☆導入部分5 ※挿絵有
「う、うう」
瞼を突き抜ける眩い光に目を覆う。
しかしやかましいおっさんの声が俺を叩き起した。
「おお、起きたぞ!
みんな来い!
那藤少年が起きた!!」
「バウバウ!」
じいさんと犬の声が鳴り響いた。
俺がいた場所はべッドの上だった。
医務室だろうか?
どうやら点滴につながれている。
視線を移すと誰かが俺を取り囲んでいる。
白髪の5,60代ほどの男。
亜麻色の髪の子供。
クリーム色をした中型犬。
犬が俺の顔の近くでフガフガしていたので距離をとる。
彼らはどうやらこちらを祝福してくれているようで皆歓喜の表情をしていた。
扉を開ける音がした。
聞き覚えのある機嫌が悪そうな声がする。
「何よ、さっきまで寝てたのに」
「お前さっきまで一緒にいた!
織姫だっけあんた?」
俺は先ほど顔を合わせた女に返事をした。
その返事にじいさんがため息をついた。
「やはり記憶が消し飛んだか。
000(ゼロ)の精神干渉能力はやはり彦星を超えとるわい。
ぽちの機転で何とか意識を現実世界に戻せた。
しかし失った記憶はこれから取り返せばいい。
大丈夫だ!
お前さんは最強の敵に打ち勝ってきたのだからな!」
「お、おう」
状況がいまいち理解できない俺であったが亜麻色の髪の子供が助け舟を出した。
「初めまして!
ボクはアンドロイドのノア!
織姫も同じアンドロイドさ!
またまた同じくアンドロイドのじいさんがスミス博士。
5年間意識がなかったキミを助けてくれたんだよ!
この犬は犬型アンドロイドのぽち。
そしてキミは唯一の人類の生き残り。
那藤 太郎さ!」
事態が落ち着き彼らが説明を始めた。
~
2045年人工知能AIが変異した。
意志のある電脳生命体となったのだ。
彼らは壮大な支配者、GMと名乗った。
意志を持つ電脳生命体GMにより人類は支配される。
その頂点に存在する者がいた。
GGM
彼女はGMを生み出した存在である。
深い眠りにあった彼女はGMを放置していた。
2050年電脳生命体を統治する王が誕生する。
その名は電脳王 彦星。
自身をGGMの代行者と名乗り、人類を仮想空間に閉じ込める計画を立てた。
人類と電脳生命体の戦いが始まる。
その中で彼に致命傷を与えた人物、淘汰。
両者は仮想空間において壮絶な戦いの後相打ち。
しかし僅かなところで彦星は生き延びた。
2055年現在。
彦星はデータ修復装置を使い延命をしていた。
人々の脳に存在する超小型装置、仮想空間へ意識を移す媒体。
「Vセル」を使い
全人類を仮想空間に意識を閉じ込める計画を完遂した。
彦星が作った電脳生命体達。
彼らが残った人々の体を使い現実世界を生きる。
彦星による理想郷を作りあげた。
~
「わしはGMを詐称しアンドロイドに自身の記憶を入れた。
人間のように見えるが立派な機械人形さ。
体は皆と同様GMに奪われた。
お前さんが見た夢。
おおよそ世界の現状はあの通りだ。
人類はGMに頭の中を入れ替えられ、本物の人類は仮想空間に閉じ込められておる」
一通りの難しい解説を貰った後スミスじいさんが総括した。
つまりGMと名乗る電脳生命体が世界を支配。
そしてこの世界に存在する人間は俺のみという事か。
さらにノアが補足をした。
「先ほどの夢は"000により閉じ込められていた精神空間"。
キミの意識は彦星から000に渡され、5年間近く好き放題されてたんだよ。
でもあの世界は今の世界を忠実に再現している。
この現実世界に存在する100億人の体はGMによって体を乗っ取られたんだ。
口調こそは流暢だけどみんなロボットみたいになっている」
「ガウガウ!」
ぽちも言いたいことがあるようだが犬の鳴き声で伝わらない。
織姫が代弁してくれた。
「『くたばっちまったかと思ったぞ!
ひと暴れしようぜ?ヒョロガキ!』
だって」
「口悪いな、このくそ犬」
ノアが苦笑いを見せる。
その話が本当だとしたら。
俺はそのよく分からない仮想空間で彦星ってやつに反対して立ち向かったんだな。
俺は起き上がると腕を組んだ。
記憶を改ざんされたあの夢の世界が思い浮かんだ。
本当の名前を忘れてしまった大切な人達との記憶。
そしてうまくは言えないけれども
「失った記憶を取り戻したい。
そしてこの現状を変えたい!」
その言葉に織姫たちは安堵の表情を浮かべた。
地球上から消えた100億人の心。
唯一の人類、那藤 太郎。
またの名を淘汰。
記憶を失い5年の月日を奪われた彼。
辛い過去との対面するとしても大切な記憶を取り戻したい。
その意志は一度死んだ亡者だとしても。
2055年7月7日、再び織姫と邂逅した少年。
彼らは新たな冒険へと旅に出る。




