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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

いきなり異世界転移男〜は?平和な日常を送ってたのに神の身勝手な理由で無理やりわけわからん異世界に転移させられたんだが許さない復讐してやる〜

こんにちは。江ノ喜けんとと申します。拙い文章で申し訳ありませんが、気に入っていただければ幸いです。


 小鳥の鳴き声が聞こえる…てことはもう朝? 嘘、もうそんな時間? さっき夕飯食ったばっかだよ?


 立ち上がってカーテンを思い切り横に引っ張ると、眩しい太陽の光が真っ暗な部屋の中に差し込んでくる。誰がどう見ても朝だった。


 「マジかよ〜…ちょっとテスト勉強の息抜きにゲームしただけじゃん。俺の周りだけ時間軸狂ってんじゃねぇの?」


 1人でぶつくさと文句を垂れても朝になってしまったのでは仕方ない。学校に行かなければならない。


 ゲームの電源を落として、パジャマから壁にかかっている制服に腕を通す。


 静かなキッチンに出て、1人、テレビを見ながら朝食をとる。俺、霧屑咲間(きりくずさくま)の朝はいつもこんな感じだ。


 高校に上がると同時に親元を離れ、適当に学校に通い、友達を作って帰ってきてはゲームをするの繰り返しだった。


 何だか充実していない人間のように思えるかもしれないが、俺はこんな何気ない日常を非常に愛している。


 漫画の中の主人公が辿る数奇な運命も、年頃の男子としては憧れるっちゃ憧れる。でも、実際に自分が体験してみたいとは思わない。


 俺はこの何気ない世界で生まれ育った。だからこの世界以外の日常は考えられないし、俺の帰る場所もここなのだ。


 「さてと、今日からテストだったな。ふあぁ〜眠みぃ…行ってきまぁす。」


 誰に言うまでもなく、行ってきますとただいまは必ず言うようにしている。それが俺の日常が続いている証だと俺は思うからだ。


 家から出て、学校への道のりを歩く。単語帳をパラパラめくりながら歩くような害悪行為はしない。普段から勉強してればそこまで必死になる必要はないんだからな。


 ヴヴヴヴヴヴゥゥゥン…


 その時、変な重低音が響き渡る。そして足元を見ると、謎の魔法陣のようなものが俺を中心に光っている。


 「おわっなんだこれっ、気持ち悪っ、関わりたくない…」


 そう言って足を動かそうとするが、足が地面に張り付いたように全く動かない…!


 「ちょっ、何なんだよっ! なんかこの魔法陣どんどん光が強くなってんだけど!? だっ、誰かっ、誰か助けてくれえぇ!」


 俺の叫びも虚しく、魔法陣が放つ光の中に俺は飲み込まれていった。


 



 

 「…きるのじゃ…」


 「おい、いつまで寝ておる。いい加減に起きるのじゃ。」


 ピシャ!


 「おわっ!?」


 顔に冷たい感触を感じて、俺は思わず飛び起きた。目を覚ますとそこには、褐色ロリ…じゃなくて少し色黒の小学生くらいの女の子と、長い黒髪にすらっとした体型の美女が俺を見つめていた。


 「え? なにこれ?  あなたたちは誰? ここどこ? さっきの変な魔法陣はなんだ? 」


 突然のことに混乱しかない。辺りを見回すと、まるで宇宙空間のような星空の中に俺はいた。他には椅子やベッドもある…なんだろ? この人たちが使ってんのかな?


 「アムリ様、大丈夫なんですか? こいつで。」


 黒髪の女性が俺の質問をシカトし、俺を虫が何かを見るような目で俺をみながら言う。


 「仕方なかろうイリス。たまたまこやつが適合していたのじゃからな。まぁ、別にこやつがのたれ死んだとしても代わりの適合者を探せば良いだけ。別に妾たちには何の損もないのじゃ。」


