3話 お勉強
お勉強回ってなろうのテンプレって感じで良いですよね、苦手って人は適当にするする読んでいってください。
あの後、俺達はセレイアさんに連れられて浴場で水浴びをした。
浴場はこっちの世界の銭湯のような造りになっており、現実と問題なく疲れを癒す事が出来た。
セレイアさんの話では入浴は貴族の娯楽らしく、庶民は基本的に水を流すだけ。
石鹸等はあるが使えない人も多いらしい。
隣国のアクアマリアは首都が水の都と呼ばれているそうで、
そこになら大衆向けの大浴場があるそうだ。
この王宮に大浴場があるのは前国王がその隣国の大浴場に感動して建設したらしい。
その後、それぞれ部屋に案内された。
男二人と女二人の相部屋だ。
部屋内部はファンタジー作品で良く見る豪華な部屋って感じだ、大きなベッドに綺麗な模様が彫られた机と椅子にふかふかのソファ。
俺と誠也は部屋に付くと手早く鎧を脱いで棚の上に置き、ベッドに飛び込む。
「疲れたぁ〜!」
「疲れましたね...」
ふかふかのベッドが心地良い、心身の疲労を全て包み込んでくれる...
寝てしまいそうだ...
「にしても、皆さん凄くいい人そうで安心しましたよ。」
誠也がそう切り出す。
「ああ、誠也含めてみんな良い奴で良かったよ。」
「そう言われると照れますね。」
社交辞令を受け取るようにそう返事した、
本心なんだけどな。
「ホントだって、俺は結構陰キャなオタクだからさ。
誠也の格好見た時陽キャじゃ〜んって少し怖くなったんだよ、でも話したら凄い丁寧な感じだし...うぇーい系かと思ったからさ。」
「あはは、そうなら嬉しいですね。
俺は元々陰キャな感じだったんですけど、それが原因で虐められて...
高校に入ってから自分を変えてやるって思って高校デビューしたんです、それからはいじめも無く楽しく高校を過ごせているので満足なんですけどね。」
「そうか、なら早く戻って楽しい高校生活を再開しないとな。
俺も友達と遊びに行く約束があったんだ、帰ったらそいつと遊びたいよ。」
「ええ、お互い帰る為に頑張りましょう。」
そうお互いは決意を新たにした。
よくこういう作品だとこの世界を楽しんだり、
チートで楽しく暮らしたりする事が多いがそんな事よりゲームやアニメが見れないのが耐えられない。
それに命のやり取りなんて現代人として耐えられないからな。
その後も趣味の話や女子二人ならどっちがタイプかなんてくだらない話をしてから適当に眠くなったタイミングで眠りに落ちた。
ちなみに俺は結衣の方がタイプだ、清楚な感じの子が好きだからな。
誠也は美里みたいな一緒に居て楽しそうな人が良いらしい。
そんなしょうもない話が楽しかった。
次の日、俺達はとある一室に集められた。
午前中は座学、午後に実技で訓練してくれるそうだ。
チートがあるとはいえ俺達はただの高校生、剣の握り方もモンスターについても何も知らないから非常に有難かった。
座学の最初ではアビリティやスキル、魔法について習った。
アビリティは常に発動している能力で、例えば俺の片手剣なら知識が特に無くても思う様に身体が動きどうしたら良いか分かるようになる。
スキルは自分から発動しようとして効果を発揮するもので、基本的にはスキル名を声に出す等して発動するらしい。
使えるスキルは頭の中に自動的に記憶されており、練度による差はあれど基本的にはスキルさえあれば発動出来るらしい。
じゃあ俺の聖剣召喚は一体...
