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【挿絵400枚】2055~ステータス0の亡者  作者: 烈火
第3章 没落軍師 天裁
31/83

☆メインストーリー3-5 「欲望の都市」※挿絵有

~仮想空間・娯楽都市アクアリゾート


挿絵(By みてみん)


一人街の外を出ようとする青年がいた。


この娯楽を許された世界。

一日に一度聞える不思議な声に気持ちが高揚する。

しかし気付くとそこに空虚さを得た。


ヘラヘラ笑っていたが何も感じない。

そこに感情の起伏などありはしない。


銀閣「天裁どうしたん?

また意味もなく徘徊か?」


アクアリゾートを管理するのは双子の電脳生命体。


彦星直属の部下で獣人。

金閣と銀閣。


意識が朦朧としている。

名前はそんな感じだっただろうか。

狐に見えるいや猫か犬か、それとも人間?


そのうちの一人が声をかけてきた。


金閣「なぁ足元大丈夫か?」


天裁「あはは、はははは」


銀閣「おーい。

どこいくんや?」


天裁「あははは。

ははははははははは」


私は何を言われてるのかよく分からなかった。

侮蔑されているのか?

それとも敬愛されているのか?

命乞いをされているのか?


ただ聞こえる物音が不愉快だ。

犬の遠吠えだ。

それが鼓膜を揺らし私の思考を妨げようとする。


視界が歪み色んな色に染まりどこに向かっているのか分からない。


静かな場所に向かわねば。

いつも向かう音のない場所。

そこにいけば必ず落ち着く。


笑い叫び笑い喚き笑い走り笑い噎せ笑い。


満身創痍になりながらその場所から逃げる。



~海底洞窟・出口


気が付けばそこは静かな場所

のはずだった。

邪魔者がいる。


巨大な物体。

亀のような機械のような。


よく分からない、視界が遮られ、気分を害し、穏やかな気持ちにさせない。


それがある限り私は正気に戻れない。


天裁「どけ……。

消えろ!!」


挿絵(By みてみん)


思わず叫んで放ったのは驚くべき事に光の波動であった。


自分はそんなことが出来たのか?

どんな名前の行動なのか?


鼓動が落ち着く。

ふと目に入る4人組。

彼らを見た瞬間全ての思考を取り戻した。

体に熱が戻る感覚がする。


それ程私にとって彼らは驚くべき存在だった。


挿絵(By みてみん)


死んだはずの親友Mr.B。

同じく電脳王彦星との戦いで消えた淘汰。

姿を消した仲間織姫。

学友の面影を残す少女。

名前の表記は000(ゼロ)と示されている。


かつての仲間達の姿だ。


天裁「久しく見る方々ですね。

状況を整理したい、少し話をしませんか?」



~仮想空間・街道



俺、淘汰は仲間と共にある男に連れられた。

洞窟を出ると既に日は暮れていた。


木々の生い茂る街道。

川が近くを通り流れる水の音が心地いい。

寒流であった海底洞窟と変わらない涼しさである。


仲間のそれぞれは天裁と面識があるらしい。

軽くだが今までの経緯を説明した。


この天裁という男。

海底洞窟で最も危険な機械亀を一撃で倒した。

しかもスミスじいさんからの通信でこの亀は彦星が操っていた機械兵器と酷似していることが分かった。


さて話している間に教えてもらった話について。


天裁はかつて彦星戦で共に戦った仲間だった。

前回仮想空間で闘った【(あかいろ)騎士団】団長チャラ民も同じメンバーだ。


彼に並ぶ強さだとしたらもし味方となればこの上ない力になる。


所属していた組織は【ギルドego】。

スミスが運営していたそうだ。


しかし天裁の顔色は非常に悪く、眼鏡から見えた目は(よど)んでいた。


天裁「私はいま不思議な気分です。

また会えるとは思わなかった。

まるで亡霊が集まったようだ」


000「死者の定義って何?

バックアップさえあれば再生できる。

死んだものも体を与えれば戻る。

人間のアバターも同じだよ、淘汰のように」


天裁「000さん。

気になっていましたがその声にその姿。

あなたは淘汰さんの幼なじみ神谷さんですか?

いえ本人ではない、話の仕方やトーンが違う。

なるほど5年の間に状況が変わったということか。

意識が混濁していて私も記憶が曖昧なんですよ」


振り返る長身の男、天裁。

眼鏡を上げ真剣な表情で俺を見た。


000についての説明は殆どしていない。

だが既に正体を言及するとは大分高い洞察力を持つようだ。


俺は記憶が消えたせいで偽物の学級委員長のイメージしかなかった。

でも雰囲気から察するにこちらに敵意はなさそう。


000の執事である仮面の男が親しげに話しかけた。


Mr.B「いやぁ会いたかったですよ!

My friend!

ただあなたも大分変わってしまわれた様子で」


突然天裁はハッとしたように立ち止まった。

そして俺らに真剣な表情を向けた。


天裁「私はなんてことを!!

時間が足りない!

本当はMr.Bあなたとはゆっくり話したかった。

さて担当直入に言いましょう。

淘汰さん早くここから立ち去って下さい!

