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勇者なのに勇者に殺されそうになったんだが  作者: catan
一章:水の国、アクアマリア。
8/8

8話 新たな目標

現在親知らずの呪術のを受けてしまい、痛みで執筆に集中出来ず、気力も落ちてしまっています。

投稿頻度も落ちていますが徐々に解呪出来ていますので、ゆっくり待っていただけるとありがたいです。

脳内に木霊する。


『お前は裏切られたんだ』


『経験値の為に誠也も結衣も殺されたんだ』


『...お前のせいで_


_っ!


記憶の中から飛び起きる。

動悸が酷い、それに冷や汗が止まらない。

息も切れているようだ、脳が上手く回らない...


...夢...か...


辺りを見渡してみてもあの宿では無くただの森、誠也の姿もない...

こんな姿にもなってしまって...


動悸が更に激しくなる、視界も曲がって...


...落ち着け...今更そんなに考えてももうどうしようも無いんだ...


そんな諦めに近い事を考えて気持ちを落ち着かせる、今陽気な事は全く考えられない。

元々あまり陽気な性格ではないが...


...汗で気持ち悪い、それに頭も熱い...

少し水でも浴びようか、確か昨日シチューを作る時に水を汲んできた川があったはずだ...


街道から外れ、森の中に少し入ったらすぐに見つかった。

良く考えたらそもそも寝ている場所から川のせせらぎが聞こえていた筈だ。

頭の中が恐怖や後悔でいっぱいなんだろう、

周りの事なんて気にも留められなかった。


早速服を脱ぎ、そこら辺の木に引っ掛ける。

といってもワンピース一枚なのだが。


...ってか、今の俺...女の子じゃん。

自分の身体を見下ろすと先程までは見えていなかった慎ましくも無く、主張し過ぎもしない膨らみに、その隙間から見える毛一つ生えていない恥丘が...


って、自分の体だぞ...

といってもこの身体になったのはつい昨日、まだ自分の身体という感覚が無い。

水面に反射した自分の姿を見ても、そこには全裸の華奢な美少女が虚ろなジト目でこちらを睨んでくるだけで自分ではないような気でいる。


これが健全な状態なら興奮していたのかも知れないが、こんな精神状態では興奮しないし。

むしろ少し呆れてくる。


「さっさと浴びるか」


自分に言い聞かせるように言いつつ、

右足からそっと水面に足を刺すように入れて温度を確認する。


「つめた...」


この地域は少し寒い地域のようで、さらに早朝という事もあり水がとても冷たい。

お風呂が恋しくなってくる。


一旦かけ湯ならぬかけ水をして自分の体に慣らしていく、何度かそれを繰り返してから入水。


いや、やっぱり寒いな...

さっさと上がろう、髪が汗でベタついているからそれを水で流し...

毛も長いし毛量も多くて大変だな、これは...

根元から先端まで念入りに洗っていく、それから胴体も濡らして手で擦っていく。

勿論石鹸も無ければスポンジも無いので自力で洗っていくしかない。

昨日、自分はエドワードに拾われるまで土の上に裸で寝ていた事になるから、身体には泥が付いていたりと結構汚れていた。

流石に時間はかかったが、なんとか綺麗に汚れを落とすことが出来た。


さて、川から上がる。

こんな寒い環境おさらばだ。

俺は服の横にかけて合った布を取ろうとして...


目が合った。


そこには昨日出会い、寝床?を共にした仲間...

エドワードが居た。

エドワードはすごく驚いた顔のまま固まり、こちらを見つめている。


「ああ、エドワードも水浴びですか?」


「え...いや私はアリスさんを探しに...というか隠してください!」


エドワードはハッとしたようにそう言い放ちながら後ろを向く。

そっか、女の子ならちゃんと隠さないとな。

男友達に見られたからなんだという気で居た...


「...えっち、身体拭いたら戻りますから待っていてください。」


どうだろう俺の演技は、大体アニメ等ではえっちとか言っていればそれっぽくなっている気がしたので実践したが...

既に手遅れだろうか...


「は、はい!すいません!」


エドワードはそそくさと木々の奥へ消えていく。

まぁ、成功という事にしておこうか。


にしても性別が変わるのは不便だな、

いっその事打ち明けてしまおうか...


