シエラとマリネスの風呂タイム
「あの、あのねシエラちゃん、私」
「入らないの? 風邪引くよ?」
裸一貫、脱衣所で服を脱ぎ捨てたシエラは浴室に入ると浴槽に張っていたお湯に入り、温くなってしまっていたお湯を再度浴槽の魔石で加熱していく。
熱くなってきた折を見計らい、シエラは魔石から手を離すが、その間もタオルを巻いて脱衣所から浴室に入ってこないマリネスを見兼ね、シエラは一旦浴槽から出るとマリネスの後ろに回り込みマリネスを浴室に押し込み、浴室にマリネスを押し込んだ後はタオルを引っぺがして浴槽へと引きずり込んだ。
「マリィ、往生際が悪い。冒険者に必要なのは決断する勇気だってパパとママが言ってた」
「うう。あの2人の言ってた事だとそれは違うよとは反論出来ない」
お湯に肩まで浸かり、足を抱えて座るマリネスが涙目で言うが、シエラはそんな事はお構い無しといわんばかりに温かいお風呂を堪能していた。
そんな時、脱衣所の方で何やらバタバタと音が聞こえてきたかと思うと「ロジナ、君も風呂に入るんだ、今日はだいぶん暴れたんだろ」とリチャードの声が聞こえてきたかと思うと浴室の扉が開かれ脱衣所からロジナが放り込まれてきた。
「主様! ですから風呂は主様と入ると!」
「私はまだしばらくやる事があるからシエラに洗ってもらってくれ」
「お嬢様は雑なんですよ‼︎」
「ふーん。ロジナ、そんな風に思ってたんだ」
「あ、いえお嬢様。わ、私はそんなつもりで言ったのでは」
「問答無用、大人しくして」
浴室に放り込まれたロジナに浴槽から出たシエラがにじり寄る。
そんなシエラにロジナは「優しくしてください」と懇願するように言うと、観念したのか尾っぽと耳を下げ、座ったまま身じろぎもせずにシエラになされるまま洗われる事にするのだった。
「では頼むよシエラ。着替えは置いておくよ。ああ、あとマリネス君の着替えだが寸法が分からないのでね、シエラの着替えの予備だが合わないようなら言ってくれ」
「ありがとうパパ」
「あ、ありがとうございます先生」
こうしてリチャードはマリネスの為の寝床を用意しに風呂場を後にし、浴室には力無く項垂れるロジナと呆然とするマリネス、ロジナを洗う気まんまんのシエラだけが残された。
「じゃあロジナ、覚悟してね」
「はい」
お湯を掛け、頭髪用洗剤やら石鹸などでシエラはロジナを洗っていく。
魔法で体を縮めているとはいえ、大型犬程もあるロジナを洗うのは中々に大仕事だが、ロジナがシエラのなすがままになっていた為それ程時間を掛けずにロジナの洗髪は終わった。
「終わった。ロジナ出来たよ」
「お、お嬢様。申し訳ありませんでした。随分お上手になりましたね」
「まあね。成長したんだよ多分。じゃあロジナは脱衣場でパパを呼んで拭いてもらってね。初めてお風呂入った時みたいに濡れたままリビングや寝室に行かないでね?」
「はいお嬢様。それではお先に失礼致します」
シエラに浴室の扉を開けてもらい、ロジナは脱衣場に出ると「ワン」と吠えてリチャードを呼ぶ。
その様子を見て、シエラは浴室に戻ると今度は自分の体を洗い始めた。
その様子をお湯に浸かっているマリネスがチラッチラッと横目で見ている事にシエラは気付く。
「どうしたの? 私の体、何か変?」
「あ、いや違うの。そうじゃなくて、シエラちゃんの肌綺麗だなっておも、あいや! ちが、体綺麗だなって思ったのはホントだけど、そんな、あのあの⁉︎ 変な意味じゃなくて」
シエラに想いを寄せるマリネスは喋れば喋るほどボロが出てしまい、アタフタとしてしまうが、それが何故なのか分からないシエラは顔を真っ赤にするマリネスを落ち着かせようとマリネスの手を握った。
「あ、あのシエラちゃん?」
「落ち着いた? まあ、いきなり家を追い出されたんだもんね。混乱するよね。でも安心してね。この家ならマリィの屋敷くらい安全だから。パパもママもいるし、私もいるから」
「あ、ありがとう?」
「ん。マリィも体洗ったら? 背中流してあげるから」
「ひゃ、ひゃい。じゃあ、お、お願いします」
シエラに見惚れていた事を勘違いから誤魔化せたので、それ以上は言及せずにマリネスはシエラに言われるまま浴槽から出ると、体と頭を洗う為に浴室用の椅子に座った。
「マリィの髪綺麗だね」
「あ、ありがとう。シエラちゃんの髪も綺麗だよ?」
「そう? そう言ってくれると嬉しい」
こうして和やかな空気になった浴室の中。
2人は家族の話や友達の話、神隠しの話やこれからの事を話ながら風呂を堪能した。
そして2人は風呂から上がり、体を拭いて髪を拭いた後はリチャードが用意した寝巻きのワンピースに着替えた。
着替えたのだが。
「マリィ私の服だけど、寸法大丈夫?」
「うん大丈夫。ちょっと胸がキツイけど問題ないよ」
「ああ〜。そうかあ。マリィ胸が私より大きいもんね。うーん、服買いに行かなきゃだね。明日はクエスト行かないし、明日店に行こう」
「うん。そうだね」
明日の予定を話ながら談笑する。
こんな何気ない日常がシエラは嬉しくて堪らず笑顔を浮かべ。そんなシエラにマリネスは再び見惚れるのだった。