 アムリと呼ばれたロリが言った。会話の意味はさっぱり分からんが、俺に対して失礼なことを言っているのは分かった。


 「なぁ、人をこんな訳わからんことに巻き込んでおいて無視は良くないぞ。いい加減なんなのか説明しろこのクソガキ。」


 「クソガキとは随分な言い草じゃの人の子よ。妾はおぬしより数千倍長く生きておる。長幼の序というものを知らぬのかおぬしは。」


 クソロリはいかにも小馬鹿にしたような態度と面構えで俺に言う。


 「悪いが、人をいきなりこんな訳わからん場所に誘拐するような礼儀の知らん奴に払う敬意はない。」


 俺がそう言った時、頭上がピカッと光ったかと思うと、俺に小規模の雷が落ちた。


 「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」


 突然の激しい電流に、俺はのたうち回る。


 「口の利き方には気をつけることだな人間。このお方は貴様らが住む世界、そしてこれから貴様が行く世界を統轄なさる神であらせられるのだぞ。」


 イリスと呼ばれた黒髪の女性が言った。


 何だ? 神? んなもんいるわけ…って、今起こってることも既に非現実か…一々突っ込んでたらキリがないのかもしれない。考えをまとめるのは後でもできる。


 「さて、おぬしをこの場に連れてきたのは他でもない。おぬしに頼みたいことがあるからじゃ。」


 「とかなんとか言って、どうせ俺が断ったらさっきの雷がまた降ってくるんだろ?」


 「察しが良い人間は嫌いではないのじゃ。おぬしには探してもらいたい奴がおる。」


 アムリがそう言って、一枚の写真を俺に見せてきた。金髪の女性が写っている。


 「名はフィリアスティという。」


 「外国人?」


 「我々と同じ神じゃ。こやつは妾たちに楯突き、行方をくらましおった。お主がいる世界に逃げ込んだか、もう一つの世界に逃げ込んだか…調べたところ、僅かな神力をもう一つの世界に感じた。我々に見つからないように人間に化けておるようじゃ。おぬしには今からその世界に行き、フィリアスティを見つけ出してもらう。」


 アムリは簡単そうに言うが、これはかなりの無茶を言われているとしか思えない。


 「世界の中で1人の人間を探せって…それは砂漠に落ちた一粒のビーズを探せと言っているのも同然だろ。」

 

 「心配はいらん、おぬしには神力を感知できる能力を与えてやるのじゃ。目視すればそいつが神かどうかくらいわかるのじゃ。」


 アムリはそう言って、俺に一枚のカードを手渡した。


 「何だこれ?」


 俺はカードをいじる。


 「それはおぬしがこれから生きていく世界に必要なものじゃ。人間どもはキャドーと名付けたようじゃ。それを持っておけ。」


 よく分からないが重要そうなものなので受け取っておくことにしよう。


 「では、これからおぬしをもう一つの世界、裏世界へと飛ばす。せいぜい妾のために働くことじゃの。」


 アムリはそう言って一方的に話を打ち切る。するとイリスが俺の身体を魔力のようなもので縛り付ける。


 「お、おいっ! 俺はやるとは言ってないぞ!」


 「黙れ人間。貴様に選択権など初めからない。」


 マジで腹が立つ言い草だ。2人ともガチでぶっ殺してぇ…ぶっ殺してぇが全く身動きが取れない…ちくしょう…!


 俺はそのままこの宇宙空間の片隅にあった泉の前まで連れてこられる。


 「この泉は下界に繋がっている。後は自力でなんとかしろ。フィリアスティを探す。貴様はそれだけを考えてこれから生きていけばいいのだ。」


 「うるさいっ! 俺の人生は俺のもんだっ! テメェらに勝手に決められてたまるかっ!」


 イリスは俺の声には応えず、俺を泉の中に放り込んだ。その瞬間、意識が失われた。


 



 …………。


 ……………ん〜……。


 不快な感触を肌に感じて目が覚める。まだ若干寝ぼけているのか、景色がぼやけている。


 やがて視界が戻ってくる。周りは木、そして俺が倒れていたのは草むらだった。遠くから子供の遊ぶ声が聞こえてくる。


 「ここは…どっかの自然公園か…?」


 俺は立ち上がって草むらをかき分け、噴水がある公園の中心に出る。そこで俺はすぐに違和感を覚えた。…この公園、見たことがある…ていうか、俺の近所にある自然公園じゃないかっ。


 「どうなってるんだ…? 白昼夢でも見ていたのか…?」


 あのクソ神共の言う通りなのだとしたら、ここは俺が元いた世界ではないはず。だが、着ている制服は少し焦げ付いている。あいつらに落とされた雷のせいだ。さっきの出来事は夢じゃないだろう。