まぁ、変人だと思われて終わりだろう。

この世界では性転換してしまう事がどれだけ一般的か分かってないしな。

それにもしあの転移結晶の効果だとして、それが広まってアイツの耳に届いたらまずい。


だとしたら口調も女性的にしようか...


...いや、その一線を越えるのは正直まだ怖いな。

まだこの身体を受け入れきれていない、あくまで脳内に居る自分は冴えない一般日本男児であり、こんなに可愛い女の子ではない。

女の子らしい事をすると嫌悪感が押し寄せてくる。

それにエドワードなら多分大丈夫だろう。


なんて事を考えながら身体を拭いてワンピースを着て、エドワードの元に帰る。


「戻りましたよ」


「ああ...おかえりなさい、馬車の準備は出来ていますよ。」


「ありがとうございます。」


既に寝袋や椅子は片付けられ、火の処理もされていた。

馬のトロントも元気そうだ、元気そうに出発はまだかとうずうずしている。


荷台に上り、適当な空きスペースに座り込む。

乗ったのをエドワードが確認すると、軽く手網を振ってトロントに合図する。

するとある程度の速さで進み始めた。


「そういえば、これからアリスさんはどうするんですか?」


「どうする...ですか...」


正直何も考えていないが...そうだな...

できれば日本に帰りたい...かな。


やっぱりその気持ちは強い。

こんな世界に留まりたいとは思わないし、今季のアニメも見れてないしな。


しかしどう伝えようか、異世界のことを話せば勇者だとバレるだろう。

それはあまり良くない、もしその情報が広まればヤツがやってくるだろう。


「そうですね、テレポートとか出来たらいいなぁ...なんて。」


そう考えて捻り出した回答がこれだ、あまりに酷すぎるがまぁ良いだろう。

多分伝わっただろうし。


「テレポート...ですか。

ちょっと違うかも知れませんけど、マリア城下町付近にある迷宮の最下層にはスキルストーンというスキルを得られるアイテムが存在するみたいですよ。

それも自分の望むスキルが手に入るのだとか。

既に手に入れた人も何人か居て本当の事らしいですよ。」


スキルストーン...望むスキルか...

確かに、それなら帰れるスキルを手に入れられるかもな。

...当面はそれを目標に情報収集しながら活動していくか。

どうせそれ以外の方法は知らないしな。


「そんなものがあるんですね...私もスキルストーンを目指してみましょうかね。」


「そうですか、その迷宮は比較的低難易度みたいですからもしかするかもしれませんね。

まぁ、といっても現在踏破した冒険者は皆A級の冒険者みたいですけどね。」


「A級...ですか...」


道は長そうだ、でもやってみる価値はあるかもしれないな。


「まぁ、やってみます。

どうせそれ以外に目標が決まらなさそうなので。」


「ええ、応援していますよ。

それで、私は今マリア城下町の北にある町、ウェルタータウンに向かっているのですが...

どうします?ウェルタータウンに品物を出荷したらマリア城下町に帰るので一緒に付いてくるか、それとも歩いて行きます?

正直歩くのは大変ですしオススメしませんが。」


大変な程距離が離れているのか、今の俺は武器も無ければ...というか服以外に何も無い。

まぁ死ぬだろうな。


「えっと、個人的には乗っていけるとありがたいんですけど...

迷惑じゃないですか?」


「いえ、迷惑だなんて...

昨日も美味しい料理が食べられましたし、貴女みたいな可愛い女の子と旅できて嫌な男は居ませんよ。」


さらっと言うなぁ...

可愛い...か...


実際可愛いと思う、川で見た時実感した。

正直中身が自分じゃなければ可愛いなんて言葉じゃ足りないくらいだろう。

まぁ、自分ってだけでマイナス100点だが。


「えっと...どうも...じゃあ、お世話になりますね。

これからもよろしくお願いします。」


「ええ、よろしくお願いします。

それと敬語じゃなくて良いですよ、これから数日間共にするんですから。」


「分かった、じゃあエドワードも敬語じゃなくて良いぞ。」


「ああ、私のコレは癖でいつもこういう口調で喋ってしまうんです。

だから代わりにアリス、と呼び捨てさせてもらいますね。」


俺達は握手をして、改めて旅の仲間となった。

正直あんな事があってすぐだ、あまり信用はしきれていない。

でも今はエドワードに頼るしか無いし、エドワードなら大丈夫だと直感が告げている。


さて、ここからウェルタータウンという街までは2日程かかるらしい。

旅路は少し長い、気長に馬車に揺られておくか。

ただまぁ、暇だとどうしてもあの時の事を思い出してしまう。

何か出来なかったのか、気が付かなかったのか...

