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【挿絵400枚】2055~ステータス0の亡者  作者: 烈火
第3章 没落軍師 天裁
37/83

☆メインストーリー3-9 「電脳王最終形態」※挿絵有

※仮想空間においての会話は

名前「会話文」の特殊表記となります。

詳細はあらすじにて

~仮想空間・荒廃したアクアリゾート


挿絵(By みてみん)


生命維持装置が壊れ崩れ落ちる電脳王と電脳城。

同時にカウンターを喰らい倒れる天裁。


過去の俺が彦星と引き分けた時。

遺された皆が感じた感情を理解した気がする。


倒れた天裁を見てモヤモヤするこの気持ちが抑えられなかった。


現実世界の通信が戻りスミス博士達の声がした。


スミス『これは!

やったのか!?』


織姫「でも天裁(てんさい)が相討ちになったわ!」


通信越しから息を飲む声がした。

友を見下ろしたMr.Bは嘆くように激怒した。


挿絵(By みてみん)


Mr.B「そのまま死ぬのならあなたは私達を欺いた事になる!

あの技で死ななかったから

そんな事が理由でも私達は望みません!」


もしかしたらそれを込みでこの彦星を倒す事が策だったのだろうか。


サポートAIのノアが注意を促した。

何かを探知したようだ。


ノア『みんな気を付けて!

電脳王彦星の生体反応が残ってる!』


彦星「勝ったつもりかい?」


それは信じられない光景だった。


まるで悪魔のような姿に紫の大剣。

彦星は新たな姿で俺たちを睨みつけていたのだ。


挿絵(By みてみん)


彦星「これは最後の戦いに残していた最終形態。

生命維持装置を犠牲に延命し極限状態で【異形化(いぎょうか)】した。

99%の割合で戦闘不能を無効にしHP1で復活する。

三勇者のレイブンが使っていた能力だ。

そこに圧政者の使っていた覇王剣を手にした」


ノア『みんなステータス表示をして確認して!

過去の淘汰と同じステータスなんだ!

しかもEXステータスが付いている!

【100% Death Critical】だ!』


視界の一部に表示された彦星のステータス。


HPを含め全てのステータス1。

それに加え総合力を示すOVERALLが文字化けを起こしている。


これが過去の自分のステータス。

全ステータス1と関係があるのだろうか。


スミス『【Death Critical】とは"奇跡のタイミングで生じる即死判定"のクリティカル。

過去の淘汰はそれを並外れた集中力によって的確に当ててきた。

しかしこのEXステータスは"当たれば必ずDeath Criticalが発生する"というGGM権限じゃけ。

まさか電脳王本人が使ってくるとは。

全ステータス1とする弱点があるが復帰能力を組み合わせてるからとーっても厄介じゃのう』


スミスの言葉はのんびりしたものであったが、表示された数値に対し緊迫感が口調にこもっていた。


彦星「さて天裁だが倒れた場所が電脳城だったね。

復活の能力やアイテムは相手の意識がなければ無効となる。

そして一定時間が過ぎればお前の友は死ぬ。

時間との勝負だMr.B」


名前を呼ばれた仮面の男は肩を震わせた。

俺もあまりに絶望的な状況に歯を食いしばる。


天裁!お前の答えはこれなのか!?


思わず心の奥で叫び彼の手を強く握った。

不意に意識が飛ぶ感覚がした。



天裁の声がする。


私はいつも最後の詰めが甘かった。


瞬時に思いついた計画は上手く回ってきた。

しかし最後まで考え抜く事ができない。


確実性や完璧を追求しようとし、とっさで判断を求められると焦ってしまう。


さて現在はどのような状況だろう?

カウンターを受ける事を想定せず直撃したのか。

私はこのまま死ぬのかもしれない。

だがもしかするとそこまで織り込み済みだったのか?


