2話 帰りたいから
「さて、ではさっきセレイアさんが言っていたようにステータスも含めて自己紹介しましょうか。」
自己紹介か...自分がオタクであると言うこと以外特に無いので困る...
何言えばいいんだ...
「まずは俺から言いますね、名前は鳴海誠也。
17歳です、高校二年生ですね。
趣味は料理、部活はサッカーをやってます。
...ってこれじゃ学校みたいですね。
ステータスはこんな感じです。」
そう言って誠也は黒板のような物に自分のステータスを書いていく。
このステータスは他人には見せられないようで、わざわざ部屋を移動した事を考えるとあまり詮索してはいけないのだろう。
この世界のマナーのようなものか。
なんて考えていると誠也が書き終わったようだ。
ステータスを見てみると...
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セイヤ・ナルミ 男
クラス:聖騎士 Lv1
パラメータ:力C 守C 知E 速F
アビリティ:大剣D 防御D 魔術F 重装E
スキル:守備D 庇うC 魔術・光属性F
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大体俺と同じようなランクだな、タンク職らしいスキル構成をしているな。
武器は大剣、剣を盾がわりにするのかはたまた身体が盾なのか。
単純な盾がない分立ち回りが少し難しそうだ。
その分火力も防御力も高そうだが。
「えっと、こういうのはあまり分からないのですけどセレイアさんが言っていたように味方を守るのが得意な様なので頑張って皆さんの事を守りますね。」
中々かっこいい事言うじゃないか。
美里も同じ事を思ったのだろう、イケメン等と言って肘で小突いて茶化している。
「じゃあ次は心、お願いできますか?」
次は俺のターンか
全く考え付かなかったのでとりあえず浮かんだ言葉を口にする。
「どうも、有栖崎 心だ。
16歳で同じく高校二年生。
趣味は...ゲームとか読書とか、所謂オタクです。
オタク的には聖剣はロマンなのでいつか出せるように頑張ります。
ステータスは...」
誠也の横に同じ様に黒板に書き記していく。
やはりこれは魔道具の様な物の様で書いても特にすり減る事の無くスラスラと描ける。
どちらかと言うとホワイトボードみたいだ。
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シン・アリスザキ 男
クラス:勇者 Lv1
パラメータ:力D 守E 知D 速C
アビリティ:片手剣D 魔術E 記憶F 俊敏D 錬金F
スキル:連撃D 魔法剣C 魔術・四属性E 聖剣召喚
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「素早い攻撃要員ってとこかな、
賢者とか大神官みたいな守りが苦手そうな二人は誠也に任せて俺は魔法剣で素早く敵を倒していく係だな。
ゲームとかでこういうのは何となく慣れてるから、そういう面でみんなの力になれたらって思う。」
緊張した〜!!!
でもとりあえず言い切った、偉いぞ俺!
「ふふ、聖剣の事はあんまり気にしないでください。
そんなかっこよさそうな事されたら僕の魅力が相対的に減ってしまうでは無いですか。」
なんて、冗談みたいに言われる。
真面目そうな感じだけど結構冗談とか言うんだな。
「悪いけどこういうのは勇者が主人公なんだ、二番手に収まっておいてくれ。」
冗談を言われたので冗談で返しておいた。
「おっと、負けませんよ?」
そう言いながら誠也が手を伸ばしてくる、俺は手を握り熱い握手を交わす。
「ちょいちょい、男子達だけで仲良くならないでよ〜?
次ウチ自己紹介ね。
ウチは奈々垣 美里、二人と同じく高校二年生の17歳。
趣味はイ○スタかな〜、可愛い写真あげたりとか。
あとはオシャレ、まー嫌いな女子は少ないだろうけどウチはその中でも特段好きな自信あるね。
それで、ステータスだっけ...」
確かに、美里の見た目はかなり可愛くオシャレさんだ。
学校の制服を着ているが小物でしっかり可愛くしているし髪の毛もちゃんと手入れしているようだ。
そしてそんなギャル賢者様のステータスは...
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ミサト・ナナガキ 女
クラス:賢者 Lv1
パラメータ:力E 守D 知C 速D
アビリティ:杖F 魔術D 記憶D 防御E
スキル:強打F 魔術・四属性C 連続魔D
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しっかり魔法使いって感じだな、少し防御も出来るのか。
まぁでも防御してたら攻撃出来ないだろうから最低限の自衛って所か。
「まー、ウチもよく分かんないんだけど多分魔法使うんだと思う。
だよね、心?」
「ああ、魔法で攻撃するタイプだと思う。」
「みたいなんで心が言ってたとおり誠也、護衛よろしく〜。」
「はい、任されました。
では最後に、お願いできますか?」
誠也はそう結衣に聞く。
「は...はい!」
そんなカチカチの返事からカチカチに歩いてカチカチ...ほんとになってる気がしてきたぞ?