なんて、もう取り返しのつかないしどうしようもない事なんだけどな。


途中、エドワードが本の入っている箱を教えてくれた。

こっちの顔がよっぽど酷かったのだろう、一目こちらを見た途端に急いで教えてくれた。


さて、どの本を読もうか。

近辺の植物図鑑や観光ガイドブック、冒険譚に昔話。

それと戦術に関する本...

これにするか。


今の俺は力だけあって技も学もない、こんなんじゃいつか足元を掬われる...

というか掬われたのだが。

...とにかく、これは俺にとって必要な知識だ。

読んでみるか。


内容は様々な事が書いてあった、戦闘における駆け引き...つまりフェイント等を使い読み合いを制する方法。

陣形...パーティーを組んだ際どのようか布陣で戦うのか、いつ陣形を変え崩すのか等。

立ち位置の概念や状況に応じた魔法、技等色々勉強になる事が書いてあった。


凄い本だな、こんなにも沢山の知識がこの1冊に纏まっているのか...


俺が感心していると、エドワードが俺の見ている本を見て話題を持ちかけてくる。


「その本、凄いですよね。

僕の友人の兵団長が現場向きの戦闘教本として一緒に書いたんです、そういった人は感覚的な所が多いので習得に時間がかかるのですが本ならすぐに分かるでしょう?

実際、冒険者志望の貴族の方々に多く売れているんです。」


「え、そんないい本だったのか...

本当に読んじゃって良かったのか?」


この世界の本は高級で貴重だ、まず紙が簡単に生産できない。

当然印刷技術も無ければ書き手も少ない。

当然そんなの高価になるのは仕方ない事なのだが...

まさかエドワードが手がけていた本だとは...


「ええ、大丈夫ですよ。

その代わり感想とか聞かせてください。

もし次に本を出す時に参考にしますから。」


「そうか、ありがとう。

そうだな...まず...


その後、本について色々喋りあった。

といっても全体的に良い出来なので褒める事しか出来ないのだが。

そもそも俺はそういう点は初心者だ、内容についてもあまり口出しするのは不可能だろう。


しかし面と向かって感想を言ってくれるのが嬉しかったのかエドワードはずっとにこにこしていた。

何だかこっちまで嬉しくなってきた。


そうしているうちに日が沈み始めたので、一旦野宿の準備を始める。

昨日と同じようにその場にある材料で適当に料理をする、今日は肉じゃがモドキだ。

何故モドキなのかというとこの世界のじゃがいもは紫色なのだ。

見た目から禍々しい色をしていたが、さつまいもみたいに皮を剥いたら綺麗な黄色が出てくるのかと思ったら全然中身も黒みがかった紫色だった。

紫芋とか存在するしギリギリ受け入れられたが、正直ちょっと口にするのが不安だぞ...

しかし味はちゃんとじゃがいもだったので上手く作れた。


エドワードも美味しいbotになりながら食べてくれていた。

やっぱり自分の料理を褒めてくれるのは嬉しいな。


次の日、ウェルタータウンには早ければ今日の夕方には着くみたいだ。

トロントの調子は絶好調らしく、今日中に着くのはかなり現実的なようだ。


馬車は昨日よりも早く、かつ丁寧なスピードで走っていく。

読みたい本はあらかた読み終わり、エドワードが気を使ってか色々話してくれている。


「アリスは冒険者なんですよね、クラスはなんなんですか?

僕は見ての通り商人なんですけど...」


...そういえばクラスはなんて言おうか...

勇者です!なんて馬鹿正直に言うのは当然良くないだろう。

ならなんて言おうか...

正直クラスの種類はそこまで把握していない、

だから知っている名前で通したいが生憎剣と魔法を使うクラスを知らない。

どちらかを封じるようなクラスを名乗るのは得策では無いだろうし...

適当にそれっぽいゲームにでもありそうな名前でも言っておくか...


「俺のクラスは魔法剣士だな。

剣と魔法に、それを合わせた技で戦うんだ。」


「魔法剣士...聞いた事の無いクラスですね...

