1話 追放
「というわけで、カイン。お前は今日でパーティから出て行けよ」
「なんだよ突然……シウス、どうしたんだよ?」
俺はBランク冒険者「ハリウッダ」に所属しているカイン・オラシオン。パーティ内での仕事は主に後方支援になる。ダンジョン内などで、前衛の攻撃役にステータスアップの補助魔法や毒耐性などを掛けたりする。
シウスはそんなパーティのリーダーを務めている男だが……俺は彼にいきなり呼び出されたのだ。
「パーティから出て行けって、どういうことだ?」
「言葉が通じないのか? お前はもう必要ないってことだよ」
「必要ない?」
「ああ、そういうことだ。俺達はかなり強くなったからな。正直、お前の補助魔法なんて必要ないんだよ。後方支援しか出来ない奴はもう必要ない、消えろ」
「ま、待ってくれよ……そんなこと、急に言われてもな……」
今まで1年近く一緒にいた相手に言う言葉だろうか? 流石に引いてしまうが……しかし、シウスの表情は真剣であり冗談を言っている風ではなかった。嘘だろ……?
「俺は補助魔法でそれなりにパーティに貢献していたと思ったんだが……」
「それが勘違いだったんだよ、馬鹿だな。お前の貢献なんて大したことなかったんだよ、俺達が強かったから今までの戦闘も上手く行っていたんだ。ちょっと補助魔法が使えるからって、調子に乗らせていたみたいだな」
「シウス、お前……!」
流石に頭に来た俺は少し言葉が乱暴になっていた。いくらなんでも追放理由が滅茶苦茶過ぎるからだ。反論だってしたくなる。しかし、シウスの表情は全く変わることはなかった。
「とにかくお前はハリウッダを追放だ、これはもう決定事項だからな。あばよ」
「お、おい……嘘だろ……?」
「本当だっての、他の連中も了承しているぜ。カインは必要ないってな」
そこまで言うと、シウスは俺の前から去って行った。俺はしばらく放心状態でその場に立ち尽くしていた。
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次の日、いつも集まる場所にシウス達の姿はなかった。念のため、他の連中が泊まっていた宿に行ってみたけどもそこにも誰もいなかった。俺を置いて他の街に行ったのか?
俺が今いる場所はヘンゼットタウン。ライハスク王国の首都であり冒険者活動も活発な街だ。周囲に未開のダンジョンが多いと言うのが活発な原因とされているが。俺はそこに一人残されてしまったことになる。
「くそっ、あんな奴らを仲間だと思っていたなんて……最悪だ」
シウス達だけでなく、他の二人も俺を見捨てたということか……なんてこった。俺はこれからどうやって生活していけばいいんだ? 俺はまだ18歳だからいざとなれば冒険者以外の仕事に就くことも出来るだろうが……俺は冒険者で生活していくと決めているのだ。
俺の特技である補助魔法は冒険者生活にもってこいだと分かっていたから。しかし、シウスの言葉を真に受けるなら、俺の補助魔法は大したレベルではなかったのかもしれない。今まで自信を持っていたのは俺の勘違いだったのか……そうだとしたら恥ずかし過ぎるな。
「まあ、悩んでいても仕方ないか。とりあえず、一人でも平気なダンジョンで小金だけでも稼ぐとするか」
とにかく生活費を稼がなければならない。効果は低いのかもしれないが、自分自身に補助魔法を掛けて戦うとするか。俺は難易度の低いダンジョンに向かうことにした。そのダンジョンで衝撃的な展開を目の当たりにするとも知らずに……。