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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
寒冷期事変

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暖炉の前で微睡む家族

 翌日の天気は晴れ。

 しかしながら外の気温は低く、本日も暖炉の火は欠かせなそうだ。

 午前中、ギルドの鍛錬場を借りてリグスやロジナと模擬戦をした後、帰宅した際に自宅前に数人のドワーフが何やら話し込んでいるのを見たので近付き「こんちわ」と声を掛けた。


「やあお嬢ちゃん。シュタイナーさんちに何か用かい?」


「私んちだよ、ここ」

 

「ああ! じゃあお嬢ちゃんがシュタイナーさんの娘さんかあ! 屋根の修理に来たんだよ。ちゃちゃっと修理すっからしばらくしばらく待っててくれな?」


「ん。ありがとう、滑りやすいから気を付けてね」


「優しいお嬢さんだ。大丈夫、これでもプロなんでね。良し。それじゃあ取り掛かるぞ野郎ども!」


 自分とほぼ同じ身長の髭を蓄えたずんぐりした髭面のドワーフの男達にペコリと頭を下げて、シエラとマリネスは自宅の玄関を開けると中に入る。

 靴に付着した雪を落とすと、シエラは背中に担いでいた聖剣を鞘ごと下ろして壁に立て掛け、魔銃剣を納めたベルトはポールハンガーに引っ掛けた。


 その後に続いてマリネスがブーツに付着した雪を落としていたところ、ふとマリネスの頭に雪が付いているのを見つけたシエラがその雪を払い落とそうと手を伸ばす。

 しかし、丁度その時マリネスが顔を上げたので、シエラの手はマリネスの頬に触れる事になった。

 

「シ、シエラちゃん?」


「あ、ごめん。雪が付いてたから取ろうとして」


「あ、ああ。そうなんだ、ごめんね」


 マリネスに付いた雪を払い落とし、シエラは暖炉の火を求めてリビングへ向かう。

 その後ろでマリネスは頬に触れたシエラの手の感触を思い出して顔を赤らめていた。


 そんな2人の更に後ろ。

 一緒に帰宅したらロジナは2人のそんな様子を見てなごみ、機嫌良さげにフサフサの尻尾を振りながら、2人の後ろを付いてリビングへと向かう。


「ただいまぁ。お父さん、ドワーフのおっちゃん達来てたよ?」


「おかえりシエラ、マリネス君。そうか、流石に時間に正確だな。まあ後は親方達に任せるさ」


 暖炉の前のソファに身を寄せ合うように座る父と母。

 そんな2人の足元にマリネスの後ろからすり抜けるようにリビングに入ってきたロジナが身を震わせると、そそくさと暖炉の前に行くと伏せて目を閉じた。


「寒かったでしょう? さあ、こっちいらっしゃい」

 

「ん。行く」  


 アイリスに手招きされるまま、シエラとマリネスは暖炉の前へ向かうと、それぞれ靴を脱いで暖炉の前の絨毯の上に座った。

 

「はぁー。暖炉あったかいなあ」

 

「そうだねー。気持ち良いねえ」  


 絨毯から暖炉までは距離があるが、その熱は十分シエラとマリネスを包み、冷えた体の芯から暖めていく。

 あまりの心地良さに、しばらくは平気そうに朝の模擬戦の様子をリチャードやアイリスに話すシエラだったが、疲労もあってか、もしくは寄りかかってきたロジナの暖かさが原因か。

 シエラは眠気に誘われ、眠気に任せて寝転がると、ロジナを枕にそのまま眠ってしまった。

  

「ははは。大きくなったとはいえまだまだ子供だなあ」

 

「しっかりしてるように見えるけど、12歳だもの。まだまだ子供だわ」


「そうだな。マリネス君も疲れてるだろ? 眠くなったら遠慮せずに寝るんだよ?」  


「ありがとうございます先生。でも私は大丈夫です」


 眠ってしまったシエラの寝顔を愛おしそうにマリネスは見下ろしながら言うと、マリネスは立ち上がりソファの背に掛けていたブランケットを取ると、シエラに掛けて再びシエラのすぐ横に腰を下ろした。


 しばらくの間沈黙するリチャード達。

 皆一様に暖炉の火の暖かさにポワポワと眠気に呆けていたのだ。

 欠伸をリチャードがすれば、それが移ったかのように隣に座るアイリスが、続いてシエラの横に座るマリネスが欠伸をする。

 最後にセレネも欠伸をしたものだからそれが可笑しくて3人は顔を見合わせるとクスッと微笑んだ。


 パチパチと弾ける薪の音。

 揺らめく暖炉の火。

 炭化した薪で明滅する赤い火種。

 

 いつのまにか誰言うでもなく、シエラに続いてリチャード達も目を閉じて眠ってしまう。


「やあリチャード! 今良いかな!」


 そんな家族を叩き起こしたのはリチャード宅に不法侵入してきた魔法使い、アルギス・メテオールだった。

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[一言] (無言のゴッド・フィスト)不法侵入はいけない
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