麗しき近衛騎士は華麗にオークを倒す
この作品は、Hiep Studioさんに制作していただきました。
なお、成人向け小説の冒頭を抜粋したものになります。
ただし軽いスプラッター描写を除いていかがわしい描写はありませんし、一般的な話としても通用する面白さは保証します。
ただ冒頭部なので中途半端な感じはするかもしれません。
弱弱しい月明かりが、かすかに足元を照らしているような、未明の街道。 シン...と、静まり返っている。
近くには人が生きる暖かさを感じさせる明かり...どころか、ケモノの足音さえ聞こえな い。
そんな凍てついた街道を、独り行く影があった。
魔物や山賊が跋扈するこのような場所を行くのは、自殺志願者か、それとも。
...騎士であった。
騎士が、街道を歩いている。 しっかりした歩調から、どうにも迷った訳では無いらしい。 なぜ、騎士が馬に乗るでもなく、このような場所を歩いているのか。
碌に石畳も整備されていないような、田舎の街道だ。高貴な騎士ならば、馬の脚を痛めた くという理由で、駅舎に預けてきたというなら...徒歩行軍というのは、まぁ、わかる。
しかし、さらに謎めかしいのは、その装備。 首から下は、如何にも重厚で厳つい装甲鎧、いわゆるプレートアーマーに身を包んでいる のに対し...一番の急所である頭は、兜も着けず、剝き出しだ。
そして、その騎士をさらに不可思議な存在にしているのは、その容貌。騎士は、美しい顔立ちを持った、妙齢の女性だった。金髪で碧眼、スラッと通った鼻筋に、整った顔立ち。
森の精霊かと見まごう美貌。
とすると、兜を着けないのは、そんな美貌を持つ肌を、金気で損なわせたくないためか。ならびに、急所を守る兜などいらぬという、その腕への自信の現れか。だとしたら、独りでいるのも頷ける。
いずれにせよ、自分の美貌と剣技に恐ろしいほどの自信を抱いている事が、伝わってくる。
では、そんな見目麗しき凄腕の武人が、独りでこのようなとこを行くということは......。 ...いた。
女騎士の目当ての獲物。
オーク。街道沿いの野っ原に、寝そべっていた。 人間の小児のような知性と、象もかくやという膂力を持つ、亜人。
...いや、人外の魔物だ。 なぜなら、こいつらには、倫理というものがないからだ。 気まぐれで人を殺し、犯す。人類の天敵と言っていい存在。
だとしたら、この街道がここまで寂れているのも、納得できる。 近隣の住⺠はおろか、ケモノの悉くまでも、コイツが殺して、食いつくしてしまったよう だ。
オークが、こちらに気が付いた。 騎士を見て、久しぶりに肉にありつけると、舌なめずりをして、立ち上がる。 いや、しかも女だ。犯して、そのカラダを味わった後、さらに腹も満たせる。 最高の獲物だ。
オークが、イチモツを期待でいきり立たせながら、向かってくる。
「...ふん」
そんなオークを見ても騎士は毛ほども狼狽えない。 羆のようなオークと、鎧を着こんでいるとはいえ女の騎士。 背丈は3、いや4回りほど、違う。
「ゴガアアアアアア!」
歩いていたオークが、徐々に速足になり、最終的には興奮して突進しながら騎士に向かってきた。
そんな状況にも、まるで動ぜず悠々と剣を抜く騎士。
白刃が月明かりに照らされ、冷え冷えとした光を放った。
「ガアアア!」
「シッ!」
決着は一瞬だった。
力任せに右腕を振りまわすオークの脇を抜きながらその腕を斬り飛ばし、返す刃でついでに首を刈る。騎士の剣が、2回の煌めきを見せただけで、オークは呻き声を上げる間もなく
骸に成り果てた。
「他愛もない...わざわざ出向くまでもなかったか」
神聖スラード王国親衛隊隊⻑クラウディア。騎士の肩書と、その名。 王城の中枢を守るという大役を担う親衛隊⻑の要職に就き、王国でも屈指の剣技を誇る武 人が、なぜこのような田舎の街道に派遣されているのか。
理由は2つあった。
一つは、オークの出現。たった今その任務は終了した。 しかし、問題はもう一つの方。 ...『異世界からの”扉”が開いたかもしれない』という地方官からの報告。
元来、王国の南の果ての地域に、群れとしてわずかに存在するだけのオーク。このような 北方の街道に出現することは...まず、あり得ないはずだった。 時空の歪み、ねじれ。異空間との”繋がり”の出現。なにやら数十年前にも、このようなこ とがあったらしい。
しかし、今斬ったのは何の変哲もないオークだった。本来であれば、わざわざクラウディ アほどの武人が出向くまでもない沙汰だ。
血振るいをして剣を納めると、
「今日の所は...成果無しか」
と呟き、来た道を引き返そうと踵を返す。