8話 カインの仲間入り その1
「そろそろ他のメンバーは戻っていると思うわ。宿屋に帰ってみましょう」
「ああ、そうだねシャルナ。戻ってみようか」
俺とシャルナの二人はギルドで神秘の迷宮で入手したアイテムや素材を換金して出て来たところだ。これから向かう先は高級な宿屋……宿屋「マートリー」の一室になる。昼に行ったグリムハウトのアジトであるが。
「リザードロードがドロップしたアイテムは流石に高く売れたわね。もちろんカインと折半という形にするから安心してね」
「いやそれは心配してないんだけど……」
今日会ったばかりではあるが、シャルナが独占するような性格ではないことは分かっている。グリムハウトの稼ぎでそんなセコイことしても意味がないしな。それよりも前衛と後衛という違いがあるのに報酬は折半にしてくれるという点が嬉しかった。
シウスがチームリーダーを務めていたハリウッダでは前衛の取り分の方が多かったからな。普通の冒険者パーティでもそれが当たり前になっているだろう。それだけにシャルナには感謝しかできなかった。
「なにか引っ掛かっていることがあるの?」
「ま、自分の補助魔法の効果については引っかかっているよ。ハリウッダではそれなりに活躍していると思っていたけど、仲間からは全く評価されていないと分かったんだしな」
「シウスだっけ? あなたを追放したリーダーは?」
「そうだけど」
「まさかカインと1年くらい一緒にいて補助魔法の効果に気付かなかったなんて……随分とお粗末なパーティなのね」
最初こそ追放されたことを話すのは躊躇っていたが、リザードロードを倒した辺りから隠しておくのも変だと考え、今は全てを伝えてある。シャルナも俺が追放されたことはには驚いていたけれど、俺のことを蔑んだりはしなかった。むしろシウスの方を蔑んでいたかな?
「カインの補助魔法はとてつもない効果を発揮していると思うわ。この私が保証するんだし、間違いないって」
「ありがとう、シャルナ。君から言われると自信に繋がるよ」
「どういたしまして。カインは凄いんだから、もっと自信持った方がいいわよ? 私達のメンバーに会っても緊張しないようにね。気楽に気楽に!」
「ははは、気楽にいけるかはわからないけど……まあ、なるべく緊張せずに話してみるよ」
「うん、その心意気よ。あ、敬語とかそういうのは大丈夫な連中だからさ」
敬語すら省いても大丈夫なのか。一体、どれくらいラフなメンバーなのだろうか? 逆に怖くなってしまうが、シャルナ達の泊まっている部屋の入口の前に俺は立つことになった。今の時間なら部屋に仲間達はいるらしい。
よし、入るか……と、気合いを入れたところ先に扉が開けられた。
「シャルナか? 今頃帰って来るなんて随分遅かったな」
中から先に開けられたようだ。そこに立っていた人物は、物凄く綺麗な金髪の女性だった。話し方はあれだったけど……。