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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
後日談から始まる物語
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サンドイッチ

 リチャードとシエラが帰郷した翌日。

 アイリスは1日仕事から離れて休みを取り、2人と過ごす事を選んだ。

 久しぶりの再会、娘は寝ているとなるとリチャードとアイリスは大人の時間をゆっくりリビングで過ごす事に。

 肌を重ね合わせ、会えなかった時間を埋めるように2人は愛し合う。

 そんな2人がリビングの三人掛けソファの上で寝ていると、不意にリビングの扉がガチャっと音を立てて開いた。

 開けたのはもちろんシエラだが、寝ぼけているのか目は完全には空いておらず、まだ半分は寝ているような状態だった。


「パパ、ママおはよう」


「おはようシエラ、まだ眠いだろ? ゆっくり寝ていても構わないんだぞ?」


「ん〜。でも私、パパとママと一緒にいたい」


「そうか。なら寝室に行こう。今日は皆でのんびり過ごそうな」


「ん。わかった」


 というわけで、リチャードはシエラを一度寝室に連れて行くと、アイリスと一緒に風呂に入る事に。

 そこで風呂にお湯を張る間に、もう少しの間恋人としての時間を過ごし、自宅の風呂を堪能した後は2人してもう一度寝巻きに着替え、肩を寄せ合って寝室に向かい、先に寝かせたシエラを挟むようにベッドに入った。


「シエラちゃん、自分の事”私“って言うようになったのね、少し髪も伸びて、ちょっとお姉さんになったみたい」


「旅をしている間に11才になってしまったしね。何か思う事があったんだろう。こうして娘の成長を実感する日が来るなんて2年前、シエラがいなかった時は考えもしなかったよ」


「私もよ、こうして貴方とシエラちゃんと一緒に暮らせるなんて思ってもみなかったわ」


「私達の仲を縮めるきっかけになったシエラには感謝しかないな」


「ええ、そうね」


 シエラの白髪に近い水色の髪を大切な宝物を触る様に撫でるアイリスとシエラの腹部をポン、ポンとリズム良く撫でるリチャード。

 2人のそんな会話を聞きながら、ベッドの横で体を丸めて寝ていたロジナが微笑み微睡みながら欠伸をする。


 結局その日、リチャードとアイリス、シエラは昼過ぎ辺りまで一緒に眠っていた。


 太陽が高く昇り寝室の窓のカーテンの隙間から陽射しが差し込んだ頃。まず目を覚ましたのはたっぷり眠ったシエラだった。

 アイリスに頭を抱えられ、リチャードの手が自分の腹の上に乗っている状況が嬉しくてシエラは満足そうにもう一度目を閉じようとするが、こういう時に限って腹が鳴る。


 思えば帰ってきてから何も食べてないなと思い立ち、申し訳無い気持ちはあったが、シエラは自分の横で眠る父とアイリスを起こす事にした。


「パパお腹減った」


「ん、ああ。そうだな、確かに小腹が減ったな。食事にしようか」


「シエラちゃんが起きるなら私も起きる〜。何食べたい?」


「ママのサンドイッチ食べたい」


「よし、任せなさい。ママ頑張ちゃうわ」


 こうして目覚めた3人は寝巻きを着替える事もせずにシエラはロジナを連れてリビングへ、リチャードとアイリスはキッチンへと向かって2人で愛娘のリクエストであるサンドイッチ作りをする事になった。

 キッチンに併設している氷魔法の魔法陣が刻まれた保冷室から材料を取り出し、2人は調理台にそれを並べていく。


「キッチンもそうだが、廊下もリビングも綺麗に保たれてる。随分力を入れて掃除したんだな」


「あなた達がいつ帰ってきても大丈夫なようにしてたの。それに1人だとこの家は広くて、淋しくてーー」


「アイリス。その、なんというか本当にすまなかった」


「悪いのは貴方じゃ無いわ、悪いのは私も連れて行ってくれなかった女神様よ。もし会えたら胸ぐら掴んで文句の一つでも言ってやりたいわ」


「ははは。君のそういう所、好きだよ」


 リチャードの言葉に顔を赤くしながらアイリスはサンドイッチを作っていく。

 そんなアイリスが涙を流したのは怒りや悲しみなどの感情からでは無く、婚約者が帰ってきたという実感からの嬉し涙だった。


「リック、これからどうするの? また養成所の教官に戻る?」


「ああ、その事なんだが。正直悩んでいてね」


「意外ね。貴方なら戻ると即答するかと」


「うむ。まあ私も旅をして師匠と剣を交え思うところが出来たのさ。とりあえずこの出来立ての美味しそうなサンドイッチを娘の元に届けないかい? 座って話そうじゃないか」


「確かに、ここで長話してたらシエラちゃんに怒られちゃうもんね」


 サンドイッチを完成させて皿に盛り付け、木で作られた配膳用のトレーにそれを乗せてアイリスはシエラの待つリビングへと向かって行った。

 リチャードはそれを見送りコーヒーを3人分挽いて、淹れていく。


「冒険者に戻ると言ったら彼女は喜ぶだろうか、喜んでくれると良いのだが」


 カップに淹れたコーヒーの表面にリチャードの顔が反射する。

 その反射した自分に問い掛けるようにリチャードは言うと、自嘲気味に鼻で笑い、コーヒーカップと砂糖の入った小瓶、ミルクの入ったカップをアイリスと同じように配膳用のトレーに乗せて2人の待つリビングへと向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] あけましておめでとうございます m(_ _)m 続編開始ありがとうございます これからも楽しく読ませて貰います
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