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マリネスの服を買いに行く

 さてこの日。シエラはマリネスとデートをする事になった。

 まあもちろん2人にそんな気はまだない。

 マリネスの着る服を買いに行こうという事になり、シエラとマリネスはリチャードに連れられ自宅に最も近い商業区へと向かって行くが、父リチャードはその途中「すまない。私は別件があるから服は2人で買いに行ってくれるかい?」と十字路で立ち止まった。


「別件?」


「ああ。マリネス君を預かる以上、親御さんに挨拶はしておこうと思ってね」

  

「私達は行かなくて良いの?」


「挨拶だけだからね。私だけで良いよ」


「ん。分かった。じゃあまた後で」


「気を付けてな。最近スリが出るらしいから」


 いや、仮にスリが出ても気を付けるべきは、スリの方であって娘の方では無いかも知れないな、とリチャードはそんな事を思いながら苦笑いし、シエラの頭にポンと手を乗せて撫でると貴族の暮らす貴族街へと向かって行った。


 そして、父と一旦別れたシエラとマリネスは2人で商業区へと向かっていく。


 人の賑わう商業区。

 街の中を流れる整備された用水路に掛かる橋を渡り、シエラはマリネスと手を繋ぎ、ピクニック気分で父の行きつけの服飾店へと向かって歩いていた。

 

「195、196、197、198、200、あっちげえわ。これで、200! っあ〜疲れたあ! ナズ回復頼む」


「リグ、頑張るねえ」  


「ったりめえよ。何せ俺は」


「はいはい、剣聖になるんでしょ?」


 シエラとマリネスが商業区の一角にある食肉店、リグスの実家の前を通り掛かった際、店と店の間の狭い空き地に生えている木の側で木剣の素振りをしているリグスと木の側に座っているナースリーを見つけた。


「やっほー」


 感情がこもっているのかいないのか、リグスとナースリーに近付き、棒読みで挨拶をするシエラ。

 そんなシエラにリグスは「よおシュタイナー、今日はリチャードさんは一緒じゃないのか?」と挨拶を返す。


「今日はマリネスの服買いに行くんだよ。パパとは後で合流する。リグスは特訓?」


「トールスの兄貴に言われてるからな! 剣聖になりたきゃ毎日馬鹿みたいに剣を振れって」


「だからってリグったら数字数え間違えるのよ?」


 リグスの言葉に続いてナースリーが言い、それに対してシエラが「馬鹿じゃん」とリグスを煽るがリグスは気にしてないと言わんばかりにフンッと鼻で笑い返した。


「今に見てろよシュタイナー、そのうちお前から一本取ってやっかんな!」


「ん。楽しみにしとくよ」


 嫌味でもなんでもない。

 シエラは単純にリグスと、友達と対等に剣を合わせるのを楽しみにしていた。

 期待しているのだ、いつの間にか自分程じゃないにしろ戦えるようになっていたリグスの力に。


「ってか。シュタイナーとセルグがなんで一緒に? 服買うってアレか? デートか?」


「ああ〜。そう言われるとデートかも」


 リグスの冗談に真顔で返したシエラに、マリネスが顔を真っ赤にするが、それに気がつく事もなく「実は」とシエラはパーティメンバーのリグスとナースリーにマリネスの事情を話して聞かせる。


「はあ? 追い出された?」


「しきたりって言ってもそれは酷くない?」


「まあおかげで私はマリィと一緒にいれて嬉しいけど」


「出たな、シュタイナーの天然タラシ」


「リグスもナズに対して特攻タラシ」


「特攻タラシって何だよ。俺は良いんだよ、ナズの事好きだし」

 

「「そう言うとこだよ2人共!」」


 シエラとリグスの掛け合いに突っ込む恋する少女2人。

 だが、肝心の2人は疑問符を頭の上に浮かべそうな表情を浮かべ、お互い首を傾げると肩をすくめた。


「じゃあ私達は行くよ、特訓頑張って」


「おうよ! じゃあなシュタイナー、セルグ」


「ば、バイバイ。シエラちゃん、マリネスちゃん」


 こうして2人は友達と別れると再び街を歩き、目的の服飾店へと向かって歩いて行く。

 その間ずっと、シエラはマリネスの手を握っていた。

 そしてシエラとマリネスは到着した服飾店で「これが似合う、こっちも可愛い、これも良いね。あれも買おう」と、おもにシエラが買い物を楽しんだ。

 

「か、買い過ぎだよシエラちゃん」


「重い? 私が持とうか?」


「ううん大丈夫。シエラちゃんが選んでくれた服だもん。私が持つよ」


「ん。分かった。辛くなったら言ってね?」


「ありがとうシエラちゃん」


 袋を両手一杯に抱えたマリネスと小さな袋を持つシエラ。

 店を出た2人は喫茶店へ向かうと甘いクリームたっぷりのパンケーキを食べ、帰路に着く為に商業区を自宅へ向けて歩き始めるのだった。

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