 「おら〜こっちだ捕まえてみろ〜!」


 「待てやこら〜捕まえて身包み剥いで市中轢き回しの刑じゃ〜!」


 すると、やたら物騒な設定の鬼ごっこをしている子供たちが近づいてきた。


 「小うるさいガキがいるな…考えに集中できない……は?」


 俺は邪魔にならないようにと距離を取ろうとしたが、次の瞬間の出来事に驚愕する。


 「いえぇい、エターナルウィングだぁっ!」


 逃げ回っていた子供がそう言うと、その子の背中に翼が生えて、宙に浮かんだのだ。


 「あぁっ、ずりぃぞっ、キャドーは禁止って言ったじゃねぇかっ! こうなりゃこっちもっ、くらえぇ、メテオボルケーノッ!」


 次にもう1人の子供が、手から火の玉を出して空を飛ぶ子供に向けて飛ばした。


 「なっ、なんだあれっ!? 魔法かっ!? おいっ、ちょっと君たちっ!」


 俺は子供たちに駆け寄ると、訝しんだ顔で2人が俺のことを見る。


 「なんだよお前? なんか用かよ?」


 「ていうかこいつ、昼間なのに制服着て公園にいるとか、不良なんじゃねぇの?」


 誰が不良じゃ。生まれてこの方無遅刻無欠席の優等生じゃい。…ていうか、今って昼なの? 俺が魔法陣に飲み込まれた時は朝だったのに。…アホか、今は時間のことなんてどうでもえぇんじゃ。


 「わ、悪いねぇ急に声をかけて〜。お兄ちゃんに一つ教えて欲しいんだけど? 君たちが羽を生やしたり火の玉を出したりしたのはどうやってやったのかな?」


 「あ? そんなのキャドーを使ったに決まってんじゃん。」


 子供が何言ってんだこいつみたいな顔で言う。いやいやいや、キャドーってなんだよ。


 「そ、そのキャドーっていうのはどうやって使うんだ?」


 「は? キャドーカードを使うに決まってるだろ?

 こんなの幼稚園生でも分かるぞ。」


 もう1人の子供が呆れ顔で俺を見る。ちくしょう…こんなガキンチョに舐められた眼差しを向けられるなんて屈辱…だが今は情報が欲しい…


 「そ、そうなんだよ〜実は俺、すげぇ貧乏だから幼稚園にも通ってなくてなぁんにも分からないんだっ、この制服だって拾った物なんだっ、ほらっ、ボロボロだろ?」


 「ふぅ〜ん、確かに制服はボロっちいし貧乏面してるけど、こんな低姿勢な不良俺初めて見たぜ。でもいいぜ、俺たちが可哀想なお前に教えてやるよっ!」


 服はともかく誰が貧乏面じゃいっ、という言葉を飲み込む。せっかく有益な情報を教えてくれるのだから。


 ある意味、最初に会ったのがこの子供たちで助かった。どうやら俺が知りたい情報は、子供たちの反応を見る限り、この世界にとっては常識も常識、知らない方がおかしいレベルの話だと推察できる。


 普通の道行く大人に聞いたら記憶喪失とかだと思われて、病院送りにされたらたまったもんじゃない。

 

