」
レータは出されたゲームをみると興味ありげに聞く。
「そうだね、ここにあるゲームのほとんどがみっくんがくれたんだ」
「え? そうなのかい?」
シアンは頷き答える。
「……ん、もともと家にあって、やらなくなったゲームをクウタにあげた。 その方がゲームも喜ぶと思って」
「キミもなかなかロマンチックなことをいうね」
「でも、そのおかげでぼくは楽しくゲームができたよ」
クロロンは笑顔でいうと言葉を続ける。
「それに当時、最新のゲーム機をもってなくて、他の人にあまり仲間に入れてもらえなくて、でも、それでも、楽しかったよ」
クロロンは無理に笑顔を作ってる感じがした。
「……その、すまない」
すこし気まずくなったレータはに、クロロンは慌てて手を振る。
「え!? いや、違うよ!? ごめん、言い方が悪かったね。 ぼくが言いたいのは、今はみんなと出会えて楽しく過ごせてるって感謝を言いたいんだ」
その言葉はクロロンの本音で間違いないと感じた。
「ありがとう! わたしもそういってもらえてうれしいよ!」
わたしもなんとなくクロロンにお礼をいう。
「もぉー! さっきからなに!? あなたとクウくんの、その、なんかわたしの心がムズムズする会話!」
なぜかモリメさんに嫉妬? のような感情を向けられる。
「まあ、とにかく探しますわよ。 モリメさんアナタの仰っていたカセットはどれですの?」
フラウムは並べられたゲーム機をみながらモリメさんに確認する。
「あ、そうだった。 確か、10年前に流行ってた、持ち運び用のゲームのカセットだよ」
モリメさんはゲーム機のカセットケースを探す。
「10年前に流行ってたゲーム?」
その言葉にクロロンは首をかしげる。
「どうしたの?」
「えっと、なんというか、かんというか、なんだかひっかかって」
「ひっかかるってどんな感じ?」
「なんかよくわからないけど、ちょっとイヤな感じだね……ねむたいのにねむれない、だけど、ねている、でも、意識はある。 みたいな感じ?」
「分かるような分からないような言い方だね」
クロロンの言葉にみんな首を傾げているとマモが答える。
《恐らくだが、解けかけてる可能性があるな》
「え?」
みんながマモに注目する。
《生物の記憶は基本必要のないことは忘れるモノだ。 だが、突然必要になった時に一度やったことなら記憶がなくても、突然と思い出して、個によっては出来るモノだ。 そのきっかけが掴めそうなんだろう》
クロロンの今の状況の推測をしてくれた。
「じゃあ、カセットがみつかればそれがきっかけになるかもしれないんだね!」
わたしたちは必死に探した。
「あった!」
モリメさんはカセットケースからひとつのカセットをみつけ慎重に取り出す。
「これだよ! わたしがあの時使った思い出のカセットだよ!」
モリメさんはうれしそうにそれを見つめる。
「分かってはいると思いますが、慎重に扱ってくださいね」
「折角見つけたのに踏みつけたりでもしたら笑えないからね」
二人は注意を促す。
「う、うん、クウくん! これ、覚えてる?」
モリメさんはそれをクロロンにみせるとクロロンは懐かしそうに話す。
「うん、覚えてるよ! ぼくがはじめてちゃんとやってゲームにハマったきっかけの今も毎シリーズ買ってるゲームだよ。 確か、ハマったきっかけはトモダチがこのシリーズが好きで、それをきっかけにぼくもはじめて、それから毎日その子と一緒に………………あれ?」
途中まで話していたクロロンは突然言葉を切り、すこし深刻な顔をする。
「クロロンどうしたの?」
みんなクロロンの反応をみて、なにか空気が変わったことに気がつく。
「…………ねぇ、みっくんひとつ確認してもいい?」
「……ん」
クロロンはすこし青ざめながらシアンに質問する。
「このゲームってみっくん《やってた》?」
クロロンの質問にシアンは静かに答える。
「……やってない」
「!!?」
シアンの言葉にクロロンは驚愕する。
「……え? ……つまり……え? どういうこと? ……一緒にやってたのはみっくんじゃない? ……なら、『だれ?』 ……ぐぅ!!」
クロロンは左手で苦しそうに頭を押さえる。
「クロロン!?」
「緑風さん!? 大丈夫ですか!?」
「クウくん!?」
みんな苦しむクロロンを囲うように集まる。
《これはマズイな《記憶を封印するチカラ》と《思い出そうとする本能》が衝突して脳を刺激しあっているな》
状況をみたマモがいう。
「ど、どうしたらいいの!?」
どうしたらいいかわからないわたしは慌ててマモに聞く。
《そうだな、あまりいい方法とは云えないが、気絶させるのがいいだろう》
「き、気絶って!」
その言葉を聞いたフラウムが驚く。
《わかっている、強引に気絶はさせない、おい、レータ、カラダを貸せ》
「はあ!?」
突然そんなことをいわれ、レータは驚く。
《今のワタシの依り代では魔法はあまり使えんし、半身に移ったら逆にチカラのコントロールが出来ない。 だから、絶妙に魔力と体力の少ないお前しかいないんだ》
「めちゃくちゃ失礼だな!?」
マモの説明にレータは突っかかる。
「マモさんお願いします」
「お願いマモ!」
「おい!? 本人がまだ了承していないだろう!?」
「いいからさっさとカラダを貸せですわ! 緑風さんを苦しめたいんですの!?」
「キミに云われなくても分かってるよ! マモ早くしたまえ」
《全く……どっちなんだ……》
マモはため息混じりにいうと、人形から赤い魂をだしてレータに移す。 すると、マモの魂が入ったレータは目が赤くなる。
「……まあ……かなり調子が出ないが仕方ない」
マモは手を握って広げる動作を数回すると右手をクロロンに向け呪文を口にする。
「リープ」
「!?」
魔法をかけられたクロロンはその場で倒れる。
「クロロン!?」
「安心しろ眠らせただけだ」
心配するわたしたちにマモはいう。
「さて、この状況をこいつの族親に見つかっては厄介だ。 場所を変えるぞ」
「そうですわね。 こんな状況を見られてしまっては緑風さんの御家族に誤解されてしまうかもしれませんわね」
フラウムもそれに賛成みたいだ。
「半身の姉の所に移動するのがいいかもしれないな。 構わないか? 我が半身?」
「……ん、いいよ」
マモの提案にシアンは首を縦にふる。
「でも、どうやって? クウくんを抱えて持っていくの?」
「いや、ワタシの転移魔法で移動しようと考えているが、ひとつ問題がある」
「問題?」
「恐らくだが、この人数を転移魔法で移動させると、転移した瞬間に魔力切れで強制分離されて、こいつの意識が飛んでしまう」
「なら大丈夫ですわね」
「は?」
フラウムの返しにマモはすこし驚く。
「メガネの意識が飛ぶだけなら何の問題にもなりませんわ」
「そうだよね、メガネくんには申し訳ないけど、今はクウくんのために飛んでもらおうか」
モリメさんも賛同する。
「マモノのワタシも同情するぐらい可哀想だな……」
マモはレータのカラダでレータを哀れむ。
「まあいい、おい、半身。そいつを持て、転移先が地面かもしれないからな」
「……ん、わかった」
マモにいわれ、シアンはクロロンをおんぶする。
「そこまで配慮してくれるんですのね」
「マモってけっこうやさしいね」
わたしたちの言葉にマモは「ふん」と一言だけ返すと転移魔法を使う。
「テレポーテーション」




