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Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
後日談から始まる物語
13/115

孤児院から帰った後

 リチャードはシエラを抱き抱えたまま、シエラと出会ってからの思い出をしばらくシスタークラリエに聞いてもらった。

 それこそ、しばらくぶりに会った母親にでも話を聞いてもらうかのように。

 

 時間が経ち、孤児院を後にする事にしたリチャードはクラリエに深々と頭を下げて帰路に着いた。

 街に向かう途中でシエラを肩車したリチャードの足取りは軽い。

 太陽はまだ高い、青い空に雲一つない快晴だ。

 その空に4枚羽の鳥の魔物が泳ぐように飛んでいる。


 「ねえパパ、なんで私をあの孤児院に預けなかったの?」


 その鳥の魔物をボーッと見上げていたシエラが、ふと脳裏に浮かんだ疑問を口にした。

 リチャードの頭に両手を置き、シエラはリチャードの旋毛に視線を落とした後、普段見ない高さの視点を楽しむ。

 そんなシエラにリチャードは「淋しかったから、かな」とシエラを家に連れて帰った日の事を思い出しながら答えるが、言った直後に(その発言はどうなのだ?)と自問自答してしまう。

 引退を決意し仲間に伝え。その直後、帰路で飢えた浮浪者同然の幼女に襲われて撃退し。

 衛兵に引き渡すのは可哀想かと思い、親に捨てられたその幼女を連れて帰り、家族として引き取り育てて今に至るわけだが。


 思い返してみれば、シエラを引き取った最大の理由は仲間の元を去って淋しかったからなのか? と、リチャードは考えてしまい、冷や汗を滲ませた。しかしシエラにとってはそんな事はどうでも良いわけで、リチャードの答えに「そうなんだあ」とだけ言って再び空を見上げた。


「ねえパパ」


「ん?」


「……なんでもない。呼んでみたかっただけ」


「そうかい? 何かあるなら遠慮せずに言うんだぞ?」


「ん。大丈夫」


 青空の下、肩車をする父と肩車をしてもらっている娘は同じように微笑んだ。 

 この後リチャードとシエラは街の商業区を巡り、メモに従って必要な物、哺乳瓶などの乳児用品を買い揃えていく。

 

 気が付けば日が傾き、青空から焼けるような橙色の空へと変化して、その空に4枚羽の鳥の魔物が3羽集まって彼方へと飛び去っていった。


「すっかり遅くなってしまったなあ。今日の夕食は何が良いかな?」


「久しぶりにオークの薄焼き食べたい」


「お、良いな。確かまだ保冷室に肉が余っていた筈だ、ママにはスタミナが必要だし、今日は肉料理にしようか」


「やった。お肉好き」


「野菜も食べるんだぞ?」

 

「ん。大丈夫、野菜も好き」


「ははは。良い事だ、冒険者として仕事をするなら好き嫌いは言ってられないからな」


 こうして2人は家に帰り、ロジナに迎えられると荷物を片付けて夕食の準備を開始。

 そしてアイリスの帰りを待って3人で夕食を食べ、シエラは孤児院に行った事や商業区で買い物をした事を食後のお茶を飲みながら母に告げた。


「なんで私を連れて行ってくれないのかしら?」


「……すまない」


「すまないじゃなくて」


「ギルドマスターは多忙だろう。だから代わりに、良かれと思って」


「へぇー。ふぅ〜ん」


「ママ怒ってる?」

 

「大丈夫よシエラちゃん、怒ってないわ」


 シエラに聞かれてしまっては怒ってないと言うほかなく、まあ実際に怒ってなどいないわけで。

 アイリスはやれやれと言いたげに肩を落とすとリチャードに「ありがとうねパパ」と言いながら微笑みを向けた。


「と、ところでギルドの仕事はいつまで続けるんだい?」


「ああ〜ギルドの仕事ねえ。ギルドの仕事は近々辞めます」


「そうか、辞めるのか。え? 辞めるのかい?」


「そりゃあ子供を産むわけだし、育てるわけだから辞めるわよ」


「次のギルドマスターはもう決めているのかい?」


「貴方、と言いたいところなんだけどねえ。人望も実力もあるし、書類仕事は難なくやるし。でもリックにはシエラちゃんを鍛えてあげて欲しいし、何より私が貴方に冒険者を辞めてほしくないからねえ。次のマスターはミニアに頼んだわ」


「サブマスターか。確かに適任ではあるな」


「勝手に決めてごめんなさい。でも私」

 

「良いよ。辞めろと言いたいわけでは無かったが、毎日帰れば君がいる。それも良いなと思えるからね」


「ママずっと家にいたら暴れたくならない?」


「ねえリック、シスタークラリエは何をシエラちゃんに話したのかしら?」


 アイリスの質問に苦笑いを浮かべ、視線を逸らすリチャード。シエラはそんな2人を見て首を傾げるのだった。

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