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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
後日談から始まる物語
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子供達の日常

 アイリスのお腹の中の子が女の子だと判明した翌朝。 

 シエラはパーティメンバーと共にクエストに訪れていた。


 父であるリチャードはしばらくアイリスの調子を見ながら家事を代わりに行うらしい。


 シエラも「手伝う」と言ったのだが、リグスとナースリーがシエラの自宅を訪れ「クエスト行こうぜ!」と元気に言うので「いやだけど」とは言えず、自宅の武器庫で胸当てと手甲、脚甲だけという比較的に軽装備に着替え、新調したショートソードを一本持ち出してギルドへと向かった。


「マリィは?」


「マリネスとはギルドで合流する」


「そっか。分かった」


「シエラちゃん剣新調したの?」


「ん。前のはパパの師匠に、なんて言うか、捨てられた?」


「なんで疑問系なんだよ」


 数ヶ月前の神隠しからの帰路。

 神代の時代において戦場となったという記録があるラデラ平原。

 そのラデラ平原を一望出来る程に標高の高い半円に抉れた山。

 その抉れた部分を跨ぐように掛かる巨大な橋の上で再会したリチャードとレイス種と呼ばれる幽霊型の魔物の最上位、グリムリーパーとなり魔王に操られ、シエラを殺そうとしたリチャードの師匠との戦いの最中に失った愛用の剣と魔法の杖を攻撃に特化させたマスケット銃に近い形状をした魔導銃。


 それを弾かれ、橋から落としてしまった訳だが、子供がそれを簡潔に説明するには難しかったのか、シエラは言葉を濁した。

 あるいは、シエラはあの戦いを簡潔な言葉で説明したくなかったのかも知れない。

 

 ともあれ、剣は自宅の武器庫にあったショートソードが丁度良い使い心地だったので父に聞いて借りているが、魔導銃を失った事で今のシエラはただの剣士としてクエストに挑んでいる。

 魔導銃は街の工房がリチャードの意見を取り入れた新仕様を開発しているらしく、シエラはその新魔導銃の完成を心待ちにしていた。


「シエラちゃん、おはようございます」


「マリィ、おはよ。こんにちはかな?」


「昼前くらいってなんて言えば良いか迷うよなあ」


 ギルドに到着したシエラ達は待ち合わせをしていたマリネスと合流してギルドの扉を開いた。

 

 さて今日はなんのクエストを受けようか、とシエラ達は見習い用クエストが貼り付けられている掲示板へと向かう。

 その途中の事、ギルドの2階から書類の束を抱えて現在のギルドマスター、ミニアが降りてきた。


「あら、シエラちゃん。今からクエスト?」


「ん。今日は皆でクエスト」


「アイリスの、ママの様子はどう? お腹のお子さんはどっちか分かった?」


「ママ元気だよ。今日は朝からパパとキッチンで何か作ってた。お腹の子は女の子だったよ」


「あらあら夫婦仲睦まじいのねえ。羨ましい」  


 抱えている書類の束を地面に叩き付けそうになる衝動を抑え込み、ミニアはシエラに微笑み「邪魔してごめんなさいね、クエスト頑張って」と言うと受付の奥の事務室へと消えていった。


「ミニアさんって美人だけどおっかなくない?」


「そうかな。可愛い人だと思うけど」


 ナースリーの言葉に首を傾げながらシエラは言うと、少し低い位置に設置された見習い用クエストを眺めて呟く。

 そしてこの日、シエラ達は街の近辺に現れたホーンラットの討伐任務を受注して久方ぶりに街の外へと向かう事にした。


 ギルドの受付に依頼書を持って行き、依頼受注印を押してもらってギルドを出るシエラ達。

 

 暖かい季節が終わりを告げるべく吹かせた風が4人の間をすり抜けていく。

 神隠しからもうすぐ1年。

 シエラはふと転移させられた先で出会い、迎えに行くと言って別れた遺跡を守るゴーレムの事を思い出していた。


「そういえば緋色の剣の皆を見ないけど、3人は何か知らない?」


「ああ〜。トールスの兄ちゃん達なあ」


「実はちょっとねえ」


 ゴーレムに掛けられた従魔契約上書きの為と飛翔魔法の習得の為、リチャードが以前所属していたSランクパーティ【緋色の剣】のメンバー、シエラ達の暮らすこの大陸で2番目に魔法に精通している兄弟子、リンネに会いたくて質問したのだが、リグス含め3人は苦笑いして言葉を濁した。


「何?」


「シュタイナーが帰ってくる前、遠征に行っちゃったんだよ。なんか大陸の南に強い魔物が現れたとかで」


「強い魔物」


 強い魔物と聞いて、シエラの脳裏を過ったのはリチャードの師匠、グリムリーパーと化したエドガーの姿だった。

 

「あの人、強かった。私、もっと強くならないと」


「ん? なんか言ったか」


「緋色の剣の兄ちゃん達みたいになりたいなあって」


「分かる! 強くて格好良い冒険者になりたいよなあ!」


 シエラの言葉に、パーティで唯一の少年、リグスが鞘に入ったままの剣を掲げながら応えて笑う。

 その様子にリグスの幼馴染のナースリーは「ちょっと街中で剣振り回さないで!」とリグスの頭を杖の先で突いた。


「あ痛あ! おいナズ先っぽはやめろよ!」


「2人ともイチャイチャするなら置いてくよ?」


「シュタイナーの目にはこれがイチャイチャしてるように見えると⁉︎」


「見えるけど」


「病気か? 病院行くか?」


「病院に行くのは、そっち」


 こうしてクエスト前にシエラとリグスが一戦交えそうになったが、シエラにマリネスが「まあまあ2人共落ち着いて」と抱き付き、ナースリーが「喧嘩はだめでしょ!」とリグスの首を後ろから杖で絞めたので2人は喧嘩にまでは至らなかった。

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