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 私がその話を語り終えて、王様の顔を窺うと王様はやはりブスリとした顔をしているだけでした。

 するとどこからかすすり泣く声が聞こえました。一緒にお話を聞いていた王妃様でした。家臣の方々も嗚咽をもらしだしました。

「王様は心を失ってしまった!」

 護衛の兵士の一人が叫びました。この王様というのは、今語った王様ではなく自分の主人にあたる王様なのでしょう。

「王様、どうか心を取り戻してください。みんなそのことを願っています」

 王妃様が涙ながらにそう訴えます。

 王様、王様、王様!

 その場にいるみんなが王様に訴えかけます。

 王様は目を閉じてその声を聞いておられました。

 ふと目をあけると、王様は大臣を手招きし、何か耳打ちしました。そしてすくっと立ち上がるとその場を立ち去りました。

「王様!!」

 引き留めようとしたその声も王様には届かず、王様は自室へと引き上げていったようです。

「本当に王様はどうされてしまったのだろう。もうどんな声も届かないのだろうか」

 兵士たちは語り合います。ざわざわとした会話につつまれている王座の間。

「かたりべ殿、王様が呼んでおられます。どうかこちらへ」

 気づくといつの間にか近くにいた大臣が、そっと私にささやきました。

 大臣に先導されて行くとそこは王様の自室でした。王様がそこにいます。

「そこに掛けるとよい、かたりべ殿」

 王様が、私を王様の前のゆったりとした椅子へと促します。

「大臣。二人で話したい事がある。そなたは下がるがよい」

 大臣は王様と私の話に加わりたいような表情をしましたが、

「失礼いたします」

 と一礼して去っていきました。

 さて、と王様が話し始めます。

「かたりべ殿はどれくらいの国をまわってこられたのかな?」

「もう数え切れませんが、100はまわったかと」

「その中で王が幸せであった国は?」

 王様が尋ねるその質問に私は一瞬沈黙しました。

「もちろんあります。それは――」

 私が言いかけるのを王様は手で制しました。

「それだけ聞けば結構」

 私は王様の顔を窺いました。心なしか表情が緩んだようでした。

「王の立場になってずっと考えていたのです。王としてどう振舞えばよいのかを。国民のため、そして自身のためになにが最善なのかを。答えはあるのかと」

 そして王様は微笑みました。

「答えは自分で出します。それができずになにが王でしょうか」


 お城を後にした私はこんなパターンもあるのか、と関心していました。

 「かたりべ、それは旅を通して知識を集め、人を成長させるしごと。そして自分が成長する仕事」

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