 「まず、君たちが言う、キャドーってのはなんなんだい?」


 「ん〜、神様がくれた特別な力? 生まれた時にみんな貰うんだよ。」


 生まれた時にみんなキャドーという異能力をもらうのか…だとしたらこの世界に生まれていない俺は当然特例だろう。


 「その神様って、アムリとかいうチビの色黒の女の子か?」


 「アムリ? 誰だよそれ。神様はイリスっていう名前だぞ。すっげぇ綺麗な女の人。」


 あれ? アムリの方が偉いはずなのにその付き人みたいなイリスの方が神様なのか…まぁとにかくこの世界での認識はそうなんだろう。


 「そんでイリス様からこのキャドーカードをもらって、俺たちはこれを使えばキャドーが発動するわけ。いくら貧乏でもキャドーカードは持ってるよな?」


 「キャドーカード…もしかしてこれか?」


 先ほどアムリに渡されたカードをポケットから取り出す。


 「そうそう、なんだちゃんと持ってるじゃねぇかっ! ちょっと貸してみっ!」


 子供にカードを奪い取られる。


 「何々? 「神力感知」だってよ。聞いたことないキャドーだな。使ってみるか。」


 子供はそう言って、カードに浮かび上がった神力感知の文字をなぞった。


 すると、俺の頭に電波を受信するようなアンテナが生えてきて、ピコーんピコーんと音を立てる。


 「あはははははっ、なんだそれっ! だっせえぇぇ!」


 ちくしょう…


 そのあと、子供たちは散々俺のことを笑いながらも、色々なことを俺に教えてくれた。そこだけは素直に感謝したい。


 子供たちと別れ、俺は持っていた金で、大量の食料を買い込んでネットカフェに丸々1週間入り浸った。この世界について色々と情報を集めるためだ。


 子供たちに確認したが、俺が持っていた金は、この世界でも使えた。つくづく俺のいた世界にそっくりな世界だ。


 まず分かったことは、この世界は、俺たちがいた世界とは別にもう一つ存在する世界、通称「裏世界」という世界らしい。


 住んでいる人間、あのキャドーという異能力、そしてそれにまつわる建物を除き、俺のいた世界とほぼ構造が一致する世界のようだ。当然言語も同じ。


 次に、この世界の神について。俺が認識している神は、偉そうな褐色ロリガキ、アムリ。それに付き従う黒髪の美女、イリス。そしてアムリたちが行方を探しているという金髪の女、フィリアスティの3人だ。


 ただし、アムリとフィリアスティは、この世界の人間に認知されていないらしい。裏世界ではイリスこそが唯一神として君臨しているらしい。


 アムリが認知されていない理由は不明だが、俺にはあまり関係がなさそうなので考えないことにする。


 次にこの世界特有の異能力、「キャドー」について。何語でだか知らないが贈り物という意味らしい。キャドーというと俺自身がこの世界に染まったみたいで嫌なので異能力と呼ばせてもらう。


 異能力は1人5つまで覚醒するらしい。ガキンチョたちの前では隠していたが、「神力感知」は俺のキャドーの一部分でしかない。


 俺はカードの神力感知の文字をこすった。出てきた文字は、「能力吸奪」。相手の能力を奪うというものだった。


 俺はこれを見た時、世界最強クラスの能力であると悟った。例えこの世界にどれだけ強い能力を持った奴が現れたとしても、俺はその能力を奪えるのだ。


 アムリが俺にカードを与えた時、俺は咄嗟にカードをいじって、アムリとイリスの能力を奪った。


 俺は「能力吸奪」をタップすると、「神力感知」「多重力空間」「神の千里眼」「必中の一撃」「轟天導打」の文字が浮かび上がった。


 もっと奪ってやりたかったが、時間がなかったので奪えたのはこれだけだった。


 異能力は1人5つまでらしいが、自身の異能力によって他人の力を盗んだ場合は5つ以上でもいいらしい。


 俺の能力はあくまで、「能力吸奪」一つという扱いだ。


 最後に、俺自身について。俺はこの訳の分からない世界に居座るつもりは毛頭ない。直ちにこの世界を脱却し、元の日常に戻る必要がある。


 神の奴らは、フィリアスティとかいう神となんのいざこざがあったのかは知らないし知る必要もないが、それに俺を巻き込み、平和な日常を奪った。さらに、奴らの言い草だと俺がこの世界でのたれ死んだとしてもまた代わりに別の人間を攫ってくるようなことを言っていた。


 何という身勝手、傲慢さ。人間の命を命とすら思っていない。A級戦犯も真っ青の悪の象徴だ。


 さらにその神にこの世界、さらに俺たちが統治されているというのも気に入らない。人をゴミのように扱う奴らなど、上に立ってはいけない存在なんだ。


 「奴らは間抜けだ。こんな強力な能力を渡してもなお、所詮人間如きには神に歯向かうことなんて出来ないとたかを括ってやがる。すぐに後悔させてやるぜ…人間はテメェらのおもちゃじゃねぇ…!」


