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地龍からの報酬

 眩い光に目を閉じていたシエラ達。

 その光が収まり、瞼の向こう側が少し暗くなったのを合図にするかのように、シエラ達は目を開けた。


 見れば自分達は氷の塊の内に居る事が一目で理解出来た。

 この場所は、地龍を封じたシエラとアルギスの二人で発動した儀式魔法で創った氷の結界の中だった。


 分厚い氷の壁の向こう側で、トールス達なにやら叫んでいるのが遠目に見える。


 そんなトールス達に、シエラやリチャードは手を振って無事を伝え、無事に帰って来れた事に安堵してその場に座り込んだ。


 地龍は跡形もなく消え去り、シエラ達は氷の山の中に出来ただだっ広い空間で空を見上げる。


 氷で屈折した景色が見えていたが、その氷の山が頂上から光の粒子に変換されていくのが見えた。

 対象を討伐した事で、魔法の効果が消えたのだ。


「今回はお母さんに怒られないで済みそうだね」


 女の子座りで地面にへたり込んでいたシエラが、手元の聖剣に視線を落としながら、隣で胡座をかいて座っているリチャードに向かって呟く。

 しかし、リチャードの表情はどこか暗い。


「いや、どうだろうな。龍の腹の中のダンジョンを攻略したなんてアイリスの耳に入ろうもんなら、それはそれで羨ましがられて『また私を差し置いて』と叱られそうでもある」


「仮にダンジョンの事を黙ってても、僕達は外の子らから見れば一度地龍に喰われてるしねえ。どっちの報告が耳に入っても、君達親子は怒られるんじゃない? 『なんて危ない事したの』ってね」


 困ったように言ったリチャードに続いて、アルギスがニヤっ憎たらしい笑みを浮かべながら言ったので、シエラはイラっとして眉をひそめ、その話を聞いていた子供達は「自分達も怒られるかも」と顔を青くした。


 一つの戦いと冒険を終え、少しとはいえ成長した子供達も両親に怒られるのはまだまだ怖いらしい。


 とはいえ、街や国への脅威を救ったのはシエラ達である事もまた事実。

 そんな彼女らの前に、地龍の最後の贈り物だろうか、蛍の光が集まるように一箇所に光の粒子が収束し、宝箱を形成した。


「お〜。宝箱」


「ヘえ。文献通りなんだねえ。ダンジョンを攻略した者には報酬が与えられる、か。なるほどねえ」


「せっかくの贈り物だ、中身を拝見させてもらおうじゃないか」


 氷の山が消えるまでの暇つぶしと言わんばかりに立ち上がり、シエラ達は出現した人ひとり入る事が出来そうな程の大きさの宝箱を囲む。


 そして、さて誰が開けるかと悩んでいると、宝箱の蓋がひとりでに開いた。


「おや、待たせてしまったかな?」


「いっぱい入ってるね」


 宝箱の中には盾が1つ、杖が2本、ブレスレットが1組、黒いロングコートが1着、魔導書のような物が1冊、そして金色の液体が入った小瓶が1本入っていた。


「盾はリグスが持ってなよ。リグス盾の扱い雑くてもうボロボロになってるし」


「雑じゃねえが? 攻撃にも使ってるだけだし。まあ貰うけど」


「杖はマリィとナズだね」


「じゃあブレスレットがシエラちゃん?」


「そうだね。コートは大き過ぎるし、本はアルギスさんが嬉しそうな顔で取ってっちゃったし」


 中身の配分を相談して誰が何を持って行くか選んでいる中、アルギスが目を輝かせて魔導書を手にスキップしそうな勢いで宝箱から離れ、さっそくそれを開いていた。


 そんなアルギスを尻目に、リチャードが黒を基調にした金のレリーフや装飾が施されたロングコートを広げる。


「ふむ悪くない意匠だ。気に入ったよ」


「お父さん黒に金とか好きだよねえ」


「格好良いだろ?」


「私は白とか赤のが好き」


「六柱の水。青を司るアクエリア様が聞いたら泣きそうだな」


 リチャードの言葉に「へっ」と言わんばかりにニヤッと笑うシエラ。どうやら確信犯のようだ。


 こうして、宝箱の中身を分け合った面々だが、最後に残った液体入りの瓶の取扱いに困る事になる。

 報酬とはいえ、効果効能の分からない液体を飲んだり塗ったりするわけにはいかないからだ。


「コレに至っては帰ってから鑑定してもらうか。エルフの里でもらった回復薬と似てはいるが、断定は出来んしな」


 リチャードの言葉に一同は賛成。

 それを聞いて、リチャードは小瓶を宝箱から取り出す。


 すると中身を回収したのを感知したのか、宝箱は出現した時と同じく光の粒となって消えていった。


 こうしてシエラ達の地龍との一戦は完全に幕を下ろす事になった。


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