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昇格任務へ!

 その日、シエラ達のパーティ【アステール】の4人は予定通りCランク冒険者への昇格任務を受ける事になった。

 初めての亜人種、ゴブリン討伐という事でシエラを含めて全員が持ち得る最高の装備に身を包み、街の中央区の冒険者ギルドへと向かう。


 そこにはシエラの父、リチャードの姿も勿論あった。

 神隠しに遭った先、立ち寄る事になった妻アイリスの故郷で貰ったアラクネの糸を用いてエルフの秘術を編み込んだ赤いコートに身を包み、リチャードは背中に愛剣を担ぎ、両手に拳撃用の手甲を装備している。

 

「パパ今日は珍しく剣は使わないの?」


「いや、そういう訳ではないよ。ゴブリンは洞窟のような暗くて狭い場所を住処にすると養成所で習ったろ? 狭い場所で戦うならこういう装備も使うさ。まあ私はシエラ達の後ろから着いて行くだけだから使わないと思うがね」


「でもパパ……」


「ああ大丈夫、分かってるよ。警戒は怠らんさ」


 話をしながら歩く冒険者の親子。

 そんな親子とマリネス、リグスとナースリーは、冒険者ギルドに到着すると昇格任務を受注する為に受付に向かう。

 賑わう冒険者ギルドに現れた、いつもと違う様子のシエラ達。更にはSランク冒険者であるリチャードの登場に受付に並んでいた他の冒険者達はざわついた。


「お、シエラちゃん、リチャードさんも。今日は気合い入ってますねえ」


「こんちわ。今日は昇格任務なんだよ」


「へえ〜。もう昇格かい? そりゃあ凄えな。流石はリチャードさんが手塩に掛けてるだけあるなあ」


 受付の最後尾に並んだシエラに気が付き振り返った中年冒険者がシエラに声を掛けた。

 いつの間にか常連になっていたシエラやリチャードの知り合いの冒険者だ。


「私は鍛錬に付き合ってるだけさ。この子達の活躍はあくまでこの子達の努力の賜物だよ」


 前にいるシエラの肩にポンと手を置き微笑むリチャード。

 そんなリチャードの微笑みに応えるようにシエラも微笑んだ。

 

「俺たちも負けてらんねえな。じゃあ皆昇格任務頑張ってくれ。俺たちもクエスト行ってくるぜ」


「ん。バイバイおじさん。またね」


 話しているうちにシエラ達が任務を受注する番が来た。

 知り合いの冒険者を見送り、シエラはギルドの総合受付に昨日貰った昇格任務用の依頼受注書を提出する。

 

「昇格任務ですね? 確かに受け付けました。任務内容を再確認しますね? えっと、東の街道を進んだ先の森の奥、洞窟内に棲みついたゴブリンの討伐になります。討伐数は最低4体。よろしいですね?」


「ん。大丈夫です。頑張ります」


「立ち会い人の方は出来るだけ手出しはしないようにって、シュタイナーさんは言わなくても大丈夫ですね。目的地付近までは馬車が出ますのでそちらを利用して下さい。じゃあ頑張ってね【アステール】の皆さん!」


 こうしてシエラを先頭に【アステール】のメンバーと保護者のリチャードはギルドを出発。

 ギルドから出て大通りに向かうと、受付の女性が言っていた通り馬車が待っていたので乗り込んだ面々は最後にもう一度装備を確認する。

 今までのクエストで戦ってきた本能だけで向かってくる魔物とは違い、知性を有する亜人種が相手だ、準備をし過ぎて損することなどないのだ。


「では行きますよ?」


「ん。お願いします」


 馬車の御者の声にシエラが答え、馬車は進み始めた。


「なあシュタイナー。今日いつもと剣違うじゃん。もしかしてそれが旅先で手に入れた剣なのか?」


「ん。聖剣らしい」


「コレがシュタイナーが言ってた聖剣⁉︎ カッケェなあ。なあ、ちょっと貸してくんね?」


「別に良いけど。多分リグス触れないよ?」


 街の大通りを東門に向かって進み始めた馬車の荷台の上、シエラが抱える剣を見てリグスが興奮気味に言うと、シエラが聖剣の柄を前に座るリグスに突き出す。


「触れない? んなわけ、あイッテェ‼︎ なんだコレ⁉︎ 雷撃魔法かなんか使ったのかシュタイナー!」


「使ってないよ。この剣抜く前はパパも触れたけど、私が抜いてからは私しか触れなくなった」


「ええ? なんだよつまりシュタイナー専用って事か? いいや、絶対なんか仕掛けがある筈だ! 意地でも触ってやるぜ!」

 

「クエスト前に怪我する気? 止めなよリグ」


 聖剣の結界に手を弾かれ、手を真っ赤に腫らすリグスはナースリーに諭されるも諦める事が出来ずに再びシエラの持つ聖剣に手を伸ばす。

 しかし、結果は変わらず。

 リグスの手は弾かれ続ける事になった。


「ふふふ。この剣は私の物なの」


「いでえー」


「もう! 馬鹿リグス! クエスト前に怪我してどうすんのよ!」


「いや、だってよお。触ってみたいじゃん聖剣」


「止めておきなさいリグス君。私も何度か挑戦したが、聖剣はシエラでないと駄目らしい」


「えぇ。まあ先生が駄目なら無理かあ」


「ほら手、出して。傷直すから」


 聖剣を握ることを諦めたリグスの手をナースリーが握って言いながら回復魔法をリグスの手に掛けた。

 見るみる赤くなるリグスの顔。

 その顔を見てシエラは意地の悪い笑みを浮かべ、リグスとナースリーの2人が座る横に移動するとナースリーの肩を押してナースリーをリグスに抱き付かせた。


「シ、シエラちゃん?」


「な、何すんだテメェ!」


「恋の手助け」


「いらんわ!」


 こうしてシエラ達はガタゴト揺れる馬車の上、緊張を解しながら目的地への到着を待つのだった。

 

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