 必ず元の世界に帰るついでにテメェらも始末してやる。


 元の世界に帰る方法を探していると、一つそれらしきものが見つかった。この世界では、キャドースピリッツという大会があり、異能力の力で戦って、その優勝者には神がどんな願いでも一つ叶えてくれるというドラ◯ンボールみたいなものだった。


 だが、よくよく考えてみる。神は自分たちが与えた能力で人間を戦わせ、奴らはそれを高みの見物として、見世物として楽しんでいる訳だ。


 そう思うとこのキャドースピリッツという大会にも苛立ちが募った。神共は人間をどこまでオモチャにすれば気が済むってんだよ。


 だが、このキャドースピリッツという大会…イリスのやつが開始と終了後に一瞬天から降りてくるらしい。


 これは奴を締め上げる絶好のチャンスだ。だが、この大会はすでに予選が終了しており、予選を勝ち残ったチームが残りの本戦出場枠を決めるらしい。


 自分を売り込んでどこかのチームに入れてもらおう。この俺に与えられた異能をうまく活かせば必ず拾ってくれるチームがあるはずだ。


 そして、もう一つ。神に言われた、フィリアスティという神の捜索だ。正直、神共に従うのは癪だが、そのフィリアスティがアムリたちと揉めたせいで俺はこの世界にいるのだから、横っ面の一つ引っ叩いてもいいだろう。


 それにアムリたちに対する有益な情報を持っているかもしれない。


 「よしっ、今後の方針は決まったな。」


 キャドースピリッツに参加する。フィリアスティを探す。俺はこの2つをなんとしても達成して元いた平和な日常を取り戻すんだ。


 「っと、その前に…」


 俺はカードをいじって、「神の千里眼」と「轟天導打」、「必中の一撃」の文字をタップした。


 神の千里眼…全てを見渡せる神の瞳…この世界よりさらに外側…アムリたちは…見つけたっ! 呑気に茶なんか飲んでやがる。俺をこんな目に遭わして自分はのほほんとしてるってか。


 轟天導打…天まで届く、ありとあらゆる特性を宿せる一撃。


 必中の一撃…俺が打った攻撃が100%命中する、当たるまでどこまでも追尾する…


 この2つを組み合わせて…


 「っはああぁっ!」


 俺は天に拳を放った。凄まじい衝撃が天へと昇っていった。


         ◇ ◇ ◇


 「さて、あとは昼寝でもしてフィリアが見つかるのを待つとするのじゃ。」


 アムリはベッドに寝っ転がった。


 「先日放り込んだ人間がもしフィリアを発見した時はどうするのですか?」


 イリスは紅茶を用意しながら言った。


 「まぁ、用済みだから始末してしまって構わんじゃろ。神に葬られるのじゃ。人間にとってこれほどの幸福はあるまい。」


 アムリがそう言った時、下界に繋がる泉がボコボコと波を立て始めた。


 「ん? なんじゃ?」


 アムリがそう言った瞬間、泉の中から凄まじい衝撃が飛び出して、アムリを直撃した。


 「ぎぃやあぁぁぁっ!」


 アムリは地面に転がる。


 「ア、アムリ様あぁ!」


 イリスが駆け寄ると、アムリはうずくまっている。


 「いっ、痛いぃぃぃ! 痛いのじゃあぁぁ!」


 アムリは涙をこぼしながらのたうち回る。


 「今のは、アムリ様の轟天導打…いったい誰がっ!? くっ、先に手当てをしなくては…!」


 「ぐぅぅう…! ゆ、許さない…誰だか知らんが絶対に許さん…絶対見つけ出して始末するのじゃあ!」


         ◇ ◇ ◇


 そんな光景を、俺は朝食のパンを頬張りながら千里眼で覗いていた。


 「へっ、ざまぁみやがれ。今後定期的に攻撃したるわ。殺されなかっただけありがたく思いやがれ。」


 裏世界に来て、日常が崩壊してから始めて飯がうまいと思った。


 キャドースピリッツまであと半年か…


 「半年だ…半年だけ、この非日常に耐えてやる…俺は必ず元の世界に帰るんだ。」


 俺は強く決意して、カバンを背負って裏世界の街中へと消えていった。

この作品は、『カード異能で異世界ライフ〜やってきたのは裏世界?』と同じ世界線の話になっております。そちらも気に入っていただければぜひ、一読お願いします。

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