憧れていた。

唯一電脳王に大きな深手を出した英雄。


最期の最後に自分の身を犠牲にして【(あかいろ)(やいば)】を放った淘汰さんを。


堕落した中でも彦星を倒す計画を立て続けていた。


最期はあの淘汰さんと同じように英雄的な死を迎えることまで考えていただろうか。


???「天裁、諦めるな!」


挿絵(By みてみん)


その声はレイブンさん……烏丸(からすまる)先生?


そうかその言葉に対して私は逃げたのか。

出来ることだけして結局逃げたのだ。

だからあの時先生も私のことを……。


いや違う。

この声の主は!

"元の日常を取り戻す"そう約束した友だ!


淘汰「今度は俺も乗り越えてみせる!

一緒に乗り越えよう天裁!」



圧倒的な戦力差があった。


一度でも攻撃を受ければ命の保証はない。


それでも立ち向かおうとした淘汰を見た。

それでも立ち上がろうとした天裁を見た。


そして私は諦めずに戦い抜きたい。

互いに交わした約束を叶えるために。


その姿を見た仮面の執事はその変化にすぐに気がついた。


Mr.B「My friends これを託します。

私と000様の想いをこの剣に」


渡された神速剣を手に取る。


彦星「!?

お前は誰だ!」


挿絵(By みてみん)


憑依体「元の日常を望む者だ」


突然目の前に現れた男。

白い髪に黒い服。

白い肌に赤い眼鏡。

まるで淘汰と天裁が合わさった姿だった。


その言葉に電脳王は曇りない笑顔を向けた。


彼が望んだ戦いは単純なぶつかり合いだったのだろうか。


不思議と手になじむ。

ジャグリングのように手の周りをグルグルと剣が回り始めた。


スミス『まさかあれは!

クリティカルを出すのに特化した多段戦術!

淘汰が得意としていた地獄流【飛円剣ひえんけん】!』


静かな空間にブンブンと風切り音が鳴り響いた。

何度も聞いたかのようなその既視感は意識を集中させた。


一瞬の間があった。


先に動いたのは彦星であった。

何か物が飛んできたかのように思える速さの突きだ。

しかし自然に動く体に任せると、頭が傾き紙一重にかわした。


彦星の放つ剣が袈裟斬りに振り下ろされる。


スレスレで攻撃を避けるとそこで回転させた剣を彦星にぶつけた。

剣は螺旋状に彦星の腕を斬りながら跳ね上がり【Revival】のダメージ表記を複数回出した。


この表示はHP0から復帰したという現象だろうか。


今度は彦星の腕を足場に跳ね上がり剣の柄を掴むと空中から後ろ首に高速回転した剣を投げつける。

その時点でやっと相手側の反応があり振り向きざまに斬ろうとする予備動作が確認できた。


この体の軽さは天裁が過去の淘汰を意識したスキル構成によるようだ。

ステータスを大きく下げ機動力に集中している。


空中で戻ってきた剣の柄を掴むと遠心力を利用しながら宙返りし距離を取った。

一歩遅れて彦星の剣が空を薙ぐ。


挿絵(By みてみん)


彦星「また外したか!」


再び着地時点で剣を回し地面に反動を付け前方に跳ね距離を一気に詰めた。

相手の上段斬りによる反撃に再び体をひねり避けた。


その時急激に肺が絞られるような痛みがした。

この戦い方はアバターの限界に近い動きのようであった。

反動がやってきたのだろうか。


回転した剣を牽制として投げ込み、側転で痛みを押えながら距離を取る、手元に剣の柄が戻ったのを確認すると膝をついた。


織姫「今何回復活の表記が出たの!?」


スミス『いや目視できておらん。

測定値は99回で止まった。

これ以上計ることはできないようじゃ、もう結果は……』


彦星は歯を食いしばり持っていた剣を黒く輝かせた。

紫の刀身から闇が集まる。


彦星「驚いた、想像以上だ。

これが過去の仮想空間において比類がないと言われた者の力。

だが不運だね。

君はたった1%を引くことが出来なかった。

ここまでの行動は全くもって意味を為さなかった。

さて長かった戦いも終わりだよ。

2045年の電脳生命体によるシンギュラリティ。

2050年のここアクアリゾートでの決戦。

そして2055年地球上からの人類消去はこれにて完了する。

人類の心の闇、その一撃を持って」


周囲の影が彦星に集まり始める。


咳込みながらうつむく。


体がもう動かない。

ここまでやり抜いても勝つことが出来ないのか。

何も意味がなかったのか。


静まった場に一つの凛とした声が響いた。


織姫「99%で復活する?

