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初めての謁見

 地龍討伐から数日後。

 シエラ達のパーティ【アステール】の面々と父のリチャード、その父の友人アルギスはグランベルク王国の王都、その中心に佇む王城の謁見の間を訪れていた。


 それと言うのもこの度の地龍討伐の功績を考えれば当然と言えば当然で、グランベルク王家からの招待状が特使を通してエドラの街の冒険者ギルドに届けら、ギルドを経由してシュタイナー家に届いたのだ。


 王家からの招待状ともなると断ったりするわけにもいかず、シエラ達はアイリスに留守を任せ、王家からの迎えの馬車に乗り、長々揺られて王都へやって来た。


 シエラが初めて目にするグランベルク王国の王都の様相は、以前辺境に転移させられた際の帰路、遠巻きに眺めただけだったがそれでもエドラの街に比べて高い建造物が多く見られた。

 しかし、それは城が建つ丘を中心に城下町の家屋が拡がっているからに他ならない。


 とはいえやはり王都だけあり、劇場や図書館をはじめ、教会や冒険者ギルドの一部建造物はエドラの街にあるそれらを遥かに凌駕する巨大さであり、装飾も豪華だ。

 家屋の壁などの綺麗さはもちろんのこと、白い石畳の道にはゴミなど少量落ちてはいるものの、気にする程の事もなく綺麗なものである。


「ここが王都。建物が大きいね。それに街も私達が暮らしてる街よりずっと大きい」  


「まあ、この国で一番大きな街だからね。それでも過去に一度遷都、わかりやすく言うなら王都は移動して来ているらしい。大昔はもっと南に王都と城があったそうだよ」


「へえ〜。そうなんだ。なんで昔の人は王都の場所を移動したの?」


「さて。私も詳しくは知らないんだが、歴史家達が言うには古の時代の戦争で王都が機能しなくなったとかなんとか。来る災害に備えて都を移したとかなんとか言われていてね。正確には誰も分かってないらしい」


 王家に呼ばれているというのにシエラとその父リチャードは緊張感なく、王城へ向かう間の馬車の中で観光気分だった。

 王都や王城へ来た事があるリチャードと、その昔、宮廷魔法使いとして王城で働いていたアルギス。

 一方で他人への恐怖感や場の緊張感に鈍いシエラと異なり、庶民であるリグスやナースリー、貴族であっても初めて王都を訪れたマリネスなどは緊張で身体を強張らせている。


「お、俺が王城に呼ばれる日が来るなんてなあ。人生何が起こるか分かんねえなあ」


「シエラちゃんと会ってから私達、色んな事体験してるもんねえ」


「神獣見たりなあ」


 二台縦列で並んで走る馬車の中、後ろの馬車内で強がって笑うリグスとナースリー、そんな二人を見て同乗しているアルギスはニヤニヤと笑っていた。


「実際、君達の歳で城に招待される庶民なんて、まあいないからねえ。お父さん達喜んでたんじゃない?」


「確かに喜んでましたね。ちょっと恥ずかしかったです」


「私のところも両親が喜んでました。失礼の無いように散々言われましたけど」


「はっはっは。だろうねえ。まあでもそんなに緊張しなくて良いよ。この国の女王陛下は優しい方だからね。家族にはちょっと過保護なのがたまにキズだけどね」


 昔を懐かしみながら目を瞑り、その昔仕えていた女王の姿を思い浮かべてほくそ笑みながら話すアルギス。

 

 そんな話をしているうちにシエラ達一向は王城に入城。

 普段着慣れない礼服の窮屈さにまごつきながら、シエラ達は謁見の間に向かっていた。


「俺の服これ大丈夫か?」


「わ、わかんないよ。私も初めて着たし」


「二人とも大丈夫だよ。多分」


「ホントか?」


 礼服を着ている、というよりも礼服を着せられている感が拭いきれないリグスとナースリーに、両親の結婚式にドレスで参加したシエラはリグスに向かってニヤッと笑いながら言ったので、リグスは眉間に皺を寄せる。

 ただ、その後で礼服を着慣れている子供達の中で唯一貴族であるマリネスが「二人とも良く似合ってるよ」と言ったのでリグスとナースリーは一先ず安心して胸を撫で下ろした。


「さて、準備は良いかな? 馬車の中で教えた通り、王様と女王陛下のご両名の面前では片膝を着いて礼をするんだ。良いね?」


「私は大丈夫だよ」


「う、緊張で吐きそう」


「ちゃんと出来るかなあ」


「私も両陛下の御前に立つのは初めてなので、緊張してしまいます」


「ははは。何も一糸乱れず礼をしろ、と言っているわけでは無いからね。私とアルギスの後に習って真似していれば構わないよ。では、行こうか」


 子供達の師匠であるリチャードの言葉の後、深呼吸する子供達といつもの調子のシエラ。

 この後、六名は開かれた扉から両陛下の待つ謁見の間に足を踏み入れ、その六名をその場に集まった貴族達や王都の冒険者ギルドの関係者、軍の高官達が拍手で迎えた。


「やあ。リチャード・シュタイナー、アルギス・メテオール。久しいな」


「はい。お久しぶりです女王陛下」


「久しぶりだねえ。君達は元気だったかい? ベルグリンテ、フィリア」


「少し前に末の娘、クラティアが産まれたばかりだが。おかげ様で元気だよ。私も夫も娘もね」


「それはそれは。切にお喜び申し上げます我が王よ」


 直ぐに膝を着いたリチャードと違い、久しく会った家族に向けるような笑顔を向けた後、アルギスも玉座の前でリチャードの横に並んで膝を着き胸に手の平を当て頭を下げた。

 それを見て師匠二人の後ろで子供達も膝を赤を基調に金糸で装飾された絨毯に膝を付いて頭を下げる。


 その様子に両陛下は和やかな笑みを浮かべていた。

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