第4話「ロシアから来た転校生」
無事教室に到着し、朝の読書が始まる。今日は「史記」を読んだ。
これらには、国家の興亡だけでなく、人生の教訓や哲学的な要素も詰まっている。
当時の王侯貴族と言った支配層だけでなく、様々な人々にも視点をあてたスタイルがとても好きなのである。
他の子がどんな作品を読んでいるのか気になるので少しだけ周りを見渡すといかにも真面目そうな子が「罪と罰」を読んでいた。
気にはなっていたが、難しそうなのでなかなかチャレンジできていない。確か作者がロシア人と言うのだけは覚えている。
そんなことを考えていると教室に先生が入ってきた。
「皆さん。おはようございます。今日は新しいお友達を紹介します。」
いきなり放たれた、先生の言葉に教室の中が軽い興奮状態になる。
(イケメンだったらいいな〜)
(可愛い子なら最高)
と言った類の言葉が聞こえてきそうだった。
「転校生、入ってもいいぞ。」
静かに教室のドアが開く。
入ってきたのは、グレーがかった金髪に雪のように透きとおる肌と青い瞳をした可憐な少女だった。
「はじめまして。ロシアから来た筑前シェカラシカです。皆さんこれからよろしくお願いしマス。ハラショー!」
教室中が歓喜の声を挙げる。
「可愛い!お人形さんみたい!」
「うおお!!!生きてて良かった!!!」
など様々な反応があった。
イケメンが転校してきたわけではないのに女子もかなり喜んでいたのは意外だった。
「海野、お前の隣りの席でいいか?」
「ぼ、ぼぼぼ僕の隣りですかかッ!?」
以前、博士に何世代か前のバグを起こしたゲーム機と例えた事があったが、自分も人のことを言えたものではなかった。
「いや、まぁ今空いてるの海野の隣りの席だけだし、君は意外と面倒見がいいから。じゃあよろしく!」
「おい、テメェー、海野ズルいぞ。」
他の男子大勢からは、かなり顰蹙を買う。
これは博士のよく言う、ギャルゲー的シチュエーションになりつつあるのか。
「これから、よろしくお願いしますネ。海野くん!」
「あ、あのこちらこそよろしくお願いします。筑前さん。」
「私の呼び方は、シェカラシカでいいですヨ。」
「じ、じゃあ、シェカラシカさん。」
こうして僕の学園生活がやっと、青春味を帯びるどころかギャルゲー味を帯びてきた。
だけど、この時の僕は有頂天すぎて気がついていなかった。
そう彼女は普通の転校生ではなかったことに。