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昇格任務前日

 【エドラの街中央区、冒険者ギルド】

 この場所はエドラの街の中央にそびえる時計塔からやや離れ、馬車や竜車が通る大通りに近い十字路に存在する。


 この街の住人や他の街からやってきた行商人など、何か困った事がある者は皆この場所で依頼を発注し、冒険者はこの場所で依頼を受注する。


 中に入ると正面に総合受付、左側には昼は食事処夜は酒場になるギルド内の料理屋が拡がっている。正面右手の廊下を進めば解体場や地下訓練所へと続く階段や裏庭の訓練所へと続く扉がある。


 総合受付の横にはギルドマスターの執務室や職員の休憩室がある2階へと続く階段があり、シエラのパーティ【アステール】の4人は2階のギルドマスターの執務室にて、艶のあるセミロングの黒髪から猫耳を生やし、モノクルを掛けた現在のギルドマスター、ミリアから昇格任務の説明を聞いていた。


「というわけで、東の街道を進んだ先、森の奥の洞穴にゴブリンが住み着いたらしくてね。あなた達の昇格任務はこのゴブリン四体の討伐よ。良いわね?」


「ん。大丈夫だよミリア姉ちゃん」  


「こら、ギルドではちゃんとマスターって呼びなさい」


「はーいマスター」


「まったく。お母さんに似てきたわねシエラちゃん」


「ん。ありがとう」


「褒めてないのよ?」


 母であるアイリスに似てきたと言われ「えへへ」と照れ笑いするシエラの姿に苦笑するミリアは「まあ良いか」と半ば諦めたように執務机の引き出しを開くと、中から一枚の依頼書を取り出して机の上に置いた。


「これが昇格任務用の依頼書よ。クエストを受ける際に総合受付に提出してね。あとは監察者、というか立ち会い人の同行が必須条件なんだけど」


「あ、パパが立ち会いたいって言ってた」


「あら。それなら問題無いわね。あなた達は運が良いわね本当に。ベテランの中でも腕利きが立ち会い人になってくれるんだから。とは言え、立ち会い人はクエストに参加するわけではないから油断しないように、良いわね」


「はーい」


 こうしてシエラ達のパーティ【アステール】はCランク冒険者への昇格任務を受注出来るようになったが、今日はシエラの新しい武器の試し斬りと試し撃ちの為、別の任務を受ける事にしていたのでシエラ達はミリアに頭を下げ、執務室を後にするとギルドの一階、総合受付横にあるの依頼書の貼り付けられている掲示板の前へと向かった。


「お、シエラちゃん達、今日もクエストかい?」


 総合受付の前を通った際、受付の向こうから眼鏡を掛けたギルドの男性職員が声を掛けてきた。

 最近何かとシエラ達のパーティにクエストを紹介したりしてくれている職員だ。

 濃い紫掛かった黒髪に、立てばスラっと高い身長に細身の男性、顔立ちは優しげで少し垂れ目なところから女性冒険者にファンがいる程には人気がある人物でもあった。


「ルグナーさん、こんにちは。今日は新しい武器試したいから軽めのクエスト受けようかと思って」


「へぇ。新しい武器かあ。その腰の剣がそうかい? 格好良いねえ。君達はまだ見習いだからねえ、何か丁度良い依頼があったかなあ? あ、これなんかどうだい?」


 黒髪の優男、ルグナーが受付のカウンターの下に設置されている棚から取り出した依頼書をシエラに渡す。

 そこに書かれていたのはフォレストボア一頭の討伐というものだった。


「森から街の外にある農地付近にかけて本来のフォレストボアよりは小型の個体が目撃されていてね。調査依頼が来ているんだ、可能なら討伐もとね」


「フォレストボア一頭かあ。ありがとうルグナーさん。ホーンラットいっぱい狩るよりは良さそう。これ受けます」


「はい確かに。君達なら大丈夫だろうけど、十分注意してね?」


「はーい」


「あ、そういえばマスターから昇格任務の依頼書は受け取ったかい?」


「ん。あるよ。明日受ける」


「明日か。うん分かった、じゃあ今日は無理せずにね」


「ん。行ってきます」


 小型のフォレストボア討伐クエストの依頼書に判子を押してもらい、依頼の受注を完了したシエラはマリネスとリグス、ナースリーを伴ってギルドを後にした。


 幼い冒険者見習い4人がギルドから出るのを受付から見守っていたカウンターに座るルグナーが眼鏡のブリッジに手を掛け、位置を直しながら口角を上げてニヤッとイヤらしい笑みを浮かべる。

 そしてルグナーは席を立つとギルドの奥の事務所へと向かい、同僚の職員に「明日客が来るから準備をしたいので」と告げると早々にギルドから姿を消した。


 一方、シエラ達は依頼書に従い街の北門から農地に向かう為、石畳の道を北へ北へと歩いていた。

 昼を過ぎた為、途中の屋台で串焼きを食べながら4人は目的地に向かう。

 

 北門の堀に掛かった可動橋を越え、もう収穫を終えた土だけしかない農地沿いの街道を歩いていく。

 しばらく探していると、畑の土が盛り上がった。


 目的のフォレストボアだ。

 土とよく似た真っ茶色な体毛な為に土が盛り上がって見えたのだ。

 

「じゃあ今日は私が先行するね。リグスは2人を守って」


「おうよ任された!」


 かくして冒険者見習いパーティ【アステール】4人の戦闘が始まる。

 晴れていた蒼空にいつの間にやら暑い雲が掛かり、周囲が暗くなっていく。

 先程まで晴れやかだった青空が少しずつ泣き出しそうになっていた。

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