緊張が目に見て取れる、美里が頑張れ〜なんて応援してたので俺も一緒に頑張れ〜と応援しておく。
「うう...頑張る!
えっと...新実 結衣、みんなと同じで2年生の16歳。
みんな高校二年生なの、奇遇っていうか...狙って召喚されたのかな?
しゅ...趣味は読書...こういう勇者が魔王を倒すみたいな小説も読んだりするから...心と同じく多少の知識はある...と思う...
ステータスは...」
趣味は同じく読書か、後で好きな本とか聞いてみようかな。
この子からは同じオタクの匂いがするし。
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ユイ・ニイミ 女
クラス:大神官 Lv1
パラメータ:力D 守E 知C 速D
アビリティ:片手根E 魔術D 記憶E 祈祷D
スキル:強打E 魔術・光属性C 回避F
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ちょっと攻撃が出来るヒーラーって感じか、まぁ攻撃には期待しない方が良いだろうしヒーラーをそんな危険な目に合わせる訳にもいかないだろう。
「えっと、皆さんの傷を癒すのが仕事だと思います...多分...
なので...えと...頑張ります...」
そう言って結衣はお辞儀する。
その頭を美里さんが撫でてよく頑張ったね〜とか誠也もお疲れ様でした等と労っている。
俺もお疲れ様と軽く声をかけて労っておく。
「にしても皆さん役割がちゃんと違うんですね、これって結構バランスが良いのではないですか?」
そう言いながら誠也俺の方に視線を向ける。
「そうだな、守備役が1人に攻撃役が2人、回復役が一人とかなりバランスが良い。
大体のゲームや漫画では基本的な構成だと思う。」
「そうなんですね、クラスは神様が決めるなんて言ってましたがちゃんとバランスに配慮して決めてくれたのでしょう。」
「非干渉な俺達の世界とは違って随分とご親切な神様だな。」
なんて話をしていると扉の奥からガチャガチャと音を鳴らしながら歩いてくる音が聞こえる、
扉が開かれるとセレイアさんが沢山の武器や鎧を木箱に詰めて持ってきていた。
セレイアさん結構力持ち?
「お待たせしました、これが皆さんの装備になります。」
そう言ってセレイアさんはテーブルの上に木箱を置き、装備を並べていく。
「どれも城の騎士達に支給されるような優秀な装備達ですよ」
確かに、並べられたそれは最初にみた甲冑達と意匠が似ている。
来たばかりの世界で物の価値は分からないが素人目にも良い装備だと映るこれらは実際優秀なのだろう。
「心様はこのチェストプレートと鎖帷子、ロングソードです。
奥のパーテーションの裏で着替えてください。」
「わかった。」
全体的に白を基調に青い装飾が施されたそれは神聖な雰囲気を醸し出していた。
まぁお城の装備だしそりゃそうと言えばそうか。
机の上から装備を取り、パーテーションの裏に周る。
さっき渡された装備の他にインナーも用意されている様だ、今着ている学生服じゃ格好つかないから一新出来るのはありがたい。
麻の服を着て、その上から鎖帷子が付いたチェストプレートを着る。
若干重いが何も着ないよりは良いだろう、この程度なら移動速度にも影響はなさそうだ。
ズボンも履き替えて、ブーツを履き腰のベルトにロングソードを取り付ける。
着てみると案外しっくりくる、ステータスの影響だろうか以前の自分なら重くて動けなかっただろうが今ならこれでオリンピックに出れる位だ。
多分俊敏の影響だろう。
服を軽く整えてパーテーションの影から出る、
すると他の3人からおぉと感嘆の声をあげられる。
「なんか、コスプレみたいじゃないか?」
「いえ、お似合いです心様。」
「似合ってますよ。
子供の頃読んだ絵本に出てきそうです。」
「そうね、似合ってる似合ってる。
オシャレなウチが言うから間違いないよ。
ね、結衣?」
「え...えっと...格好良いよ...」
お遊戯会の仮装みたいになってないなら良かった。
「ありがとう、みんなも着てみてくれよ。」
次に誠也が装備した、
俺と同じカラーリングの鎧だが面積に厚さが違う。
頭から足に至るまで全てが鉄だった、所謂プレートアーマーだ。
バイザーの着いたグレートヘルムに、
美しい装飾が施されたベザキュー。
多分騎兵の装備なんだろう、足には拍車が付いていた。
そして背中には巨大な剣が背負われていた。
「確かに仮装みたいで少し恥ずかしいですね、似合ってますか?」
「いや、似合ってるってゆーか...
