パーティ名は
気を失ったスリの男は、誰かが呼んできたのであろうエドラの街に駐留しているグランベルク王国兵が駐屯基地だろうか、何処かへと連行していった。
「ありがとうねえ。お嬢ちゃん。いやあ大人を投げ飛ばすなんて凄いねえ」
「カッコ良かったぞお嬢ちゃん」
巾着袋を取り戻したシエラは持ち主の年配の女性や事の顛末を見ていた周囲の人々に賛辞を送られるが、父や母に褒められた事は数あれど、こうも複数人に一度に褒められた事が無いシエラはどうして良いか分からず、顔を赤くして後退る。
そして堪らず後ろで苦笑していたリチャードの元へ駆けるとリチャードの後ろに隠れてしまった。
「あらあら、困らせちゃたかしらねえ。貴方はお父様?」
「ええはい。この子の父です」
「それはそれは。もしかして冒険者の方? なら娘さんの強さにも納得だわ。若い冒険者はこの世界の希望の星。どうか親子いつまでも仲良くして下さいね」
とまあ、年配女性からの言葉だけ受け取り、リチャードはシエラとマリネスを連れて我が家へと向かう。
まだ照れているのだろうか、シエラはリチャードのコートの裾をギュッと握っていた。
「初めての賛辞の声に驚いたかい? まあ私も最初は随分照れたものだ。しかしなシエラ。Sランク、いやAランクのクエストでもあり得る話だが、時折難度の高いクエストを成功させた時に王都で行われるパレードはもっと凄いぞ? エドラの街の住人全てを集めても足りないくらいの人々が褒め称える言葉を投げ付けて来るんだ。今日なんて比較にならない位にな」
「ええ〜。なんかやだあ。恥ずかしい」
「まあ分からんではない。私も最後まで慣れる事は無かったよ」
リチャードは笑いながらシエラに言うと、コートを握るシエラに振り返る。
シエラはそんな父に恥ずかしそうに笑うとコートの裾から手を離し、リチャードの腕に飛び付いた。
「こらこら、マリネス君の荷物が落ちるだろ?」
「だって、パパが意地悪言うから」
「意地悪じゃないさ。そういう事もあるから覚えておくようにっていう心構えの話をしたんだ」
「ぶー」
リチャードの言葉に納得いかないのか、シエラは頬を膨らませて不満そうだ。
いつものクールな印象とは違い、子供らしい反応を見せるシエラにリチャードとシエラの後ろを歩くマリネスは微笑む。
「希望の星、か。確かにあの婦人の言う通りだ」
「何が?」
「シエラ達を含め、若い冒険者は我々にとってそう言う存在だという話さ。我々ロートルや、次の世代の冒険者を目指す子供達を照らす希望の星ってね」
「んー。よく分かんない」
「ははは。まだ分からなくても良いよ。今はただ一生懸命特訓して、大きな怪我をしないようにクエストをこなせば良いさ」
「ん。分かった。んー、でもそっかあ星かあ」
「どうした?」
「パーティ名ね【アステール】ってどうかなあって思って」
「ああ。どこの国だったか、星をアステールと言うんだったか。ふむ、悪くないんじゃないか? シエラが空、その空に仲間達を星に例えて【アステール】私は良いと思うぞ?」
「本当?」
「嘘を付いてどうするんだい? まあ私の意見でしか無いから、また仲間達と相談してみなさい」
「ん。分かった」
こうして話をしながらリチャード達は帰宅する。
そして玄関の扉をシエラに開けてもらい、中に入った瞬間リチャードはアイリスの為にと購入する予定だった高級紅茶の茶葉を買いに行くのを忘れていた事に気が付き、手で額を抑えながら「ああ全く、私としたことが」と天井を仰ぎ見るのだった。




