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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
寒冷期事変

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84/115

出撃

 翌日の明朝。

 朝日が昇り、その光を背に受けて、冒険者達はエドラの街の中央区時計塔前に集合し、領主の言葉を待っていた。

 冷える寒冷期の空気も、今日は冒険者達の熱気にあてられたか、時計塔の前には熱気すら立ち込めている。


「諸君。突然の招集に応えてくれてありがとう。感謝している」


 エドラの街の中央にそびえる時計塔を北に見て、西門へ直通で向かう為の大通りの中央に用意された壇上に領主が現れ、拡声魔法で声を大きく響かせ、時計塔の前に集まった冒険者を眺めた。


 そして、自分たちの住むエドラ、ひいてはグランベルクに迫る地龍の脅威を説明し、領主は一言「君達の命、賭けてくれないか」という言葉を最後に口をつぐんだ。


 相手はただの魔物では無い。

 龍の中では温厚な部類とはいえ、その大きさは読んで字の如く規格外。

 山のような龍に挑めと言ったのだ、領主は冒険者からの拒否の声を覚悟していた。

 

 しかし、領主の予想に反して冒険者から上がった声と言えば。


「よっしゃあ! やってやろうぜ!」

「おいおいそんな龍と戦うのかよ! 俺たち伝説になっちゃうんじゃねえの⁉︎」

「報酬よりも龍の鱗売ったほうが金になるなあ!」


 などなど、拒否どころか皆が皆、やる気に溢れていた。


「ありがとう。では諸君、出撃を頼む。年若い見習いや、自信の無い者は残っても良い。一人でも多く、生き残ってくれ」


 領主のその言葉を最後に冒険者達は自らを鼓舞するように雄叫びを挙げた。


 正直な話、長々と続く、凍てつく寒冷期にクエストに行く事ができなかった冒険者達は鬱憤うっぷんも溜まっていたのだ。


 そんなおりにもたらされた"儲け話"に冒険者達は昂らずにはいられなかった。

 丁度このエドラの街には、かつて地龍を含め、数々の強力な魔物を討伐したSランクパーティ【緋色の剣】が住んでいたからというのも冒険者達が昂った大きな要因だろう。


 実際、この時計塔に前にも彼らは姿を現し、最前列で領主の言葉を聞いていた。


 そして領主が壇上から降りると【緋色の剣】の剣士、リチャードの弟子の1人であるトールスと、そのトールスの恋人であり現在の緋色の剣のリーダーであるミリアリスはそれぞれの剣と杖を掲げた。


「俺達緋色の剣は最善を尽くす」


「ボヤボヤしてると報酬総取りしちゃうからね」

 

「付いて来れるやつだけ付いて来い!」


 トールスのげきに再び冒険者達が雄叫びをあげて用意された馬車や四つ脚の体格の良い草食の竜が引く竜車に乗り込んで行く。

 馬車の床を踏み鳴らしたり、武器を叩き鳴らしたりしている様はお祭りのようにも見えた。


「ははは。騒がしい事だな」


 そんな様子を眺めながら、赤黒いコートの上から胸当てと肘迄の手甲、膝までの脚甲を装備し、ドラゴンの牙と希少金属アルティニウムを混ぜて打たれた合金性の愛剣を腰に携えたリチャードが乗れそうな馬車を探して辺りを見渡していた。


「良かった。みんなやる気みたい」


「生まれ故郷でない者もいるはずだが、皆この街が好きなんだなあ」


 リチャードの横、娘のシエラが父と良く似た装備に身を包み、リチャードの顔を見上げながらそう言うと、リチャードはポンとシエラの頭に手を置き満足そうに微笑んだ。


 そんなリチャード達の元に、緋色の剣のメンバー全員が集まって来た。

 

「また先生とクエストに出る事が出来て嬉しいです」


「相手は地龍だそうですが、何か策はあるんですか? 先生」


「先生。娘さん達も参加するの⁉︎ 大丈夫⁈」


 口々にかつての教え子であり、パーティメンバーである緋色の剣の面々から言葉というボールを乱打され、受け止めきれずにリチャードは苦笑し「ま、まあ待て待て」と教え子達を宥めていく。


「すまんが、私達の班はいつかトールスとリンネが吹き飛ばした山、ああいや今は大穴かクラテル地帯へ向かう。策、というほどでは無いが、そこに奴を追い込めれば倒せなくても足止めは可能だ」


「追い込めるでしょうか。今回向かって来ている地龍は、かつて俺達が倒した地龍よりも巨大だと聞きましたけど」


「まあ一応、餌はある。トールス達は出来るだけ地龍を弱らせてくれると助かる。他の冒険者にも伝えておいてくれ、無理だけはするなとな」


 恩師であり、かつてのパーティメンバー、リチャードに言われた緋色の剣の面々は、リチャードの言葉に「え〜。一緒に戦えないのかあ」と残念がったりはしたが、文句を言ったり、別行動に反対したりはしなかった。


 信頼していると言えばそれまでだが、皆リチャードという冒険者の事を理解していたのだ。

 この人に限って意味の無い行動はしない、それがかつて10年共に歩んだ仲間達の共通の認識だった。


 故に緋色の剣の面々は「じゃあ、途中までは一緒に」と専用の竜車を呼び、その後ろにリチャード達の為にもう一台竜車を呼ぶと緋色の剣の面々は前の竜車に。

 リチャードとシエラ、そして餌、もといアルギスを含む子供達のパーティ【アステール】を後ろの竜車に乗せた。


 そして、エドラの街に領主の軍の出撃を報せる時計塔の鐘の音が鳴り響く。

 その鐘の音が鳴り止み、しばらく間を置いて再び鐘の音が鳴り響いた。


 エドラの街の冒険者達の出撃を報せる鐘の音だった。

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