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童話風に物語を創ってみようかと・・・。

「かたりべ、それは旅を通して知識を集め、人を成長させるしごと」

 そして、これはそんなある国での物語。


 王様がおさめるその国は、王様の統治下になってから、勢力をみるみる拡大させてきたといいます。

 ですが、どの国にも問題というのはおこるものです。

 私がその噂を聞いたのは、国へやってきてひと月ほどたった頃でしょうか。

 その国の王様が、笑顔を見せなくなったというのです。

 なるほど、王様というのは人を疑って生きねばならない、とても厳しい立場といえるでしょう。

 考えてもみてください。

 王様に好かれたい人はたくさんいるのです。そして、そんな人たちは王様の耳障りのよい事ばかりを言うのでしょう。

 そんな意見ばかりを聞き入れていたらどうなりますか?

 たとえば。

「王様。王様は世界一の王様です。王様の言うことを聞かない人間はいません。もしそんな人間がいたら死刑にしてしまいましょう」

 そんな事を言う家来がいるでしょう。

 それを真に受けた王様が、ある忠実な家来に、

「王様。隣の国はとても強い国なので、仲良くしておくといいでしょう。そのためには、隣の国の王様が嫌なことを言ったとしても、我慢しなくてはいけませんよ」

 そう言われても、

「いや。わしは世界一の王様なのでその必要はない。隣の国が仲良くしたいというなら、考えてやらんこともないが、隣の国の王様の言うことを我慢しなくてはならないなど、とんでもないことだ」

 そう言って、戦争ばかりしていたらどうなるでしょう。

 きっと、他の国の王様たちは、

「あの国は戦争ばかりおこす危険な国だ。他の国と手を組んで、滅ぼしてしまおう。それにあの国の王様はとても嫌な奴だからなおのことだ」

 そう言われて、あっという間に国が滅びてしまうことでしょう。

 だから、王様は自分に厳しいことを言う家来でも、近くにおいておかなければならないのです。

 それもただ厳しい事を言うだけではダメです。その意見がなるほどと、納得いくものでなくてはいけません。

 そして王様はその判断を一人でしなければならないのです。

 これは普通の人間の精神ではとても耐えきれない、辛い仕事なのです。

 だから王様が笑わなくなったという話を聞いても、私は少しも不思議ではありませんでした。

 人間は心が辛い状況に置かれ続けると、まず笑顔を失うものだからです。そうして、次に怒りっぽくなったり、涙もろくなったりします。最後には感情をまったく表に出さなくなり、ベッドで寝てばかりいるようになります。

 本人もとても辛いものですが、周りの人たちもそれは辛いのです。

 なんとか助けてあげたい。できることなら何でもしてあげたい。それは見ていて心苦しくなるような光景です。

 私はそういう場面を何回か見かけたことがあったので、王様がそうならなければいいなあ、とひと事ながら心配していました。

 私が王様のお城に呼ばれたのはそんなある日の事でした。

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