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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
シエラのこれから

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42/115

シエラの新しい武器

 商業区に壁を隔てて隣接するエドラの街の工業区。

 ここには武器屋に卸す武器防具を製造する鍛冶屋などが軒を連ねる。

 シエラがマリネスを伴って訪れた赤い煉瓦で統一された建屋の鍛冶屋が並ぶこの場所などはその見た目のままにエドラの住人からは【赤茶通り】【煉瓦通り】などと呼ばれている。


 この場所は商業区とは違い一般住民の利用は少なく、商業区の武器防具屋に置いてある既製品に満足出来ない冒険者や、工業区関係者が行き来しているのでシエラ達が良く行く商業区に比べるとやや治安が悪い。


 シエラ達が到着した鍛冶屋でも中から商業区では中々聞かない罵声が飛び交っていた。


「この馬鹿が! 誰に向かって口聞いてんだ! これっぽっちでアルティニウム製の剣なんか打てるわけねえだろうがボケェ‼︎ 出直してこい!」


 シエラが手を掛けようとした鍛冶屋の扉の向こうから罵声に続いてバタバタと足音が聞こえてきたので、怯えるマリネスに横に避けるように言って自分もスッと横に避けた直後、中からガタイの良い男が飛び出してきた。

 尻でも蹴飛ばされたのだろうか、くっきり靴の後が付いている。


「なあ頼むよ親方あ。出世払いでどうにかならねえか?」


「まぁたケツに蹴り入れられてえか! ウチはきっちり前金制じゃボケェ! 分かったらキッチリ金揃えて持ってこい! そうすりゃあ金額に応じた仕事はしてやらあ!」


 2メートルはあろうかという大男に続いて鍛冶屋の扉から出て来たのはその大男に負けず劣らずの大男。

 筋骨隆々、白髪の髭面、尖った狼耳を生やしたこの鍛冶屋の親方だ。


「親方さんこんにちわ」


「こ、こんにちわ、です」


「おお! シュタイナーの坊主の娘っ子! やっと来たなあ。全く、母ちゃんが大変なのは知ってたけどよお。で、どうだい母ちゃんの様子は」


「おととい生まれたよ」


「おお! そりゃめでたい! 今度祝いの酒持って行くって父ちゃんに伝えといてくれ」


「ん。分かった」  


「さて、じゃあとりあえず中に入んな。ちょっと鉄臭えがそれは我慢してくれよ?」


「大丈夫だよ親方。工房の匂いは嫌いじゃないから」


 こうしてシエラとマリネスは鍛冶屋の親方の年老いた獣人に案内され、鍛冶屋へと足を踏み入れた。

 店構えは商業区の武器防具屋とよく似ていて、扉の正面にカウンター。左右の壁に所狭しと剣や槍、ハルバードや大槌など様々な武器が並んでいる。


「ところでシュタイナーの娘っ子。そっちのお嬢ちゃんは誰なんだ?」


「私のパーティのメンバーで、将来の、ええっと、お嫁さんになるのかな?」


「はっはっは。なんだそりゃ、ままごとでもしてたのか? まあ良いか。じゃあここで待っててくれ奥から注文の品を持って来る」


「はーい」


 獣人族の親方の言う通り、カウンターの前で待つ事数分。

 親方はカウンターの横から続く奥の工房からリチャードがシエラの為に注文した武器と革のベルトを手に、2人の元に戻ってきた。


「ほらよ。これがシュタイナーの坊主から頼まれた物だ。全てアルティニウム製の特注品だ、厄介な注文だったがおかげで楽しめたぜ」


 アルティニウムというのはこの世界における最高硬度の鉱石であるアルテライト鉱石から製錬された金属の名称だ。

 丈夫で軽く、鎧にすれば並の刃どころかドラゴンの一撃にすら耐え、刃にすれば鉄を易々と切り裂く程の切れ味を有する。

 この場合、アルティニウム製の矛が強いか、盾が強いかという話になるが。使い手次第というのがこの世界での答えになる。

 素人がアルティニウム製の矛を振ってもアルティニウム製の防具は破壊出来ないが、玄人がアルティニウム製の矛を振れば、アルティニウム製の防具は斬り裂かれ、貫かれる事もあるわけだ。


 希少な金属でもあるアルティニウム。

 そんなアルティニウムでリチャードがシエラの為に多額の金銭を支払って製造した武器、それが今、カウンターの上に置かれ、巻かれていた布が親方の手で取り払われた。


「アルティニウム製の剣ならまだしもまさか新型の魔導銃を造らされるとは思わなかった。どうだシュタイナーの娘っ子。コイツは綺麗だろ?」


「ん。凄い。宝石みたい」


 取り払われた布から現れたのは、シエラが初めてリチャードに使い方を教えてもらい、旅の間も愛用した武器、魔導銃の新型だった。

 マスケット銃のような銃身の長いフォルムが基本の魔導銃だが、今シエラの目の前にある魔導銃はマスケット銃を短くした大型の拳銃程のフォルムだ、ストック部分も短くなっている。

 しかし銃身の下部から刃が伸び、その全長はシエラが愛用しているショートソード程はあった。


「もう魔導銃とは呼べん代物だ。魔導銃剣、いやソーサリーソード、うーむどうカテゴライズするべきか」


「魔銃剣で良いと思う。あんまり長いと呼びにくいし」


「まあ現状その武器を持ってるのはお前さんだけだ、好きに呼びな。苦労したんだぞ? 銃にどうやって剣を一体化させるかってなあ、銃身の内側の加速魔法用の刻印なんかも魔道具屋の婆さんに協力して貰ったりして」


 親方の話を聞きながら、シエラは置かれた魔銃剣を手に取った。

 銀色に輝く銃身。その銃身に刻まれた強化の魔法文字。

 各所に施されたメタルブルーの装飾は水を表しているようだった。


「うーん。ちょっと持つところが大きい」

 

「父ちゃんはお前さんの成長を見越したんだろうさ、なあに直ぐに慣れるさ。ほれ、このベルトに専用の鞘が付くから、腰に巻くなり背中に背負うなりしてみな」


「剣の鞘二つ分くらいあるね」


「まあ銃身と刀身分はデカくなるさ」


「格好良い武器をありがとう親方さん。大事に使うね」


「最高品質のアルティニウムを使った逸品だ。乱暴に使ったって壊れやしねえよ。思いっきりぶん回してきな。気が向いた時で良いからよお、使った感想を聞きたいからまた来てくれよな」


「ん。分かった、絶対また来る」


 こうしてシエラは新しい武器を受け取り、ベルトを腰に巻くと魔銃剣を鞘に入れ、親方に深々と頭を下げてお礼を言うと笑顔を浮かべ、手を振って鍛冶屋を後にした。

 

 次に向かうはリグスとナースリーが待つ街の中央区。冒険者ギルドだ。

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