61色 パーティーへの招待
「さて、今日の仕事はここまでかな」
いつもと変わらぬある日。 魔導具の開発の仕事を一通り終わらせたわたしは席を立ち、伸びをして硬くなったカラダを伸ばす。
ポットに水を入れて沸かし、茶葉の入ったティーポットに移しかえ、少し蒸してティーポットを少し横に振り『の』の字を描きながら紅茶を淹れる。
なんて手順を踏みながらも、正直味にこだわっていないので、少し適当な手順で淹れた紅茶の匂いを嗅いで落ち着く。
「ふぅー」
紅茶を一口飲んで一息ついた。
ピンポーン♪
すると、インターホンの音が部屋に響いた。
「?」
今日は誰かくるっていってたっけ? それにミズキとランが帰ってくるにしても時間が早いよね? マコトだったら、勝手に入ってくるだろうし……ていうか、勝手に入ってくるな! そんなことを考えながら玄関に行きトビラを開ける。
すると、灰色のスーツをきた背の高い男性が、青い花束を持って立っていた。
「やあ、アオイ、久しいな」
「スズヒコ!」
意外な人物が扉の前に立っていて驚いたが、そんなわたしを気にせずに手に持っていたモノを渡してくる。
「アオイよ、お前の為に青いアネモネを持ってきたぞ」
「へぇー、キレイじゃないか、ありがたく受け取っておくよ。 で、今日はなんのよう?」
渡されたアネモネをありがたく受け取り、要件を聞く。
「相変わらず、ワタシの気持ちは流すんだな」
「何度もいってるけど、わたしの答えは『ノー』だからね。 愛しの弟と妹がいればいいからさ」
「まあ、いいさ。 いつかお前のハートをガッシリと掴んでやるぞ」
スズヒコは「さて」と言葉を続けると渡してきた花束を指差す。
「ワタシの要件はそれだ、開けてみるといい」
花束に目を向けると、白い封筒が挟まれていた。
「え? これ? てっきりキミの痛い愛のメッセージが書いてあるのかと思ったよ」
「うぐ……相変わらず、手厳しい……」
わたしの一言にダメージを受けているスズヒコを無視して、花束の中にあった紙袋を開けると、1枚のチケットの様なものがはいっていた。
「これは?」
問いかけると、スズヒコはネクタイを締め直しながら答える。
「それは、ワタシ達の会社などが参加するパーティーの招待チケットだ」
「パーティー?」
突然、パーティーなんて言われるもんだから、ポカンとしてしまう。
「ああ、様々な会社が集まる親睦会を踏まえたパーティーなんだが、是非ともアオイ、お前にも参加してほしいとのことだ」
「え!? なんで!?」
唐突にそんなことをいわれ驚く。
「他の会社の御偉いさんが是非とも『天海 葵に一目会ってみたい』とのことだ」
「なんでわざわざご指名?」
「何故って、お前は魔導具の発明でかなりの実績があるだろう? それで業界では名が知れ渡っていることぐらいお前も知ってるだろう?」
わたしの疑問にスズヒコは逆に疑問に思った感じで聞く。
「え? そうなの?」
その返しにわたしも首を傾げる。
「アオイ……まさか、本人が知らなかったのか?」
わたしの反応にスズヒコは眼を見開いて驚く。 その反応を見て、マジなのだと逆に驚く。
「あ……そんなんだ、正直、そういうのに興味なかったからしらなかったよ」
「まあ、お前らしいといえばらしいか……」
わたしが本当に知らなかったという反応をみたスズヒコは溜息混じりにいうが、クスリと笑う。
「そういうことだから、アオイお前に是非とも参加してほしいんだ。 ドレスとかなら安心しろ、パーティーはワタシの会社の所有する会場で開かれるから、そこで用意しよう」
「ちょっとまってよ! まだ参加するなんて一言も……」
スズヒコはわたしに構わず説明をする。
「詳しいことは一緒に同封した手紙に書いてあるからな。 すまないが、ワタシはこの後、仕事があるもので失礼するぞ。 では、待ってるぞ」
「ちょ、ちょっと!」
要件だけいうと、スズヒコは去って行ってしまった。
「……なんだよ、いうだけいって帰るのかよ」
わたしは愚痴りながらも、手紙の内容を読む。
そこには、日にち、場所、どんな名目のパーティーかなどが書かれていたが、わたしはある文に目が止まる。
『参加者の御家族、御友人、何名でも参加可能』と書かれていた。
「家族と友人何名でも参加可能か……」
それなら、ミズキやラン、それに、クウタくんやアカリも呼べるってことだよね? よしっ、折角だし、みんなを誘ってみよう。
……ドドドドドドドドドッ!!
