3色 名前をつけてみない?
「!?」
金色のタマゴから現れたのは、まるくて白色で頭の触角のようなものが虹色に輝いているトリ? みたいな生き物が現れた。
小さなハネをパタパタさせながらゆっくりと落ちてくるトリを、私は両手でやさしくキャッチした。
「ピュッ」
手に落りてきたトリは小さく鳴く。
「なんでしょうか? この生き物?」
「トリっぽいけど、すごくまるくてハネが小さいね」
マルとシーニがわたしの掌を覗きながらいう。
「あっ! あれを視てください」
マルがなにかに気が付き指をさす。
わたしとシーニは反射的にマルの指さした方をみると、そこには、さっき弾けたタマゴのカケラがすこしずつキラキラと輝きながら消えていった。
「どっどういうこと!?」
「不思議なことがトントン拍子に起こりすぎて混乱しています」
わたしとマルが戸惑っているとシーニが場を落ち着かせる。
「とりあえず、状況を整理しようか」
シーニの言葉にわたしとマルはお互いの目をみて頷き、二人はわたしの掌にいるトリっぽい生き物をみた。
「さて……これからどうしましょうか」
「このトリについて考えるんだよね?」
二人は頭を抱えるみたいに考え始めたけど、わたしはふと思ったことを口にした。
「名前をつけてみない?」
「名前ですか?」
「うん!」
聞き返してきたマルにわたしはゲンキよくいった。
「『トリ』だとヘンな感じがするしやっぱり名前があったほうがいいと思うんだ!」
「それもそうだね」
「難しい問題は後回しにしましょうか」
二人ともわたしの意見に賛成みたい。
「さて、まずは名前の候補をみんなで言っていきましょう」
「それならわたしとてもいい名前の候補があるよ!」
自信満々にとっておきの名前をいう。
「きんいろのタマゴから出てきたからキンタマ」
「却下っ!!」
なぜか二人に全力で止められた。
「ええ!? なんで!?」
「なんでもです」
「アカリ、とりあえず他の名前を考えようか」
理由は教えてくれないけど、シーニがやさしく聞き返してくる。
「う~ん……じゃあ、タマ?」
「うん、とりあえずそれで!」
二人は同時に頷き、しぶしぶ名前を変更した。
「つぎは、わたしからいうね」
シーニもいい名前の候補があるのかいう。
「ちょっとありがちだけど、覚えやすくて色も白いからシロとかどうかな?」
「たしかに、覚えやすいのって大事だね!」
わたしは相槌をいれる。
「じゃあ、わたしは……」
マルは、いつものようにあごに手をあて考えはじめて、しばらく考えたあとに、〖おもいついた〗っていう顔をした。
「白いというポイントは被ってしまいますが、しろくて、マシュマロみたいだからシュシュ・マロタロウというのはどうでしょうか?」
「え? なんて?」
「かわいくていい名前だね」
わたしはもう一度相槌を打つ。
「ピュ?」
でも、肝心のトリはまるいカラダを傾げるだけ。
「さて、この三つの候補からしぼっていきましょうか」
わたしたちは話し合いを始めた。
「やっぱり、覚えやすいしシロがいいんじゃないかな?」
「私は、やはりマロタロニクス・シュナイダ―がいいと思われます」
「なんか変わってない?」
「わたしは、タマじゃなくてやっぱりキ……」
「なにしてるの?」
わたしが言いかけた直後、背後からすこしやる気のない声がしてわたしは振り返った。
そこには、白と水色のパーカーを着たタレ眼で髪も水色で透き通るような空色の目をしている少年が立っていた。
わたしはその少年をみて叫んだ。
「シアン!」
そう、この子はシアン。本名は天海水奇っていうんだけど、わたしはトモダチを『色』に関係あるニックネームで呼んでいるんだ。
わたしの通う、カーミン魔導学園の生徒で同じクラスのクラスメートなんだ。
「シアンこそ、ここでなにしてるの?」
シアンの立っている場所にかけだしていう。
「さんぽ」
シアンはやる気のなさそうにいう。
「何ていうやる気のない返事でしょうか」
マルがジト目になりながらいうと、その横をシーニが通って笑顔でこちらによってきた。
「ミズキ♪ 会いたかったよー♪」
「毎日あってる」
「ミズキ、今日も可愛くてプリティーだね♪」
シーニはシアンに抱きつき、自分の顔をシアンの顔にスリスリしだした。
しかし、彼は無表情だった。
「あのー、御二人はどういったご関係ですか? もしかして、アレですか?」
マルが気まずそうに聞く。
「あっ、そっかアカリはおなじ学校だから知ってるけどマルは知らないんだったね」
シーニはシアンから離れる。
「説明しよう! この超絶かっこよくて可愛くてクールで凛々しくてプリティーな少年はわたし天海葵の弟こと天海水奇だよ」
「ベタ褒めですね」
「あっそうだ!」
本来の目的を思い出したわたしは指を鳴らした。
「ねえ、シアン! シアンにききたいんだけど、シロかマロかキン……」
「今は、絶対言っちゃダメ!」
またしてもふたりに全力で止められた。
「えーーー!? だからなんで!?」
わたしはすこしやけになって言い返した。
「なんのはなし?」
そこに状況をよくわかっていないシアンが口を開いた。
「ごめん、ちゃんとせつめいしてなかったね、えーとね……カクカクシカジカ……」
がんばってさっきまでのことを伝える。
「アカリ、それではわからないと思われます」
「その前に説明になってないね」
「そうか」
「分かるんかい!」