魔法はスキルの一つで一番メジャーなスキルと言ってもいい。
魔法の中にも強さの分類があり、
下から生活級、初級、中級、上級、魔級だ。
大体のクラスは生活級が使え、魔法職なら中級以上が使えるといった普及度らしい。
また属性の概念もあり、
主要四属性の火、水(氷)、風、大地(雷)に
特殊二属性の光、闇が存在している。
主要四属性は直接的な魔法が揃っており、攻撃や防御、創造等が主な効果だ。
特殊二属性は間接的な魔法が揃っており、回復や補助に反補助、毒が主な効果だ。
と、かなり長い内容の話だったが俺はゲームをしていたのと[記憶]のお陰かすぐ覚えられた。
美里も勉強は苦手なんて言ってたが[記憶]のお陰かするすると覚えていった。
唯一[記憶]を覚えていない誠也が一番手こずっていた。
その後もダンジョンの仕組みやノウハウ、必需品等を説明された。
そして昼食後、実技練習に移った。
まずステータスによって身体能力が上がっているのでランニング等で身体を慣らす所から始める。
インドアな俺は過去ならランニングの時点で倒れていたが今は幾らでも走れそうな程体力が付いていた。
その後自分達の武器を使って素振り、それと兵士達との練習試合を行った。
兵士達には余裕で勝てたが兵団長には経験の差なのか勝てなかった、だが俺達はLv1でありすぐに追い抜かされると兵団長は言っていた。
それだけステータスの差は大きく、時には努力家を踏み潰す残酷なシステムなのだろう。
なんて、持つ側の視点だが。
その後は休憩を挟んで魔法の練習だ。
最初装備を貰った時の予想通り、武器に付いている宝石が触媒となって魔法を放つ事が出来るようになっているそうだ。
触媒が無くとも魔法は使えるが威力が落ちるらしい。
だから魔法が使える場合は武器に触媒を嵌める事は多いのだとか、勿論全てが触媒の杖や聖鈴には劣ると魔術師団長は語っていた。
俺と美里は主要四属性の魔法を使えるので初級の発射魔法、[アロー]系の魔法を練習する事になった。
誠也は光魔法の[パニッシュ]という相手をよろめかせる魔法を練習するようだ。
結衣は兵舎に行って負傷兵の手当を手伝いに行くらしい。
さて、俺達の魔法の練習に集中するか。
俺と美里は目の前の的に武器を向けてその先に集中する、すると武器の先端に何か半透明の紫色の玉のような物が現れた。
そのまま魔力を火に変換するように意識すると玉が赤色に変わる。
こうなったら後はトリガーを引くだけだ。
「「ファイアアロー!」」
俺達がそう唱えた瞬間目の前の玉が矢のように変化し的へと飛んでいく、多少ズレていた狙いは自動的に修正され軽く追尾するように的へと吸い込まれ着弾した。
現実離れしたその光景に美里と一緒に心踊った。
そのウキウキ気分のまま他属性の[アロー]や範囲攻撃魔法の[ポール]、罠魔法の[スイッチ]も使えるように練習した。
美里は魔法のスキルランクが高いから中級の魔法も使いこなしていた。
美里は昔みた御伽噺みたいだと終始楽しそうだった。
俺は美里が中級魔法を練習し始めた辺りで魔法剣の練習を始めた。
魔法剣にも初級、中級、上級があるようだ。
スキルの影響か基礎的な知識は全て記憶している。
今は初級しか使えないみたいだ。
初級の魔法剣は4つ、[残火] [劣氷] [弱風] [放雷] が使えるようだ。
さらにそこから付与した魔法を飛ばす[射出]、
魔法を広げる事で武器のサイズを大きくする[放出]が存在する。
俺は剣を構え、そこから左手に魔力を込める。
属性を火に変化させそれを刃に添わせるように移動させながら詠唱する。
「魔法剣...残火...!」
直後、剣から火が疎らに現れるようになった。
そのままダミーを切りつけてみる。
切りつけると少ししか無かった炎は一気に燃え上がり、ダミーを燃やし始める。
そのまま何度かダミーを切ると火は消えて普通の剣に戻った。
何度か斬りつけると消えるのか。
試しにもう一度[残火]を使って次は何も斬らずに待ってみる、すると1分ほどで火は消えた。
何度か試行錯誤してみると大体6回程攻撃すると消える事が分かった。
また、10秒毎にも1回分減少するようで30秒待った後だと3回しか攻撃出来なかった。
中級になればもっと攻撃回数が増えるのだろうか。
その後も他の属性や[射出]に[放出]も練習したり、[連撃]と合わせたりもしてみた。
スキルの併用は結構難しく、途中で魔法剣が切れてしまった。
練習が必要なのだろう。
また、少し普段の身体を動かした時と違う、奇妙な疲労感を感じた。
多分これがこの世界のMP的概念なんだろうか。
確かセレイアさんの話ではスキルを使いすぎると疲れて倒れると言っていたか...
