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リチャードに迫る影

 リグスがフォレストウルフを討伐している様子をリチャードは4人から離れた位置で眺めていた。

 飛び掛かってきたフォレストウルフをリグスが盾で防ぎ、間髪入れずに剣でフォレストウルフの喉を刺し貫く。

 

(ほお。怯む様子も見せないか、やるな少年。盾で防ぐにしても12歳くらいの子供から見れば自分より体躯のデカい狼は恐怖の対象になる筈だが、ロジナとの特訓が効いたな。

 刺した場所も良い。骨に当てず、的確に神経系と大動脈を切断している。流石は肉屋の倅、どこを切れば良いかよく分かっているな)


 フォレストウルフから魔石を抜き取とっているリグスを見ていたリチャードが傍に立つシエラ達に視線を移した。

 

(シエラはシエラでリグス少年のフォローが出来るように立ち位置を調整していたし、マリネス君やナースリー君もリグス少年が盾でフォレストウルフを弾き飛ばしたなら、魔法で追撃出来るようにしていた。

 だが、リグス少年の判断が良かったな。弾き飛ばしていたら例え追撃したとしても避けられていた可能性がある。

 それを踏まえての喉への一撃だとしたら、ふむ。新しい世代の冒険者達は実に優秀だな)


 木の影に身を隠し、リチャードは微笑みながら娘達のパーティが成長した姿を夢想する。

 そして、しばらくと待たずに魔石を抜き取り終わったリグス達が出発した為、リチャードも移動を開始。


 その後直ぐの事だった。

 森に霧が立ち込め、視界が白く染まった。

 子供達を見失ってしまうリチャードだったが、苦手ではあるが探知魔法を発動。

 娘達を見つけ、その方向に進もうとした時の事だ。


 リチャードの目前に鋭利な刃物の切先が迫った。


「む、なんだ?」


 常人であったなら、否、駆け出しの冒険者だったとしても、その一撃は間違い無く致命傷であった。

 しかしリチャードは装備していた拳撃用の手甲でもって謎の斬撃を防ぎ、後ろに跳ぶと拳を構えた。


「流石はSクラス。この程度では沈みませんか」


 拳を構えるリチャードの耳に聞き覚えの無い男の声が響く。


「誰だ」


「答えるとでも?」


「だろうな。闇討ちとは穏やかではないが、何が狙いかな?」


「勇者の命」


「何?」


 森の中に響く声。

 その声が娘の命を狙っていると言った瞬間、リチャードはシエラ達の元へ駆け出そうとした。

 しかし、そんなリチャードの眼前の地面にポッカリ闇色の穴が空く。いや、空いたように見えた。影がリチャードの眼前に落ちたのだ。

 上空から何かが落下してきていると判断して、リチャードは再び後ろに跳ぶ。


「邪魔しないでもらうよ冒険者、貴様の相手はソイツだ。なに、直ぐに娘とは会えるさ。あの世でな」


「待て!」


 リチャードの声に森から響いていた男の声は答えなかった。

 代わりにリチャードの目の前に現れたのは牛の頭に巨人の身体、牛の脚が二脚、筋骨隆々と表現するのが適しているであろう巨木ほどの太さの腕が4本。

 リチャードの体躯を優に越す、2メートル以上はあろうかという牛頭人身のミノタウロス。

 そのミノタウロスは大鉈2本と巨大なバスターソードが2本を太い4本の手に握りしめていた。


「ゴアァア‼︎」

 

「ミノタウロス? 魔界の魔物が何故ここに」


 リチャードの疑問にミノタウロスが答えるわけもない。

 ミノタウロスは代わりに巨大なバスターソードを振りかぶり、リチャードを狙って側に生えている樹木を薙ぎ払った。


「生木が枝みたいだな。とんでもない怪力は流石ミノタウロス。懐かしい、以前みんなと魔界に行って以来だ。だがすまんな。遊んではやれんぞ」


 地面擦れスレまで身を屈め、ミノタウロスの一撃を避けたリチャードが立ち上がり、ミノタウロス目掛けて駆け出した。

 咆哮するミノタウロスに臆する事無くリチャードは走り寄る。

 久々の強敵との戦いに、リチャードの口角が少しばかり上がっていた。


 近付くリチャードに大鉈を振り下ろすミノタウロス。

 その一撃を横に跳んで避けるリチャード。

 ミノタウロス周辺の木は軒並み倒され視界は良好だ。

 濃い霧の中だろうとミノタウロスの巨躯はよく見える。


 リチャードは身体強化の魔法を発動し、大鉈を振り下ろして隙の出来たミノタウロスに駆け寄り、膝に一撃、全体重を乗せ拳を叩き込んだ。


「はっはっは! 流石に硬いなあ、だがもう一発は耐えられまいて!」


 岩でも殴ったのかという手応えに笑うリチャード。

 ミノタウロスはリチャードを振り払おうと殴られた足で蹴ろうとするが、リチャードはそこに更に身体強化で強化した拳を叩き込んだ。


「グォオオオ⁉︎」


「おや。砕けたね。さあ邪魔をするならまだまだいくぞ」


 膝が逆に曲がったミノタウロスが唸り声を上げ、4本の腕を滅茶苦茶に振り回した。

 しかし、そのどれもが空を切り、地面を抉るだけでリチャードの体には触れることも無い。


「君は自分の弱点を知らないのかい? いかな巨躯、いかな怪力、4本腕というアドバンテージがあろうとも、真後ろには攻撃出来んのだよ」


 リチャードは武器を振り回すミノタウロスの股下を抜け、背中に担いだ愛用のロングソードを抜くと肩に担ぐ様に両手で握って構え、ミノタウロスの無事な方の膝裏にフルスイングして一撃で膝を切断。


 悲鳴をあげて膝を付き、直後尻餅を付いたミノタウロスの背面から剣を突き立てると、リチャードは背負って投げるように剣を抜き、ミノタウロスの心臓を裂いて決着とした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぬ、魔王軍が仕掛けて来たのかな?
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