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【挿絵400枚】2055~ステータス0の亡者  作者: 烈火
第1章 失ったもの
9/83

☆メインストーリー1-2 「天使の輪」※挿絵有

挿絵(By みてみん)


夜の庭で1人の少年。

淘汰は芝生の上に座っていた。


俺は残された唯一の人類。


住研究所。

スミスじいさんの自宅だ。


決められた区画。

そこから出る事を禁止されていた。


なので庭でぼーっとそれを見上げている。

綺麗な天ノ川だ。


この夜空だけは2050年も2055年も変わらないだろう。


俺が失ったもの。

それは思った以上に重かった。

5年間好き勝手に扱われ記憶すら改竄され認知も有耶無耶。


じいさんや織姫。

皆が盛んに昔話する中取り残されるのが辛かった。


記憶を失いなんの力もない自分。

言葉でありがとうは言えても、恩を行動で返すことが出来ない。


だから風に当たると言い外に出た。


夏の夜は涼しい。

整理する記憶は無いが気持ちを整理することは出来るだろう。


落ち着きはじめた時だ。

突然視界が赤い光に包まれ金縛りにあった。


「くっ、あがっ」


息もできない。

苦しい、死ぬ、そう思った時だ。


挿絵(By みてみん)


「ごめん、少し調整を間違えた。

これで大丈夫なはず」


かろうじに目を動かすと普段着を着た000(ゼロ)がいた。

彼女は立ち上がると見下すようにこちらを見ている。


こいつこそが俺から5年の時を奪った女。

俺は助けを呼ぼうとした。

しかし喉が痺れ全く声が出ない。


「邪魔されたくない言いたい事がある」


「あっ、ぐ」


俺は必死に体を捻ったり、喉を振り絞ったり試みた。

しかし全く動けない。


000は俺の前に回り込むと、頬に触れた。


挿絵(By みてみん)


「君が何処に行こうがいつでも私の一存で自由に出来る」


凄まじい剣幕。

異形な赤い瞳を見た途端、体が氷のように冷たくなった。


体のしびれの正体、赤い光の正体はこれだ。

脳を掴まれるような感覚に支配される。

その直後、瞳の光が消えた。


「私は彦星の世界平和なんて興味無い。

自分と愛する者と居れればいいだけ」


000が手に取ったもの。

それは天使の輪のようなものだった。


その輪を頭にかけられる。


「君は仮想空間のアバターを失った。

だけど制限付きで仮想空間へのアクセス権限をあげる。

この輪に触れたら、私が手を貸すから」


俺はその唐突の贈り物に驚く。

しかしこの女からは危険な匂いがする。

そんな簡単な話はない。


押し殺した声をあげ、000を睨みつけた。


彼女は口角を上げたままニコッと笑った。


「やっぱり記憶を無くしても君は君。

私の性格は分かるみたい。

飴を貰って何か悪いことはないか?」


俺は心の中で理解した。


やはりそうか、追い詰めて交渉を持ちかけようと。


しかしキッパリとした否定の声が響いた。


「ないよ。

単純に精神的な問題。

だってこれを使う事は、結局君が私を必要って認める事。

打つ手が無くなったら、やっぱ私に依存する」


彼女は消えゆくような声を残すと姿を消した。


目の前がグラッと揺れる。

やっと落ち着いて瞑った目を開けると

織姫が目の前にいた。


「あんた大丈夫?

やけにうなされていたようだけど」


挿絵(By みてみん)


俺は突然体から熱が戻るのを感じた。

汗でびしょびしょの状態だ。


寝て、いたのか?


先程まで000が居たのにも関わらず織姫の反応が薄い。


頭に付いていた天使の輪もない。

気のせいだ。

もしかしたら夢を見ていたに違いない。


濡れた額を手で拭きながら狼狽して言う。


「ああ、大丈夫だ。

どれ位かと表現するなら

苦手なお化け屋敷を抜けた時位だな」

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