人間は多分あの声には敵わない!」


その途端、犬の遠吠えが聞こえる。

意識が少し飛ぶような感覚がした。


周囲が身構えたが天裁は雷に撃たれるように振動し突然が豹変し始める。


天裁「あ。あああああ!

娯楽都市は楽しいですよ!

貴方がたとまた会えてよかった!

仲間と共に楽しい時を過ごせば、私の心にあるこの穴はなくなるでしょう!

あはははは!」


脇腹を小突かれる感覚がしてその方向を向く。

そこにはすごく機嫌が悪そうな織姫がいた。


挿絵(By みてみん)


織姫「何かあるわ」


ああ、嫌な予感がする。

すぐ近くに見える夜の華やかな都市。

声には出さなかった。


天裁の理知的な雰囲気。

それが一変してしまった。

なにか恐ろしさを示唆させた。


天裁「皆さん!

すぐ近くですよ!早く行きましょう!」


Mr.B「My friend! お待ち下さい!

まずはゆっくり話をしませんか!」


走り出す彼にMr.Bは慌てだす。

天裁は俺らを急かしているようでハイテンションのまま街を指さしては一定の距離を詰めるとまた走り出す。


不意に000が目の前に立った。


000「幻想は素敵だよね。

夢のままなら現実と同じ。

現実より素敵ならそれが現実でいい。

淘汰。

これから起こる欲望に耐えられる?」


淘汰「俺はみんなの日常を取り戻したい。

現状を変えたい、今の所それ以外の欲はない」


それに対し彼女は一つの提案をする。


挿絵(By みてみん)


000「なら今回は天使の輪を使わず乗り越えて。

圧政者との戦いで見せたその覚悟を見たい」


俺は静かに頷くと000の横を通り過ぎた。


仮想空間で一度アバターが死んだ俺は000によって亡者として動いている。


天使の輪とは俺の頭についている。

この(アバター)を作った管理者とコンタクトできるのだ。

つまり今まで困った時は000を頼ることができた。


恐ろしい強敵なら既に何度か越えてきた。

だがその心構えを説いてきたのかもしれない。

ならば今述べた事を貫くしかない。


後ろから000に対して織姫が話しかけた。


織姫「大丈夫よ」


000「何?信頼関係?」


織姫「別に」


思考が揺らぎ可視化された会話すらよく見えなかった。

とりあえず意識だけはしっかり持つことにしよう。


~アクアリゾート・高台


挿絵(By みてみん)


犬の遠吠えが鳴り響く。

その声に人々の歓声が鳴る。


それだけだ。


決まった時間に何度かそのアクションを起こせばいい。


奴らは単純だ。

快さと楽しささえあれば誇りなどない。


快楽のある世界。


そこに争いなどない。


電脳生命体GMの目指した人類の最終着地点。


電脳王彦星の目指す破滅とは違う。

我が導いた結論はそれだ。



~アクアリゾート・カジノ



淘汰「あれどうなっているんだ?」


気付けば見知らぬそこは建物だった。

そこには本来現実世界で待っているはずの人物。

怪しいコイン手にスロットを回すスミスじいさんがいた。

随分飲んでいるようだ。


スミス「おーう淘汰!

一緒に遊ぼう!

これはアクアリゾート名物のスロット!

理性を賭けてお金が入るんじゃ!

負けても楽しい買っても楽しい!」


周囲の客も笑いながら楽しく遊んでいた。

でも別にそこにそそられるものはない。


淘汰「あー、悪い興味が無い。

ゲームは好きだが賭け事はやらない」


不意に手に金色のコインが現れた。

それを握り潰すと消えてしまった。



~アクアリゾート・料亭



酷い目眩に襲われると大きな食べ物がテーブルに置かれていた。


ノアが手招きをして誘ってくる。


ノア「ねぇ淘汰!

一緒に食べよう?

このコインを使えば増えるんだよ!」


淘汰「すまない。

俺は飯を食うのが苦手なんだ」


手元に再び現れたコイン。

これを差し出せばそれを楽しめるのかな。


また握りつぶすと消えてしまった。



~アクアリゾート・宿屋



ベッドの上に織姫がいた。


織姫「淘汰!

今日は一緒に寝ない?

この宿屋はコインさえ出せば休みたい放題なの!」


淘汰「悪いな不眠症なんだ」


織姫「いやそういう意味じゃ」


返事を待たずコインを握り潰すと目の前の光景が消えた。


暗くなる。



~暗闇


よく聞こえないし何も見えない。

何も聞こえなくなった。


挿絵(By みてみん)


先程ほどの光景は一体?


『静かだな。

騒がしいものも見えないし聞こえない。

これは個人的に落ち着くな』


思った言葉が俺の声で返って来る。


何が大切なものを忘れている気がする。

このままじゃいけない。


『このままでいいだろう。

どうせ辛い現実が待っているんだ。

望めば何でもここでは出来る。

さぁなにか願ってみろ』


じゃあ一つだけ。


『なんだ?』


俺は前に進みたい。


自分の頬を強く叩き目を開けた。



~???


目が覚めるとその光景に震えた。


荒れ果てた廃墟徘徊する人間達。

それを二人組の狐の女が面倒を見ている。


人間達は狂ったように笑っていた。


だが一人だけ縮こまる青年がいる。

天裁だった。

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