100色 魅せつける! 商店街の意地!
私達は一度、病院を後にしてセーラン商店街まで戻ってきた。
裏口からスミレのお店に入ると、店内は活気に溢れた声が聞こえてきて繁盛している様子でした。
「今日も大繫盛ですね」
私が店内の様子に笑みを浮かべていると、誰かがまるで閃光の様な速さで私達の前に現れ、隣のアカリの肩を揺さぶりはじめた。
「緑風さんは無事なんですか!? 容態は!? どうなったんですの!? アカリさん!!」
「うええええええ!?」
突然肩を全力で揺すられ、アカリは悲鳴を発しながら目を回す。
「落ち着いて、フウちゃん。 クウくんは無事だから」
乱心状態のお嬢様を抹消さんが落ち着かせる。
「そうなんですの?」
「うん、無事に目を覚まして今はユウちゃんたちが様子をみてるよ」
「はい、健康状態の様子見の為に数日程入院することになりました」
「……そうですか……よかったですわ」
私の言葉を聞いたお嬢様は安堵の息を吐く。
「だから云っただろう? そんな心配しなくてもいいって」
客間からメガネくんが入ってきて、それに続きスミレ達もやってきた。
「この脳筋お嬢様ときたら戻ってきた僕達の話を聞くなり、お店を飛び出そうとしたからね」
「そりゃそうですわ、大切な友人が運ばれたと聞いたら、居ても立っても居られないですわ」
「だけど、どこに運ばれたかも、どの病室かも分からないのに無作為に飛び出そうとするのはどうかと思うけどね」
「アナタこそ、そわそわしてた癖によく言いますわね」
「! 君よりはマシだったろう!」
「否定しないんですね」
私がツッコムとメガネくんはメガネをクイッとやりながら誤魔化す。
「で、結局どうなったのか教えてもらってもいいかしら」
スミレが後ろからいい、私は先程あったことを簡潔に説明した。
「…………」
私の説明を聞いた後、みんな呆気に取られていた。
「アナタが冗談をいうタチじゃないのはわかってるけど、冗談みたいな話ね……」
「もしかして、アカリさんのその謎のチカラってこの前のアレですの?」
スミレ達は私の話を少し疑っている様でしたが、お嬢様とメガネくんは心当たりがあるみたいです。
「まあ、不安要素はまだありますが、私達にできることをやりましょう」
「そうね、そろそろ込んでくる時間だから、話はまた後ね」
スミレの言葉にみんな頷き作業に戻り、私達も準備をして仕事を開始した。
「ありがとうございましたー」
最後のお客様を送り届け、入り口の看板をひっくり返す。
「……ふえぇ……つかれたー」
アカリが椅子に座りながら机に倒れる。
「だらしないわね」
「みんなお疲れさま、よかったらこれ飲んでゆっくりしてね」
厨房からスミレとシーニが出てきて私達に紅茶を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。 シーニ、それにスミレもわざわざ気を使ってくれて」
「ち、ちがうわよ、アマミさんにおいしい紅茶の淹れ方を教えてもらったついでよ」
私の言葉にスミレは動揺しながらも紅茶を淹れていく。
「君にも気を使うって事ができたんだね」
「うるさい、紅茶ぶっかけるわよ。 そして、メガネごと溶けなさい」
「なんだい、その紅茶には硫酸でも入ってるのかい?」
なんだかんだ悪態をつきながらも、メガネくんにも淹れてあげている。
「で、これからどうするのかしら」
紅茶で一服してしばらくするとスミレが聞いてくる。 私は紅茶を一口飲み考えをまとめて落ち着くと、マグカップを机に置き口を開く。
「そうですね、まずは情報の整理と共有からしていこうと思います」
「そうだね、正直、まだ把握できてないところもあるしね」
シーニがいうと他のみんなも頷く。 それを確認すると私は話はじめる。
「緑風くんが怪我をしてしまったのは、結果論になってしまいますが、私の判断ミスです。 本当に申し訳ありません」
私は改めてみんなに頭を下げる。
「全部アナタのせいではないわよ。 むしろ、ワタシたちにもいえることよ。 いわないようにしたのだから」
「いわないようにですの?」
私にフォローを入れるスミレにお嬢様は聞き返す。
「ええ、実際、他店舗で被害があったのにアナタたちに共有しなかったのよ。 余計な心配をかけたくなかったから」