顔見えないし歩く鎧だって。」
「確かにそうですね、これでどうです?」
そう言って誠也はバイザーを上げて顔を出す。
確かに顔には少し恥ずかしいと書いてある様だった。
「うん、イケメンが出てきたって感じだな。」
「同感、似合ってるよ。」
「似合ってる...」
なんて言うと照れ照れしながら小声ありがとうございますと言った、まぁ恥ずかしいのは分かるけどそのうち慣れるだろう。
「次!ウチと結衣で着てくる!」
「え、一緒に?」
「いーじゃん、女の子同士仲良く行こうよ!
ほら!」
美里は結衣の手を握りながら二人分の装備を持ってパーテーションの裏に移動する。
...パーテーションの裏からイチャイチャした声が聞こえてくる...
「...女の子同士って良いですよね...」
誠也がボソッと呟いた、
お前そういう趣味だったのか...
「うん、分かる。」
俺も同類なんだがな。
二人が着替えた服は同じ様なローブだった。
ただ美里は魔女のような装飾や帽子で、
結衣はシスターみたいなレース等で装飾されていた。
そして美里は大きな杖を持ち、
結衣はメイスにベルを持っている。
「どう?可愛いっしょ?」
「ああ、二人ともよく似合ってる。」
「可愛いですよ、ところで結衣が持っているベルは何なのですか?」
誠也が疑問を投げかけると横で待機していたセレイアさんが答えてくれる。
「それは聖鈴と言って仲間を回復したりする魔法が使える物ですね、普通の杖では回復魔法は使えませんので大神官である結衣様には必要な装備なのです。」
なるほど、魔法の触媒みたいなものか。
そういえば誠也と俺の剣には鍔に宝石のようなものが付いてたな、これも触媒になるのだろう。
「理解しました、ありがとうございます。」
「では、皆さん着替え終わったので最後にもう一度王様に謁見していただきます。
そこで勇者として活動する旨を伝えてください。」
「分かりました。」
俺達は部屋を出て、来た道を戻り再度王に謁見する。
先程と同じ様に相変わらず左右には沢山の甲冑達が立ち並んでおり、堅苦しさが見て窺える。
長いカーペットを歩き、セレイアさんに教えて貰った通り所定の位置で跪く。
「装備を着たという事は魔王を討伐してくれるのかね?」
王様の問いに先頭に居る誠也が答える。
「はい、私達は迷宮に挑み最奥の魔王を討伐します。」
「よく言った、勇者達よ。
魔王を討伐した暁には国庫の金銀財宝を渡すと約束しよう。
それと...」
王様が指を鳴らすと横からセレイアさんが布の上に乗った六角形の結晶を持ってくる。
これがさっきセレイアさんが言っていた転移結晶だろうか。
「これは転移結晶と言う、我が国庫にも1つしか無い宝だ。
これがあれば最大4人が好きな場所に移動出来る、これで宝を持って勇者達の世界に帰るといい。」
なるほど、報酬としてはかなり美味しいだろう。
宝を売れば多分あっちで遊んで暮らせるだろうからな。
「では今日はもう時間も遅い、王宮内でゆっくりと休むといい。
明日は訓練を受けてもらう、詳しい事はセレイアから聞いてくれ。」
「ご好意、感謝いたします。」
「では、期待しておるぞ。」
俺達は頭を下げた後、部屋から出る。
「はぁ...緊張しました。」
部屋から出た途端誠也がそう言いながら項垂れる。
結衣もはぁ〜なんて大きく息を吐く、
確かに息が詰まる緊張感だった。
「お疲れ様、俺も緊張したよ。」
「美里は緊張しないの?」
「え?まぁしないかな」
このギャルやっぱり大物だよ。
*TIPS Lvについて
Lvは自分のクラスにあった行動をする事で上昇する、料理人なら料理を、剣士なら剣で生物を斬れば上昇する。
一般的な人間はLvが2桁になる頃には寿命を迎える事が多い、その為10Lv以上の人は秀才として扱われる。
Lvが20に到達すると上級職になることが出来る。
料理人なら調理師、剣士なら剣聖等。
この領域に到達する者は街に一人居るかどうかである。
ーメイヤード騎士団長の言葉