☆メインストーリー5-8「雷絶の56」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~仮想空間・地獄 浜辺エリア
淘汰達は火山エリアを抜け指定されたエリアにたどり着いた。
最深部から遠ざかる条件は簡単で1割の敵を倒せばよいのでサクサク進む。
さらに心強い味方が加入したのもある。
チャラ民「ここって思ったより景色が綺麗だね!
雑魚敵のリビングデッドとか居なければ色んな風景を見れる観光地として最適かもしれない」
剣を振るい巨大な青い波動を敵に放つ【猩騎士団】団長チャラ民。
言葉自体は朗らかな物だが嵐のような一撃であらゆる物を吹き飛ばしている。
ここの敵一体一体が強敵なはずなのに軽々とだ。
左手に剣、右手に杖。
杖から溢れた魔力を剣に宿し敵を斬る。
【覇王剣技】と呼ばれた戦闘スタイルである。
俺は彼が敵であった時のことを思い出し少しだけ足が震える。
その様子を見たのかちび女が声をかけた。
織姫「なにびびってるの?」
淘汰「武者震い、だと思う」
織姫「ふーん。
あ、【ぽちガード】!」
へんてこな技名で犬のぽちを抱き攻撃を防ぐ彼女。
反射的にぽちの能力【硬化】が発動し敵から飛んできた炎魔法を弾いた。
000「うちの子になんて事を……」
ぽち「いつもの事だぜあるじ。
盾役って言うらしいぞ!」
誇らしげに飼い主の方へと走りより尻尾を振りながらぐるぐる回るぽち。
褒めてもらいたい様子だが000は少し引いているようだ。
課金「世の中適材適所と言いますが私の若い頃に勤めていたブラック企業を思い出しますハードさですね」
レイブン「お?ブラック企業って
裏社会関係か?
あっしも知り合いにいたなぁ。
特攻役は肉壁盾役ってなぁ」
天裁「先生、ブラック企業はそういった業界の話ではないと思います」
それ以前に元ヤンキーで元担任で繋がりがあったっていう点で色々ヤバい人だなって感じる。
俺と同じ彼女の元生徒であったチャラ民が苦笑いをしていた。
淘汰「そういえばチャラ民よく来たな。
確か猩騎士団を纏める役目があったろ?」
チャラ民「ノアちゃんが高度な変身能力を持ってて団長の影武者をしてくれたのさ!
最初は淘汰達が大変なことになったって聞いたから無理を言ってここまで来たんだ。
それに課金が纏めていたVipuumのメンバーに裏切り者がいたって部下から聞いてね」
課金「津田ですか。
私は長らく無限回廊に閉じ込められていたので他の部下については分かりませんが。
というと猩騎士団に私の元部下が?」
津田っていうとあの青髪ロングで影が薄すぎるカード使いの青年か。
かなりの実力者ではあるが神谷の父の部下であったのか。
チャラ民「うん。
津田と同じ元Vipuumだと、うちにはのっぽコンビのカイザーとビショップ、そしてサングラスのじゃもがいる。
今は猩騎士団の幹部をやってるよ。
他がジョーカーは行方不明でねるばあちゃんが現仮想空間に適応できず植物状態なんだ」
その言葉を聞いた課金は目を丸くしていた。
ああ、確かにいたなぁ。
猩騎士団に立ち向かった時にチャラ民の周りにいた奴らだ。
そんな強力なメンバーがVipuumには集っていたのか。
膝をつんつんされ視線を落とすと織姫がその話の詳細を話した。
織姫「残りのメンバーのねるってばあさんはチャラ民の祖母らしいわ。
家族で残ったのは彼だけっていうのは本当の話なのね」
チャラ民「だからこそ一時は人類を無理やり仮想空間に追いやった彦星、それと電脳生命体をひっくるめて憎しみを持って迫害していた。
でも電脳生命体に転生した姉と会った時絶縁関係になったんだ」
俺は天空城での戦いを思い出した。
その中でチャラ民は電脳生命体には織姫のように共存を訴える者もいることを知り心を入れ替えた。
淘汰「今のお前は電脳生命体が全て悪いとは思わないんだろ?」
チャラ民「そう、君達の信念に押されて。
だからその強い決意をちゃんと示してね」
俺と織姫はその言葉にハッとし頷いた。
圧政者と呼ばれていた彼の前で揺らぐ気持ちを見せたがこうしてはいられない。
再度気持ちに喝を入れようとした時だ。
視界に次元の割れ目のようなものが見えた。
いざ進もうとした時、000が静止した。
000「待って誰か来る」
スミス『その通りじゃ。
彦星並みの凄まじいエネルギーを持つ敵対反応がある!
