☆導入部分4 ※挿絵有
「私は名前を捨てたの。
そのまま000(ゼロ)って呼んでくれればいい」
神谷であった彼女の姿が豹変する。
000の髪の色が薄紅色に変わり、黒バラのような服が体を覆う。
さらに片目にはバラの眼帯。
残った赤い瞳には渦巻きのような黒い模様。
「どう?
君が人間を嫌いって言ったから私ね人間を辞めたんだよ?
電脳生命体に好き勝手体をいじられて、尊厳も何もない。
でも君と一緒にいられるこの時間の為に私は苦痛に耐えた!
だから私達の邪魔になるものは消すんだ。
今までもそうしてきた!
昨日だって私を否定した、君の記憶を消したもの!」
急に態度が豹変した彼女に俺は驚き口を閉じた。
そうか。
俺の記憶に矛盾があるのは記憶を改ざんされていたんだ。
000はさらに畳みかけてくる。
「最初はね、君の周りの人はロボットみたいじゃなかった。
でも君が私以外と会話をするから、次々と皆の意志を消したんだ。
そしたら君がね私と話すの楽しいって言ってくれた!
はははは!
だからもっと幸せになるように頑張った!
君の喜ぶ言葉や仕草を覚えて、リセットして。
君が幸せになる最善の方法をしていく!
その為に今日もリセットしたんだよ?」
俺はぞっとした。
単に記憶を改ざんされていただけではない。
ゲームのように都合が悪くなったらリセットされ思い通りに操作されていたんだ。
考えれば考えるほど背筋が凍り絶句する。
000は顔を高揚させ、さらにぞっとするような表情で話をつづけた。
「蜜月のような40,000時間だった。
君がそれを望み、その幸せが絶頂の時にリセットしてね。
そして一からそれを超える幸せを探す。
だからちゃんと時間経過だけさせて、私の努力を数字にした。
その過程を楽しみながら時を過ごすのは至高なの!
ねえ、戻ろう?
リセットすればこの違和感の地獄から解放される。
その女は二度と現れないから安心して
私も君も辛いことを思い出すのはもう嫌なの」
恐怖で体が固まり、震えた。
膨大な時間を俺は奪われていた。
さらに失った記憶があるようだ。
それもかなり重そうな過去。
ある意味ではこのまま投げ出した方が楽だろう。
でも
「辛い過去を忘れるのは確かに楽だろうよ。
ただ大切な過去を忘れるのは、耐えがたい苦痛だ。
俺は失った記憶を取り戻したい!」
織姫から声が聞こえる。
「淘汰!」
000は目を大きく開けておぞましい表情をした。
「何が無理だったの教えて?
110番っていう名前が嫌だった?
分かった、やっぱその女だ!
……殺してやる、殺してやるっ!!」
それは彼女の声とは思えない程低い声であった。
手から植物の蔦のようなものを出すと織姫に向けた。
それはあまりにも鋭く刃物のようになっている。
止めようとした。
しかし植物の蔓が体に絡みつき動けない。
このままだとやられる!
000が織姫に飛び掛かった、その瞬間だ。
「ガウ!!」
という犬の鳴き声と共に何かが間に入った。
白い光が辺りを包む。