乱用せず
何度か練習していると日も暮れてきた、他のみんなも終わったようで練習は終わりとなった。
明日からは迷宮攻略を開始するらしい。
それに伴って明日からは自分達で生活しなきゃいけないらしい、勿論手切れ金?は貰えるらしいが。
俺は練習が終わった後、図書館はあるかとセレイアさんに聞いて案内してもらった。
この時代、コピー機なんてものは無いので本は貴重なのだがこの王宮内には1000冊ほどの本が置いてあった。
かなりの量だ、セレイアさんによると王立図書館の次に多いらしい。
俺はセレイアさんに感謝を伝えると早速役に立ちそうな本を探していく。
俺が求めているのは情報だ、有難いことにここの本はちゃんと整理されており分類毎に分けられていた。
そしてちゃんとタイトルは読める、明らかに日本語では無いが不思議と簡単に読めてしまうのだ。
これも勇者としての恩恵だろう、文字の不安は払拭された。
まず最初に目に付いたのは過去の勇者に関する記述だ、約千年前に三人の英雄が異世界から召喚され邪龍を討ち取ったというお話だ。
英雄の一人は[勇者]のクラスを持っており、そこから3人の事をまとめて勇者と呼ぶようになったと書いてある。
他には法律に関する本もある、世界が違えば法も違うから覚えておかないとな。
法は基本的には自分の世界と一緒だ、盗みはダメだとか器物損壊はダメだとか傷害も勿論ダメだとか何とか。
その中でも一際目立つのは殺人罪についてだろう。
人殺しは神が禁ずる行為で、人を殺すとその瞬間右頬に焼印のようなもの[殺人の烙印]が押され人々に人殺しだとバレるようになってしまうらしい。
ただ、烙印を押された者を殺しても烙印は押されないらしい。
神が直々に禁止するのか、随分と便利な機能だ。
このシステムのお陰でこの世では殺人はかなり少ないらしい、実際こんな世界じゃ殺人を取り締まりきれないだろうしもし存在しなかったら人殺しだらけだろう。
次に手に取ったのは魔物大全というタイトルの本だ、魔物の種類等が載っている。
その本の最初が興味深い内容で、こう書いてあった。
この世界では月に一度血の雨が降る、それが魔物となり襲い掛かるのだとか。
そして既に存在する魔物が血の雨を浴びると強くなるらしい。
5年程前に現れた迷宮は血の雨に関係なくどこからともなく現れるらしく、原因は不明で未だ調査中らしい。
魔物の種類に関するページへとめくった所でセレイアさんが晩御飯が出来たと呼びに来てくれた。
食事はそこそこ豪華な物だったのだが調味料が貴重なのだろう、やはり薄味というか素材の味という感じだ。
嫌いではないがジャンクフードが恋しくなる、
きっと日本に帰ったら1年はマクドばかり食べるだろう。
その後、お風呂に入り部屋に戻る。
するとベッド横のサイドテーブルに先程まで読んでいた魔物に関する本が置いてあった。
きっとセレイアさんが置いていってくれたのだろう。
「それは...この世界の生物に関する本ですか?」
誠也が不思議そうに本を見つめてくる。
「ああ、その中でも人類の敵である魔物についてだな。
さっきまで図書館で読んでたからセレイアさんが持ってきてくれたんだと思う。」
「なるほど、では折角なので私も読ませて貰っても良いですか?
フォワードを務める者として敵の情報は知っておかないといけませんからね。」
「そうだな、一緒に見ようか。
...そういえばサッカーが趣味って言ってたな、
ポジションはフォワードなのか?」
「いえ、ミッドフィールダーでしたね。
それはどうでも良いんですよ、早く見ましょうよ。
僕結構こういう図鑑が好きなんですよね。」
「へぇ、結構子供っぽいところもあるんだな。
でも分かる、俺も本の中では好きな部類だ。」
一緒に本を読み進めていく、こっちの世界のファンタジー小説の知識を交えながら...
...ふと、ページを捲ると1枚の紙が入っていることに気がつく。
破れたページだろうか?
だが明らかに材質が違うその紙にはこう書かれていた。
ウラギリモノ二 キヲツケロ
メイキュウデ コロサレル
...裏切り者...だと...?
一体誰の事を指してるんだ...
「...これって...この城に裏切り者が居るって事ですか...?」
「かもしれない、セレイアさんが警告してくれたんだ。」
ただ、誰かは分からない。
誰も浮かばない。
「迷宮で殺される...迷宮に入ったら攻撃されるって事でしょうか...」
「ああ、そうかもな...
明日、用心に越したことはないな。
美里と結衣にも伝えてこよう。」
「待ってください!
こんな事考えたくないのですが...
もしかしたら二人が裏切り者かも知れません...」
「なっ...そうか、有り得るか...
...本当に考えたくないが。」
「ええ、逆に私達は安全に近いと思っています。
こんなの裏切り者に見られる場所に置くわけないと思うので。」
「確かに、その通りだな。
それとこの紙は燃やして処分しよう。」
「そうですね、お願いします。
明日...気をつけましょうね。」
「ああ...」
今日は不安で眠れない夜になるだろう。
本当に裏切り者なんて居るのだろうか...
仲間内にはいないと思うが...
同じタイミングで召喚され、一緒に未知に触れて行ったんだ。
そんな事ある訳無い筈だ。
だとしたら王様?騎士団長?それともセレイアさん...?
それこそ、ありえない話だろう。
セレイアさんがこの本を持ってきたんだ。
...考えても無駄そうだな、良い答えは浮かびそうに無い。
大人しく寝ておくか...
結局、輾転反側をし続けて日が昇る少し前にやっと寝付いた。
*Tips 現在居る国について
この世界には7つの国で形成されている、
その中の右下に位置するのが現在彼等が居る国
[フライメイヤ]である。
上には水の都[アクアマリア]が存在し、
左側には都市国家の[アイアンメイデン]、
砂の国[ダヴ]が隣接している。
フライメイヤは本土の他に右側に島を領土としており、全体の領土は広め。
草原が広がる豊かな土地で農業や漁業が盛んに行われている他、最近は魔王の居る迷宮として城下町メイヤードに多くの冒険者が集まっている。
ー世界観光ガイドブック【フライメイヤ編】
より一部抜粋