皆気を付けろ!』
次元裂け目近くの木々から足音がした。
ゆっくりと横切るように姿を現し次元の裂け目の前に立ったのは緑髪の虎の獣人だ。
56「困るんだよにゃあ。
あんなに優しく丁寧に対応していたフェンリル様を無下にして……」
それは無限回廊においてフェンリルを倒した俺とレイブンを一撃で吹き飛ばした人物だ。
彼女はビリっという音と共に雷を纏った。
56「ダンケルハイトが折角作った唐揚げを粗末にしてフェンリル様を蹴り飛ばす。
正直本気で頭にきた!
お前ら全員かかってこい!
纏めてぶっ飛ばすぞっ!」
~仮想空間・地獄 天空エリア フェンリル城
フェンリル「やられた!
いつの間にか津田とMr.Bが倒されている!
それに【破壊の電脳神】の魂を奪われた!
000の奴に盗まれたんだ!
こんな時に56もいない!」
猩騎士団団長によって吹き飛ばされ荒れ放題に荒らされたアジトでフェンリルは狼狽していた。
やけに力が抜ける感覚がして嫌な予感がしていたのだ。
しかも部下のダンケルハイトが倒れた仲間達を連れてきてパニック状態だ。
ダンケルハイト「那老がどうとかって56が言っていたな。
奴表情が消えていた。
相当キレてやがったぜ。
単身で突っ込んで行きやがった」
まさか那老が一枚噛んでいたのか。
フェンリル「なんだと!?
淘汰達にたった一人で立ち向かうのか!
無謀にも程がある!
止めに行くぞ!
痛たた……」
ダンケルハイト「社長さんよ今は動くな。
二人を蘇生とあんたを回復させる。
大仕事だからな。
ってあんたは!?」
一人の人物が入ってきた。
フェンリルとダンケルハイトが彼の方を向くと独特な口調で話しかけてきた。
Mr.B「正気を取り戻しました。
貴方達に敵意はありますが敵対はしません。
なぜなら私はスミスが我が主【破壊の電脳神】を殺す計画を知っています。
その為主は【天獄】へと身を戻すようです。
なら貴方達と私の目的は同じ、一時的に共闘しませんか?」
それは000の執事であった仮面の男であった。
~仮想空間・地獄 浜辺エリア
雨が降り始めた。
雷鳴がとどろき空気が鼓動をする。
淘汰達は目の前に立つたった一人の電脳生命体に道を阻まれていた。
こちらは淘汰、織姫、ぽち、000、チャラ民、天裁、レイブン、課金の八名。
敵はたった一人でそれ全員を相手にすると言い放ったのだ。
圧倒的にこちらに利があるはずなのに足が固まるのを感じる。
スミス『気を付けろ!
奴は奇跡的な乱数で生まれた【超戦闘型電脳生命体】!
しかもフェンリルの領域によりさらに強化されておる』
ぽち「んなこたぁ関係ねぇ!