「!?」
なんてわたしが考えていると、地響きの様な音がこっちに向かってきているのを感じる。
「スズヒコさま~!」
その聞き覚えのある声に顔を上げると、道着姿の白髪の女性がこっちに地響きを立てるかのように走ってきた。
「ミルク!?」
「アオイ! スズヒコ様はどこにいるの!? 隠しても無駄よ!」
道着姿の白髪の女性が、出会い頭にわたしの肩をゆさゆさと揺さぶる。
「ぬわッ! ちょ! ちょっと! お、落ち着いて!」
「落ち着いていられるものですか! アオイ、アナタの持ってる、その手紙からスズヒコ様の気配がするわ!」
ミルクはわたしを激しく揺すりながら、手元の封筒をロックオンする。
「あいかわらず、鋭い勘だね……でも、スズヒコはこれだけ渡してさっさと行っちゃったよ」
手紙を見せてミルクを落ち着かせる。
「なっ!? パーティーへの招待ですって!? 抜けがけは許さなくってよ!」
逆に火を着けてしまったみたいだ。
「ここ見てよ、ここ」
わたしはある一文を読ませる。
「『御家族、御友人何名でも参加可能』?」
「そうそう、だから、ミルクも一緒に行こうよ」
わたしはミルクを落ち着かせる為にいうと眼を輝かせる。
「ええ! 是非とも参加させてもらうわ!」
ミルクはわたしの手を取り嬉しそうにする。
「なんじゃ? 随分と騒がしいのう」
「近所迷惑だ、静かにしろ」
ミルクの背後から声が聞こえ、わたしはミルク越しに見ると、腰にカタナを掛けた黒髪の男性とホウキを持ったピンクの色の髪の女性がいた。
「二人まで……タイミング良すぎでしょ」
ある意味運命力でも働いているんじゃないかと思うくらいの集まりの良さに苦笑いする。
「ほう……なんとなく、シーニさんの研究所に遊びにきたが、なかなかいいタイミングじゃったようじゃのう」
状況を見てなんとなく察したピンコはニヤニヤとする。
「アオイ、魔道具がもうそろそろ出来上がってる頃だと思って来たぞ」
マコトは状況を気にせず言ってくる。
「とりあえず……三人とも中にはいって」
急に騒がしくなった場を抑える為に中に移動させる。
「なるほど、大手会社が集まるパーティー、面白そうじゃのう。 もしかしたら、医療関係の方も居るかもしれんのじゃ」
「そんなパーティーがあるなら警備も厳重だろうな」
中にはいって、スズヒコから貰った招待状をみせると二人はそれぞれの分野で興味があるみたいだ。
「なら、せっかくだし二人も参加する?」
問いかけると、二人とも首を縦に振る。
「では、お言葉に甘えて参加させてもらうかのう」
「俺も上に報告の後、参加しよう」
わたしたちはパーティーに参加することを決めた。 そして、もう一度、チケットを確認する。
「…………」
今回は、ミズキたちは誘わないでおこう。このメンバーってのもあるけど、大企業のパーティーにあの子たちはさすがに荷が重そうだからね。




