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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
後日談から始まる物語
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嬉しい報告

 シエラが自分自身のギルドカードを眺めながらリチャードと帰路に着いたのは、ギルド内にある食事処で昼食を終えた後だった。

 帰り道でもシエラがカードを見ながら歩くものだからリチャードは「危ないから。歩く時はちゃんと前を向きなさい」とシエラに言い聞かせ、シエラはいつもの調子で「ん。分かった」とそのギルドカードを着ていた上着の内ポケットに入れ、父に言われた通りに前を向いて歩き始める。


「ねえパパ」


「ん? どうした?」


「パパが兄ちゃん達とパーティ組んでた時も喧嘩とかあったの?」


「パパは誰とも喧嘩にはならなかったが、トールスとリンネはよく喧嘩していたよ」


「あー。聞いた事ある。山一つ吹き飛ばしたんだよね?」


「うむ。止めるのに随分苦労したよ。何せ国に認められた剣聖と大魔導師の本気の喧嘩だったからなあ」


 リチャードはかつて所属していたSランクパーティ【緋色の剣】で起こった元パーティメンバー2人の当時の喧嘩の様子を思い出しながら、苦笑し「本当に大変だったんだよ」と空を仰いだ。

 

「私も喧嘩したりするのかな」


「さて、それはどうかな。他人と長い時間共に過ごせば少なからず感性の違いから摩擦が生じて喧嘩の火種になる物だからね。だがまあそれで良いのさ。仲間と喧嘩して仲直りしてを繰り返してお互いを知るのは若者の特権でもある。大人になるとなかなか喧嘩出来なくなるからね」


「んー。難しいね」


「ああそうだな。コレは私達が人間である以上とても難しい問題だ。何せ神様達ですら喧嘩するんだから」


「絵本にもあったね。神様が喧嘩する話」


 こんな会話をしながら、2人は街を歩いて自宅に向かう。

 貰ったギルドカードを早くアイリスに見せたかったシエラは徐々に歩く速度が上がっていき、いつの間にかリチャードの手を引くようにシエラは歩くが、リチャードはこの時シエラが自分の手を引く力の強さに感心していた。

 11歳の少女の力とは思えない程の力強さに「これも勇者たる所以か」と得心していたのだ。


 そして、自宅に帰り着き、扉を開くとリビングの方からアイリスが駆けて来てシエラを抱き上げた後、リチャードにそのまま身を寄せた。


「お帰りなさい二人共」


「ママただいま、なんだか嬉しそうだね」


「んふふ〜、分かる?」


「という事はやはり、そういう事だったのかい?」


 シエラを抱き上げたアイリスの満面の笑みにつられるようにリチャードも頬を緩めてアイリスの肩を抱き寄せ、廊下を歩いてリビングに向かう。

 いつもの三人掛けのソファにアイリスはシエラを抱えたまま座り、リチャードはその横に座ると、アイリスの言葉を待った。


「えっと、なんて言えば良いのかしら。えっと、そう。私、アイリスは貴方の子供を授かりました」


「ああ。そうか、なんて事だ。帰ってきて数日でこんなに嬉しい事が起こるなんて」


 笑顔のアイリスの言葉に、リチャードも嬉しそうに笑うが、込み上げてきた感情を抑えられなくなったのか、目頭を押さえ涙を目に溜める。

 よく分かっていなかったのはシエラだけだ。


「子供?」


「そうよシエラちゃん。ママね、赤ちゃんを授かったの。シエラちゃんの弟か妹かはまだ分からないけどね。シエラちゃんはお姉ちゃんになるのよ?」


「私が、お姉ちゃん?」


 アイリスの話を聞き、少しずつ意味を理解していったか、シエラの瞳が輝く。しかしシエラはこういう時になんと言って良いか分からずにリチャードの方に視線を向けた。


「こういう時はおめでとうと言ってあげるんだよシエラ」


「ん。ママ、おめでとう」


「本当にめでたい。ありがとうアイリス。きっと君を、君達を幸せにする」


「もう十分幸せなんだけどねえ」


 まだ小さな命だが、診療所にて鑑定魔法で検査をしてもらったアイリスの中にはアイリスやリチャードが予想した通り、新たな命が宿っていた。

 シエラにしてみれば友達とパーティを組んでクエストに挑む際に便利な魔法があれば良いと思い、習って使った探索魔法だったが、それがきっかけで新たな命の誕生を知る事が出来た。


 だからというわけでは無いが、アイリスはその事を知らせてくれたシエラが愛しくて抱きしめる。

 抱きしめるというのは子供にとっては最大の愛情表現だ。

 シエラは抱きしめられた事が嬉しくてアイリスを抱きしめ返す。

 リチャードはそんな2人を見て微笑むと、アイリスの肩を抱き寄せ、シエラの頭を撫でるのだった。

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