もしかしてユニーククラスですか?」


ユニーククラス?

多分名前からして固有のクラスなんだろう、正直よく分かってないけど都合のいい解釈をしてくれたのは助かる。


「そうだな、他に魔法剣士ってのは俺も聞いた事が無いね。」


「やっぱりそうなんですね、凄いですねユニーククラスなんて...

それで、魔法剣士ってどんな風に戦うんですか!?

後学の為に是非聞かせてください!」


「いいよ、さっきも言ったけど剣と魔法で戦う、アタッカー系のクラスで_


突如トロントが停止した、それに合わせて荷車も急停止する。


_っと!どうしたんだ!?」


「トロント、どうしたんですか?」


エドワードがトロントの確認の為に馬車を降りる。

自分もトロントを確認するため、馬車から身を乗り出して見てみる。


トロントは非常に神妙な面持ちで立っていた、なんだか何処か悲しそうな...!?


トロントの脚には矢が刺さっていた、痛みのあまり動け無くなったのだろう。

それにしても矢を刺されても立って馬車を護ろうとしている様な姿勢が凄いな...


って!?違う!そうじゃない!


一体誰が撃ったんだ、何処から...


辺りは一面森になっている、木々の隙間に容易に隠れられるだろう。

それに闇雲に探しても見つからない筈だ。


いや、とりあえずまずはエドワードに伝えないと!


「エドワード、隠れて!矢が刺さってる!奇襲だ!」


「なっ!」


しかしその警告はエドワードが隠れるには僅かに遅かった...


微かに森の奥から聞こえたギギギという弓を引き絞る音...

その音の位地から敵の場所は見つけた、赤い目が薄らと光っている...

ソイツは既に弓矢を引き絞りきり、後は手を離すだけとなっていた。

このままだと確実にエドワードが逃げるのは間に合わず、射抜かれてしまうだろう。


でも俺なら...間に合う...!


「ファイアー_


俺は馬車を飛び降りながら詠唱し、エドワードの前に出る。

そしてヤツが矢を放った瞬間...!


_アロー!」


こちらも指先から火の矢を放った。

それらはお互い直撃し、燃え残った矢先だけが軌道を逸らし自分の長くなびいた髪を切っていった。


とりあえず何とか守る事には成功した...

赤い目の正体、それはゴブリンだろう。

矢先が石で出来ている、それに非常に粗悪な作りだ。

こんなのじゃ革鎧を貫けるか怪しい位だ。


人じゃないなら思いっきりやれる、流石にもし盗賊だとしても人を攻撃するのは躊躇うところだ。


俺は指を銃の形にし、同じ場所を狙う。

しかし次に当てるのは矢じゃない、本体だ。


弓矢には無い速射性が魔法にはある、射程では劣るが逆に魔法の射程内なら負ける事は無い。


指先に魔力を集中、それを真っ赤な火属性に変換し...


「ファイアーアロー!」


矢の形を成して飛んでいく、焦って次の矢をつがえようとしていたゴブリンは避ける事が出来ず火矢は脳天を貫いた。


反応の遅さ、知能の低さ、力の弱さ...


相手はゴブリンの中でも低位、レッサーゴブリンだろう。

今まで迷宮で相手にしてきたゴブリンファイターは中位に位置する強さであり、それに比べたら雑魚もいいところだ。


しかしそんな余裕ぶっている場合じゃない、仲間の一体が倒れたのを皮切りに茂みの中からゴブリン達が一気に襲いかかってくる。


総数は5、人数差は簡単に有利を作り出す手段だ。

俺は今かなり不利と言える、守る存在を背に5体を相手しなければいけない。

しかし、やるしかないのだが...


まずは数を減らそう、銃の形にした手をそのままずらして別のゴブリンを狙う。


「ファイアーアロー!」


そいつは避ける事もせず直撃、そのまま動かなくなる。

やはりこいつらは下位種なだけある、反応も上手くできないのだろう。

これなら...!


俺は再度次の敵を狙い...


「ファイアー...っ!」


危ない...っ!