こくん、と頷いたシアンに二人が忙しくツッコム。
「…………」
シアンは何かを考えはじめた。
「クー」
「ピュッ!?」
「え?」
シアンの言葉にわたしの手の上でキョロキョロしていたトリが反応した。
「空から落ちてきたからクー」
「本当にあの説明で理解出来ていたんですね」
「ピュッピュー」
わたしの手の上でぴょんぴょんとゲンキよく飛び跳ねている。
「すごい反応をしているね」
「よーし! じゃあ、キミの名前はクーだよ!」
「そんな簡単に決めていいんですか?」
マルがすこし戸惑い気味に聞いてきた。
「うん! だって本人が気に入ったみたいだから、ねっクー」
「ピュルッピュー」
わたしがそういうと、クーは嬉しそうに小さいハネをぱたぱたと動かした。
「本人ではなくて本鳥だと思われます」
「今は、いいんじゃないかな」
マルのまじめツッコミにシーニがツッコム。
「ピュ~」
すると、クーがまた手の上で鳴きだした。
「あれ? どうしたの?」
さっきまでゲンキに飛び跳ねていたクーがまた周りをキョロキョロと見回しはじめた。
「何か気になる物でもあるのでしょうか?」
「周りは遊具と木があるだけでとくに変わったものはないね」
マルとシーニも周りを見回す。
「多分、おなかすいてる」
クーの様子をみていたシアンがいう。
「シアン、クーの気持ち分かるの?」
「さすがわたしの弟」
わたしがシアンに聞き返す。
「なんとなく」
「なんとなくって言いましたよ」
「とりあえず、お腹がすいてるとして何を食べるのかな?」
「クーは産まれたばかりの赤ちゃんなので、多分、ミルクとかだと思うのですが、生憎今はおやつに持ってきたリンゴしかありません」
マルは腰に掛けていた布袋から果物がはいったタッパーを取り出した。
「ピュッピュル~」
マルの手にある果物をみたクーが跳ねだした。
「え? これでいいんですか?」
マルがクーに聞き返す。
「なにを食べるか分からないから、ちょうどいいと思うよ」
「そうですね、じゃあ食べやすいようにしますね」
そういうと、マルはタッパーに入っていたウサギリンゴを一口サイズに割ってクーに渡した。
「はい、どうぞ」
「ピュ~♪」
クーは鳴きながらリンゴにかぶりつく。
その後もリンゴを割ってあげる作業を繰り返した。
「ピュルルーン♪」
果物を食べ終えたクーはゲンキよく小さなハネをパタパタと上下に振った。
「全部食べちゃったね」
「この小さな体のどこに入っていったのでしょうか?」
わたしとマルはクーの小さなまるいカラダをじーっとみていた。
「クーが果物を食べているのをみていたらわたしも果物が食べたくなってきたな~」
シーニの言葉に反応したかのようにわたしのお腹から「ぐうぅ~」という音がなる。
「うん、そうだね」
「たしかに……クーにリンゴをあげるのに夢中で自分の分を残すのを忘れていました」
マルは「フカク」とつぶやくとお腹を「きゅうぅ~」と鳴らして、すこし頬を赤く染めながら続けた。
「それでしたら、今から私たちも美味しい果物を食べに行きますか?」
「いいね!」
「うん、いこいこ!」
シーニとわたしは交互に返事を返す。
「じゃあ、近くのスーパーで果物でも買いに行こうか」
「ちょっと待ってください」
マルは、シーニの言葉をさえぎるように右手をまっすぐに伸ばしながら続ける。
「果物といったらやっぱり新鮮なのが一番です! なので、今から新鮮な果物を取りにいきましょう」
「とりにいくってどこに?」
シーニが首を傾げながらいう。
「私の知り合いの先輩が農園をやっているので、そちらにお伺いして新鮮な果物を少し分けて貰いましょう」
「急に行っても大丈夫かな?」
「はい、私もよくお伺いして美味しい果物を頂いているので大丈夫です。 それとさっきクーにあげたリンゴはそこの農園のものなんですよ」
マルは誇らしげにいう。
「では、行きましょうか」
「うん、そうだ! シアンはどうする?」
シアンのほうをむいて聞くと首を横に振った。
「ようじがあるから大丈夫」
「そっかザンネンじゃあまた今度いっしょに遊ぼうね!」
「うん」
わたしとシアンの会話が終わったところでシーニが「じゃあ、そうときまれば!」といい腰にかけていた杖を持って空中に円をかいた。
すると、空中に魔法陣が現れた。
「えっーと……」
シーニは魔法陣の中に手を入れる。
そして「あった」といいながらホウキを三本取り出した。 この魔法陣は簡単にいうと物とかをいれるバックみたいなものかな。
「隣町まで少し距離があるからこれで飛んで行こうか」
シーニは杖を振って空中につくった魔法陣を消して取り出したホウキをわたしとマルに渡す。
そのホウキは中心の所に座席が付いているタイプだった。
「おっ、これは乗りやすそうなホウキですね」
「普通のホウキだとお尻が痛くなるから少し乗りやすく手を加えたんだ」
「さすがシーニですね」
「ホウキの乗り方は分かる?」
「うん、大丈夫!」と返事を返しながら、クーを頭に乗せる。
「授業で習ったので、予習はばっちりです」
マルは慣れた動作でホウキに乗って宙に浮き、わたしとシーニもそれに続いてホウキに乗り宙に浮く。
「ミズキ、気をつけて遊びに行くんだよ~」
「じゃあ、また明日学校でね~」
わたしは下にいるシアンに手を振る。
「また」
シアンもゆっくりとした動作で手を振り返す。
そして、わたしたちは隣町にむかって飛んで行った。