合流しました
シエラ達が今一歩という所まで来た頃。
壁を挟んだ通路の反対側のアルギス達もシエラ達の存在を感知していたが、どうにも合流出来そうに無かったので別の通路を探そうと踵を返そうとしていた。
「うーむ。どうにも通路の壁の位置が変化しているような感じだなあ」
「駄目そうですか?」
「そうだねえ、一旦引き返して別の道を探そうか」
壁を破壊しても良いのだが、見た目には老朽化した建物の中。
倒壊してしまってはたまったもんじゃない、とアルギスが壁に背を向け、リグスとナースリーの背中をポンと押してもと来た道を歩きはじめた瞬間だった。
ドカン、という爆発音と衝撃が背後で起こり、アルギス達を大量の埃が襲った。
「あ、いたいた。お父さん、繋がったよ」
「お、やったなシエラ」
大量の埃と衝撃波を咄嗟に魔力の障壁で防いだアルギスは、視界の先で聖剣を手に持っているシエラと、愛用の剣を今まさに鞘に納めようとしているリチャードの姿を見て肩をすくめた。
アルギスが建物の倒壊に留意し躊躇った壁の破壊を、シエラとリチャードの親子2人は特に考えずに決行したわけだ。
結果。子供達は笑顔で再会できたのでアルギスも苦言を呈する事はしなかったが、その代わりにアルギスはリチャードに苦笑いを見せた。
「勇者ちゃんとその父親は、何というか、思い切りが良いねえ」
「私はお父さんの子だからね」
「シエラは私の娘だからな」
アルギスの言葉に同時に答えたシエラとリチャードは、お互いに顔を見合ってニコッと微笑む。
そんな時だった。
シエラとリチャード、マリネスが入ってきた穴、壁にポッカリ空いた大穴が時間を巻き戻すように再生されていく。
その様子を子供達は不思議そうに眺め、リチャードはどういう原理かと思考に耽り、アルギスは何か心当たりがあるようで「なるほどねえ」と呟く。
「もしかしたらと考えてはいたが」
「アルギス、この場所を知っているのか?」
「いや。この場所を知ってるわけでは無いよ。ただ、ここが何かは分かった。
この場所は大迷宮、もしくはダンジョンと呼ばれる、異界だ。
はるか昔、世界中に存在していたが、踏破され尽くし絶滅したと語られてきた魔法生物の一種だね。
植物で言うところの食虫植物や食人植物の大規模版と言うと分かりやすかな? 建造物や洞窟、塔。形は様々だが、どれも本質は同じ、宝に釣られてやってきた大勢の人間を食べる生き物。
ダンジョンとはそう言う存在なのさ」
「ではあの地龍は」
「トールス君が首を刎ね、僕と勇者ちゃんの使った大規模儀式魔法でも死ななかったんだ。恐らく本体ではない、というか見た目が地龍と似てるだけで全く別の存在。
もしくはダンジョンが移動する為の乗り物ってだけなのかもねえ」
「はあ。全く、とんでもなく迷惑な馬車だな」
アルギスの説明、考察にリチャードは額に手を当て、眉をひそめて大きくため息を吐く。
しかし今は合流出来た事もあって気も晴れたのか、リチャードは直ぐに気持ちを切り替えるように深呼吸する。
「少し開けた場所があるならそこまで移動して休憩しよう。腹が減ってしまった」
「ああ確かに。僕も随分魔力を消費したからね、ちょっと休憩したいよ」
「じゃあ私達が先行するね。お父さん達は私達に着いて来て」
大人2人の言葉にシエラ達が任せて下さいと言わんばかりにニコッと笑い武器を持つ。
そんな4人の子供達の様子にリチャードは微笑むと「では任せるよ」とシエラの頭にポンと手を置き、アルギスは肩をすくめて「子供は元気だねえ」と笑うのだった。
そして、シエラ達を先頭に歩き始めてしばらく経った頃。
石畳の通路を歩いて行くと開けた場所に出た。
というよりも大きな広間に出た。巨大な剣を持つ戦士の石像が壁際に立ち、天井は無く、青空が広がっている。
「これがダンジョンか、なんでも有りだな」
「地龍のお腹の中って青いんだね」
「なるほど、そういう見方も出来るか」
開けた場所に出たのをこれ幸いにとシエラは昨晩使っていた野営道具を腰のアイテムポーチをひっくり返して持ち、縦に振って取り出していく。
敷物を広げ、その上に座り上を見上げると雲すら流れている地龍の腹の中の空を見上げて、シエラ達は水分を補給したり、地龍を氷漬けにする前に倒した魔物達をアイテムポーチから取り出し、焼いて調理すると石像が見下ろす大広間で小休止とした。