「まあ、それが結果として凶と出てしまったけどね」
スミレの言葉に続きメガネくんが事実を告げると、スミレは少しムスッとした表情になる。
「おや、事実を云っただけなのに、なんでそんなに不快そうな顔をしているんだい?」
「……わかってるわよ……自分の非は認めるわよ……だけど、ムカつくのよ、アナタが」
「結構理不尽な理由だね」
「まあまあ」
恒例行事となり果てている二人の口喧嘩を抹消さんが止めながら、話の続きを促してくる。
「その被害をだしていたイヤがらせ集団がクウくんをあんな目に合わせたんだね」
「嫌がらせで緑風さんに被害がいってしまったなんて、考えるだけでムカつきますわね。 今こそ黄瀬財閥のチカラを使ってその会社を潰そうかしら」
「いい考えだね、フウちゃん」
「お望みとあらば手配いたしますが、どうなさいますか?」
二人とも心優しい緑風くんを傷つけられて相当怒っているのか、笑顔で物騒な事を云いだす。
「気持ちは分かりますが、落ち着いてください。 それでは、あちらとやっていることが変わりません」
私は二人に落ち着く様にいうと話を続ける。
「それに一番複雑な気持ちなのは、恐らく、シーニです」
「!」
私の言葉にみんな驚きシーニの方に注目する。 全員の視線を向けられたシーニは少し驚いた顔をしながらも笑顔を返す。
「……そうだったね、大好きな魔道具を悪さに使われるなんてつらいよね」
「そうですわ……ワタクシもシーニさんから頂いたこの魔道具のポーチを今でも大切にしています。 それが、悪事に使われたとしたらとても心が痛いですわ」
シーニの気持ちを汲み取る二人の言葉を聞いたシーニは二人に笑顔を向けながら返す。
「ありがとうみんな、正直、許せない気持ちはあるけど、わたしの努力が無駄じゃないってわかっただけでもすごい救われるから」
すると、シーニのケータイが鳴り出した。 シーニはそれをポケットから取り出し画面を確認すると、私に一度目を向けてから電話に出た。
「はい、もしもし…………そう、わかった……すぐにむかうよ」
数言、電話越しの会話を交わした後、シーニは静かに携帯をしまい席から立ち上がった。
「じゃあ、いってくるよ」
「え? どこにいくの?」
突然、席を外そうとするシーニにアカリは首を傾げながら聞く。
「犯人グループの確保ができたって」
シーニの言葉に私以外の全員が驚く。
「ええっ!? もう!? 展開早過ぎない!?」
驚き過ぎて抹消さんがメタイことを云い出すが、シーニが冷静に返す。
「まあ、なんだかんだいって、彼らは優秀だからね」
「それにしても早過ぎますわね」
お嬢様も驚愕していた。
「あれ? でも、シーニはなにしにいくの?」
「犯人グループとすこしお話にかな」
これまた驚きの表情を浮かべるみんなにシーニが説明する。
「一体、どういう経緯があって魔力爆弾を作ろうと至ったのか聞いておきたくてね」
「イヤがらせをするためじゃないの~?」
今度はノワルが聞くとシーニは少し云いずらそうな表情を浮かべたので、私が代わりに伝える。
「恐らく、その通りなのは間違いないのですが、魔道具の開発者としては同じ事が起きない様に当事者の意見を聞くことも必要です。 それが、例え、『ふざけた理由』でも」
私の言葉にみんなことの重大さに気が付き言葉を詰まらす。
「まあ、そういうことだけど、みんなが思い詰める必要はないよ。 これはわたしの成長の為に必要だったと思ってるからね」
「…………」
「幸せを作れば、不幸せも生まれる、それをどうやってこれから減らしていくかの新たな課題だからね」
私はシーニの探究心にはまだまだ先があることに感嘆した。 天才こそ世界を良くするとも言いますが、天才だからこそそれに向かう努力があるのだと改めて感じた。
「後は私達に任せてください。 シーニはその努力の先にあるものを掴んできてください。私はそれを応援します」
「わたしも! わたしも!」
私の声援を聞いたアカリはそれに呼応して言葉を続けると、みんなも笑顔で頷く。それをみたシーニは喜色を浮かべた。
「ありがとう」
そう一言感謝の言葉をいうとシーニはお店を出て行った。
それを見送ると私は全員に向けて言葉を投げかける。
「さて、商店街の意地を魅せてやりますか」
その言葉にみんなチカラ強く頷いた。