なら100回叩けばいい!」


挿絵(By みてみん)


振り返るといつも通りの不機嫌な顔。

織姫が腰に手を当てこちらを睨んでいた。

だが目が合った途端ニコッと笑った。


織姫「100回ダメなら1,000回よ!

諦めないことに意味があるもの!」


立ち上がると微かだが魔力が剣に宿る

天裁が残していた魔力であろう。

それを剣に宿らせると光り輝く剣となった。


諦めないことに意味がある、か。


無言で立ち上がると背中を押される感覚がした。

全身に強い魔力が集まる。


その主だろうか、聞き慣れた声がした。


Mr.B「後はLet’s go!です」


その言葉に動かされ、剣を強く握り魔力を込めた。

対峙した彦星を睨みつける。

合体した天裁から声がした。


(共に参りましょう我が友よ!)


淘汰は憑依体ごと強く頷き剣を構えた。


憑依体「極熱閃魔法(きょくねっせんまほう)……!」


周りの瓦礫が浮かび上がった時、声が重なる。


挿絵(By みてみん)


彦星「【電脳覇王剣(ダーインスレイブ)】!」

憑依体「【ディストラクションスラッシュ】!」


剣先に込めた魔力が彦星に向かって撃ちだされた。 


互いの攻撃はぶつかるように思えた。

しかし想定外の現象が起きた。


彦星から魔力が絶えこちらの波動が直撃したのだ。


彼の顔を見た時思わず息を呑んだ。

今まで見せた険しさとは違い穏やかなものだったからだ。



~仮想空間・アクアリゾート跡地


彦星「そうか。

今度こそやり切ったんだな」


明け方の空が見えた。

仰向けに倒れた体に日差しが当たる。


荒地となった娯楽都市。

地面の砂が対照的にひんやりとする。


既に僕の体は限界を超えていたらしい。

だが不思議な満足感だ。


淘汰との初めて戦いにおいて

慢心から何もする事が出来ず引き分けた。

その後悔から死ねなかった。


再戦に向け様々な準備をした。


追い詰める為淘汰の記憶を消した。

絶望を与える為100億の人類を支配した。

電脳生命体の神の力をありったけ使った。

最後は淘汰の上位互換の能力で戦った。


万全を期しそれでも負けた。


だがふたを開けてみると誤算が多かった。

【没落軍師】の策により脆弱性を突かれ

【ステータス1の廃人】の影に押され

そして【ステータス0の亡者】の信念に根負けした。


最後の技を放つ時点で寿命は尽きていたんだ。


だが全て出し切ったんだ。

充分という言葉では収まらない。


金閣、銀閣。


好き勝手していた僕と違う。

君達は電脳生命体から大きな信頼を得ている。


世代交代だ、後は任せるよ。

もう思い残すことは無い。


唯一心残りがあるとしたら神谷。


あの子の心の闇が晴れることだ。

彼女の元別人格Bとして生まれた僕の願いだ。

記憶はなくなっても淘汰、彼女を救って欲しい。


視界に入る黒い影。

上位電脳生命体フェンリルか?

そういえば亡骸を喰らう約束をしていた。


……いや違う。

人型の姿をした何者かだ。


しかしもう何も見えない。


遠くに落ちた紫色の覇王剣。

それを引き抜く音と共にある男の声が響いた。


挿絵(By みてみん)


那老(なろう)「これでこの世界のGGMは完成しない。

馬鹿息子の策略も、未来GGMの計画も。

そして彦星。

貴様のふざけた理想も全て俺の一存となる。

再生した瞳の勇者の剣。

【ダーインスレイブ】によって」

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