我は突き進むのみ!」
淘汰「おい待てって!」
前回の戦いから学んでいないのか
突っ込んでいって一撃でやられたのに。
56が反撃に腕を動かしたその時だ。
ぽちの背中を足場にして誰かが跳躍した。
レイブン「【地獄流・滑空一閃】!」
沈むぽちと跳ね上がるレイブンの間に隙間が生まれ56の右ストレートが空振る。
敵の頭に鋭い突きの一撃が飛んだ。
脳天に直撃をしたと思ったが
なんと剣が折れてしまった。
しかし戦意を喪失せずレイブンは折れた剣を振り回し攻撃を当てるが全て受け止められてしまった。
ぽちも噛みつくが文字通り歯が立たない。
天裁「先生、ぽち離れて下さい!
熱閃魔法……。
【ディストラクションフィンガー】!」
光の魔力を人差し指に集約し凄まじいエネルギー波を放つ天裁。
それを見た56は避けずにそのまま引き寄せデコピンで分散して弾き返した。
それは的確にぽち、レイブン、課金に飛んだ。
寸前に【硬化】をしたぽち以外は命中する。
レイブンは何とか立ち上がったが課金が床に肘をつけた。
織姫「な、何よ!
化け物じゃないのあれ!」
スミス『とにかく落ち着いてそれぞれの役割につくんじゃ!
【硬化】を使えるぽちと【復帰能力】を持つレイブンは前衛盾役!
【広範囲高火力】のチャラ民は中衛!
他は後衛を。
【鏡魔法】を使える天裁と【泡魔法】を使える織姫は彦星戦で用いた作戦!
淘汰はアイテムを用い課金氏の援護!
000は魔法による援護を頼む!』
混乱状態であったメンバーを纏めたのは通信越しで話すスミスだ。
彼の指示に従いそれぞれが動き始めた。
地獄を抜ける道のりでスミスは000を含め皆ができる行動を把握したようだ。
俺は神谷の父に駆け寄るとアイテムを用い怪我の治療をした。
課金「私は直接皆さんの力になるのは厳しいようです。
ですが私には【数魔法】がある。
レイブンさんこれを受け取って下さい!」
彼は携帯端末に何かを打ち込むと画面から片手剣を取りだしレイブンに投げた。
レイブン「サンキュ!
ってまた折れやがった!」
課金「大丈夫ですよ!
私の名前の由来通り所持金がある限り皆さん武器の補充は出来ます!
そこで援護をさせて頂きます!」
何度も吹き飛ばされ戦闘不能になりかけHP1で立ち上がるレイブン。
そこにぽちが【硬化】でサポートをする。
チャラ民「魔法伝導率の高い大剣渡して!
ありがと!」
身の丈程のある大剣を掴むとチャラ民は片手の杖で大剣を叩いた後振り上げた。
チャラ民「【覇王流星剣】!!」
それは天空城の戦いで彼が最後に使おうとした技だ。
波動を纏い天に伸びる光。
雲を裂く先の見えない大剣が振り下ろされた。
しかし56はそれを人差し指と中指で摘み力任せに折ってしまった。
こちらの戦意すら折る行為だ。
それでもまだこちらには作戦が残っている。
織姫「Gカード【分身】!
泡魔法【バブルライン】!」
天裁「鏡魔法【ミラーカウンターα】!」
分身した織姫が放つ大量の泡。
さらに天裁がダメージを反射させる鏡をコーティングした。
彦星戦で用いた作戦だ!
その泡に囲まれ止まる56。
スミス『よくやった!
これで奴は行動が取れん!
今のうちに地獄を抜けるのじゃ!』
次元の切れ目に急いで向かおうとしたその時56は全ての泡を息で吸い込み飲み込んでしまった。
一同が目を見張る中、今度は口から大きな泡を吐き出し次元の裂け目を塞いでしまった。
鏡の泡が反射し穴が虹色に輝く。
そこに56が雷を纏った黄色い波動を手に集めてぶつけ反射させた。
56「【雷絶】」
突然の行為に戸惑ったがスミスが警笛を鳴らした。
スミス『いかん!伏せるんじゃ!』
声が最後まで届く前に目の前が光に染まり遅れて爆音が鳴り響いた。




