☆導入部分2 ※挿絵有
ピーピーピー
聞き慣れた音色だ。
もはや体は覚えているようで、無意識に音を出す目覚ましを叩いた。
目を開ける。
「じーっ」
目を閉じる。
誰かいたような気がした。
おかしい、知らないやつがいる。
夢だ。
目を合わせるのは気まずい。
どうするか?
バチン!
急に程よい痛さのビンタが頬にあたった。
「痛った!
何すんだよ!」
「あら、起きてたの」
「いや、一度目開けてただろ!」
聞こえた声は独特な声だった。
鼻声で酒焼けしたようなしかし女性らしさはある声。
ひりひりした頬を抑えながら、ベッドから足を出して座る。
「何よあんた、誘ってんの?」
「随分下品な奴だな」
俺は悪態をつきながら睨みつけた。
目に入ったのは声にしてはかなり幼い見た目の女だった。
黒髪の二つ結びで、紫の変わった服を着ている。
ヘの字の口、上がった眉尻。
まさに不機嫌そうな表情だ。
誰だろうか、見たことあるような気がする。
しかし思い出せない。
「お前、誰だ?」
俺はつい口走った。
その女は俺の顔を覗うようにじろじろ見る。
まるで動物を見るかのようで不愉快だ。
「呆けたの?
まさか1900年代生まれ?」
「まさか、俺は2034年生まれだ。
来年で17歳になる」
「え?
それだとあんた、来年22歳になるはずだけど」
「はぁ?」
「だって今年は2055年よ」
俺は素っ頓狂な発言に呆れ果てた。
にわかには信じがたいが彼女に渡された携帯端末を見る。
【2055年7月7日】