俺の目の前に棍棒が通り過ぎる、魔法詠唱を中断し、回避していなければ今頃脳震盪ものだ。

...1人だけ動きの早いやつがいる、あれは普通のゴブリンか。

ゴブリン中でも低位だが、それでもレッサーゴブリンよりは十分に強い。

厄介だな、ここまで接近されると迂闊に魔法を使えない。


そして敵の猛攻が始まる、リーダーなのであろうゴブリンの動きに合わせて攻撃の合間を埋めるように連携して攻撃してくる。


速のパラメーターが低いのか、敵の攻撃は遅く躱すのは簡単だった。

いつまで経っても俺を倒す事は出来ないだろう。


でもそれは俺も同じだ。


「ふっ!」


攻撃の合間を縫って蹴りを入れる、ゴブリンはフギャという情けない声を漏らしながら倒れ込むが立ち上がり再度攻撃してくる。


あまり効いていない、いつかは倒せるかも知れないが俺は1人で数人分の攻撃を回避しながら攻撃を続けないといけない。

長期戦になればスタミナ勝負で負けるだろう。


それにいつ興味の対象が俺以外に向くか分からない...どうする...


回避し続けながら考えても策が思い浮かばない...

打開は厳しいと思っていた所に暗雲を払う様な一言をエドワードが言い放つ。


「アリス、これを!」


その言葉に合わせて後ろに大きく飛び、エドワードの方に一瞬意識を向ける。

エドワードの手には鞘に収まった長剣が握られていた。

ナイスだ!それがあれば簡単にこの状況を壊せる!


俺はエドワードの方に手をかざす、エドワードはそれに合わせてこちらに剣を投げる。

宙を舞っているそれを軽くジャンプし掴み取る、そしてそれと同時に俺の脳内には新たな技が浮かんでいた。


多分あの迷宮でオーガゴブリンを倒した時、レベルアップしたのだろう。

連撃スキルの範囲攻撃技だ。

今まで連撃スキルは技名などはなくただ一撃斬る速度で複数回斬りつけるだけのスキルだった。

この”技”が連撃スキルの真価なのだろうか...


...集中...


宙からゴブリン達を見下ろす、最短で切断するルートを考えるんだ...


そこだっ!


「連撃、七刀頚断!」


剣を抜き、地面に着地する。

それと同時にゴブリン達の頭が弾け飛んだ。


連撃スキル、七刀頚断。

名の通り、最大7回の連撃を素早く行い、その全てを敵の首に的確に叩き込む。

複数対象の技だ。


...全員死んだか...ふぅ...


このスキルは少し疲れるな、多用するのはやめよう。

しかし凄く強力なスキルだ、敵の首と首を線で結ぶように考えるとその通りに刃が通り敵を斬れる。

首と首を狙うという仕様上、単体には使えないが複数戦では瞬時に敵の頭数を減らせる非常に有効な技だ。


「す...凄いです...!」


なんて考え事をしていた静寂はエドワードの感嘆の声で消え去った、そうだなとりあえずは新たな技の習得に喜んで、エドワードの機転に感謝するとするか。


「いやエドワードもナイスだった、剣を渡してくれなかったら危なかった...助かったよ。」


「いえ、そんな...助けられたのは私ですから...

そうだ、怪我はありませんか?」


「ああ、無いよ、俺よりトロントの傷を治さないと。」


「そうでした!今治療しますからね!」


エドワードは治療キットを持ち馬車から飛び降り、トロントの脚の治療に取り掛かった。

トロントはやっとか...という顔で鼻を鳴らしている。


これは到着が遅れそうだな、少なくとも日中は厳しそうだ。

まぁ、そこまで急ぐ事も無いしある程度はゆっくりとした気持ちで居るか。

*Tips アリスについて

身長は150cm程でしょうか、太陽の光で煌めくプラチナブロンドの長髪に、真っ白で華奢で滑らかな肌、綺麗な碧眼に似合う凛々しいようなそれでいて優しい顔立ち。

少し悲しそうな、痛々しい表情をする事が多いですが笑った時の笑顔は格別です。

そして慎ましくもなく、大き過ぎもしない程度の胸。

文字にしたらC位でしょう。

まるで天使が舞い降りたような見た目です、

世の貴族が見たら誰もが欲しがって、オークションにでもなれば巨額が動くのは明白です。


だからこそ、喋り方が少し気になります。

いや、個性ですし過去に何があったのかは知らないから良いんですけど。

もう少し可愛い喋り方をしたら完璧なのに...

いや、そうだったらきっと僕は耐えられなかったでしょう。


ーとある商人の脳内の独り言

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