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玉国くんの苦悩

 俺はへんなやつにばかりモテる。


 モテるというか、俺にはへんなやつばかりが近寄ってくるのだ。


 まるで仲間の匂いを嗅ぎつけてくるように……。違う! 俺はふつうだ! けっしてへんなやつなんかじゃないぞ!




 そう思いながら目を覚ますと、周りはシルバー一色だった。


「はっ!? ここはどこだ?」


 そこは明らかに、俺が寝ていた自分の部屋ではなかった。一面ジュラルミンっぽい銀色の部屋だった。どこからか『ぽるぽる、ぽるぽる』という何かの声のようなものが聞こえる。


「気がついた?」


 振り向くと、頭に触覚を2本乗せたセーラー服姿の小柄な少女が、脇に立って見下ろしていた。両手を肩幅に掲げてチョキを作っている。


「ここはどこだ!? 君は……!?」


 銀色のベッドに寝かされ、銀色のベルトで拘束されているので、起き上がることが出来ない。


「あたしの名前はすばるたん」

 触覚少女が無表情に、名乗った。

「ぽるたん星人の妹だよ」


「うっ……宇宙人!? おっ……、俺をどうするつもりだ!?」


「見てるだけ」


「なっ……、なぜ俺を拐った!?」


「たまたまだよ」


「なっ……何をしに地球に来た!?」


「前にも誰かに言った気がするけど……」

 すばるたんは無表情で口元だけを笑わせながら、

「コンビニのフライドチキンを食べにだよ」


「ふっ……、ふざけるな!」


 唾を吐きかけるようにそう言うと、途端にすばるたんの表情が曇った。つ、と、ふくよかな頬に涙が一筋、伝う。


「あっ……。ご、ごめん」

 なんか申し訳ない気持ちになった。

「俺、なんか、悪いこと言っちゃったのかな……」


「いいの。ちょっと思い出しちゃっただけだから」


「別れた恋人かい?」


「うん」

 すばるたんはこくりとうなずいた。

「大好きだったポプラの竜田揚げ……。もう、会えないのかな……」


「あくまでフライドチキンかよ!」


「悪魔のフライドチキン?」

 すばるたんは急に元気を出した。

「それ、どんなの!? 食べてみたい!!」


 すばるたんは興奮している。


「ゆっ……、指をチョキチョキ動かすな!」


「なんで? 怖いの?」


「チョキチョキを速くするな!」


「怖いの? 玉国くん?」


「なっ……、なぜ俺の名前を知っている!?」


「たまたまだよ」


「たまたま俺を拐ったくせに、たまたま俺の名前も知っているというのか? おかしくないか?」


「おかしい!」

 すばるたんはブーッ!と吹き出した。

「たまたまたまくにくんを拉致して、たまたまたまくにくんの名前を知ってるなんて……、あたし、おかしいよね!」


「やめてくれ! 俺まで頭がおかしくなりそうだ!」


「ふふふ。たまくにくん」


「名前を呼ぶなー! 怖い!」


「ふふふ、ふふふふ。たまくにぴかるくん」


「ぴかるじゃねー! 俺は玉国たまくにひかるだ!」


「たまたま、ぴかぴか、ぴかるくん」


「やめろーーー!!」


「ふふふ、ふふふふふふ」


「とりあえず俺を家に帰してくれ!」


「フライドチキン買って来てくれるなら」


「わかったよ! 買って来てやるから」


「10個ね」


「わかった! 10個な!」


「玉国くんのおごりでね」


「なんでだよ!?」


 するとすばるたんは黙り込んだ。にんまりと笑いを浮かべたまま、じっと黙っている。


 俺も黙り込んだ。会話していた相手が急に黙り込むと、こちらも黙ったほうがいいのかな? と、気を遣ってしまうものである。


 沈黙は永久のようだった。





 その頃、隣室では、兄のぽるたん星人がモニターを見つめていた。画面には黙り込んだ玉国くんとすばるたんが映し出されている。


 ぽるたん星人は呟いた。


「ぽるぽる、ぽるぽる……」


 日本語に訳してみよう。


『なんかヒマなんかヒマなんかヒマなんかヒマ』


 ぽるたん星人は凄まじく知能が低かった。




「玉国くん! 助けに来たよ!」


 突然、叫びながら詩野詩美さんが宇宙船内に乗り込んできたところで目が覚めた。




 なぜ……、詩野さんが助けにきてくれる夢を見たのだろう?




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