☆メインストーリー3-4「海底洞窟」※挿絵有
~仮想空間・アクアリゾートまでの道
洞窟に入るとすぐ目の前に青い壁があった。
少しだけ揺れている。
まるで空気と水の境目を示しているようだ。
思わず口にした言葉が可視化させる。
淘汰「行き止まりなのか?」
俺は前を歩く3人に声をかけた。
仮想空間突入メンバーの黒髪の女性、織姫。
そして急遽手を貸してくれた2人組。
人類の脅威と呼ばれる薄桃色髪の女000(ゼロ)。
その執事、仮面の男Mr.B。
不機嫌そうな顔をした織姫がその壁に触れる。
織姫「この先の空間はどうやら水中みたいね。
水面が縦方向にあるみたいだわ」
現実世界ではありえない現象。
だがこの仮想空間であるからこそ納得は行く。
それにいつも通り何かしらの解決案はあるだろう。
Mr.B「ええ、この先は海中となります。
ですが息をすることは出来ます。
水の魔力が強いというだけです。
外気と変わりません。
観光スポットとして名高いのはそれが理由ですがただ……」
000「寒流?」
Mr.B「Yes,非常に厄介ですね。
待つのがお勧めですが生憎わが主、000様はせっかt……。
ごほん、善は急げを心掛けているので。
まぁ私達にかかればNo problemです。
行きましょう」
水温が何か関係があるのだろうか。
もしかしたら寒流かなり寒いのかもしれない。
~仮想空間・海底洞窟 寒流
広がるのは濃い青色をした深海だった。
進む程に沈んでいき高度が下がっていく。
その為天井から射す光が周囲の暗がりを照らし幻想的だ。
しかも水の中に浸かりながら息が出来る。
水を飲み込む要領でまるで魚になったようだ。
ほのかに海水の塩っぱさを感じる。
視界に表示された水温は20度程で涼しい。
周囲には色々な生き物が見えるがこちらを避ける。
ゲームでいうモンスターだろうか。
隣の000が肩を軽く叩いた。
000「淘汰は仮想空間に来たばかりだからこんなモンスターはあまり見なかったでしょう?
ここの敵は基本優しい性格で襲ってこない。
涼しい寒流、温かい暖流。
穏やかな気持ちでいられるから私はこの場所が好きなんだ」
淘汰「仮想空間は色んな場所があるんだな。
彦星の件が無ければ俺もこの仮想空間が好きになれたのかも」
初めてダイブした時の絶海の塔。
さらに頂上で見た雲の海。
猩騎士団のいた天空の城。
そして綺麗な砂浜に海底洞窟。
魅力的な風景ばかりだ。
正直建物ばかりの現実世界よりもいい。
だが本来の日常はあっちだ。
それを取り戻すために俺らは戦っている。
000「彦星か……」
不意に耳に入った憂いを帯びた声。
彼女の方に視線を向けようとした時だ。
織姫「ねぇみんな!
可愛いスライムいたから追ってたら
複数に追われたんだけど!」
Mr.B「Oh My God!
ここの敵は絡むと戦ってきます!
居ないと思ったら勝手に!」
こっちに向かって逃げてくる織姫。
Mr.Bが驚いて声を上げた。
確かに敵の数が多い。
俺らを盾にして織姫は指をさした。
織姫「でもあいつら雑魚よ!
Lv1しかないから!
圧政者に勝って
GMLv4まで上がった私の敵じゃないわ!」
現実世界から通信がきた。
じいさんの声だ。
スミス「そうじゃけ!
前回の戦いで織姫とぽちは強くなった。
今の織姫は人間でいうLv40に該当する。
さらにわしが作った便利アイテムあるぞい!」
おおそれはすごいな。
確かに猩騎士団戦は熾烈を極めた。
その過程で能力が上がったのか。
俺はLv0のままだが。
織姫は自信満々に俺らの目の前に歩みを進め、一つのカードを手にする。
それを掲げた瞬間驚くべき現象が起きた。
織姫が4人に分身したのだ!
各々髪型や服装が違う。
目がチカチカして酔ってきた。
織姫A(本体)「Gカード【増殖】!
GMLvの数まで任意の数増えることが可能!」
織姫B「つまり私達は4人!」
織姫C「あの雑魚も4体!
これでもう怖くない!」
織姫D「さぁあんたら戦いなさい!
私は寝るから」
どれが本体かは分からない。
そのままの姿であるAを本体としよう。
しかし分身の一言で修羅場となった。
織姫B「は?
あんたらが戦いなさいよ!
嫌ならあんたが行って」
織姫C「やーよ!
本体が代表して行きなさいよ!」
織姫A「じゃあ私が行くわよ!」
織姫B・C・D「どうぞ!どうぞ!」
織姫A「と言うとでも思った?」
何をやっているんだこいつらは。
しかもLv40相当だろ?
Lv1にびびってどうすんだよ。
Mr.Bは頭を抱えていたが000は意外と笑っていた。
ツボがよく分からないこの人。
サポートAIのノアが通信越しで補足説明をした。
ノア「これは【Gカード】。
別のGMが持つ能力を恒久的に行使出来るんだ。
今回はぽちの固有能力【増殖】の力を刻印したの。
試験的だけど便利でしょ?
スミスおじ様が作ったんだよ!」
000「へぇくそじじいにしてはやるね。
あはは、面白い」
スミス「おーう」
弱々しく相槌を返すじいさん。
やはり000に関しては苦手な相手なんだな。
Mr.Bは何か物言いたげだが織姫の戦いが始まる。
というよりも
織姫B「ぎゃ」
織姫C「ぐふ」
織姫D「げっ」
一方的なものだった。
スライムが一人一体ずつタックル。
平均200ダメージを受け姿が消えていく。
最後の織姫もタックルで倒れた。
織姫「やるわね……」
ダメージの基準はよく分からないがここまで圧倒されると敵が強いのかもしれない。
淘汰「なぁ。
敵もしかしてヤバい奴じゃないのか?」
000「あの女がLvに対して雑魚なのは確か。
ただ淘汰助けないの?
それなら放置して行くけど」
冗談だと一瞬思ったがこの人の事だから本気なのかもしれない。
事前にじいさんから貰った回復アイテムを取り出すとすぐに駆け寄った。
しかし激しく怒ったスライム達が囲む。
自業自得ではあるがこのまま復活させるとやられる可能性がある。
電脳生命体GMは倒れた状態で放置すると本当に死んでしまう。
ダメージを与えも受けもしない、すり抜ける特殊な体だが織姫を何とか守れないか?
そこへ鋭い一声がかかる。
000「Mr.Bやって」
Mr.B「Yes,my lord!」
000「ふざけないで」
ぐだぐだした掛け合いだったが表情は真剣だった。
後ろからビュンという風を切る音と共に仮面の男が迫る。
Mr.B「我に託されしはただ一つの神速剣!」
Mr.B「疾風斬・月華!」
その一太刀は神速の名に等しいものだった。
複数に見える程の剣の一振りがスライム達を吹き飛ばす。
俺はそれに合わせ復活アイテムを織姫に使った。
~海底洞窟 出口
Mr.B「寒流も暖流も基本的に敵は襲ってこないので安全ではありますが煽れば流石に……。
寒流は厄介でexステータスが敵に付きます。
ダメージが100倍となるのです」
織姫「ごめんなさい」
珍しくしゅんとする織姫。
000「大丈夫。
面白かったから」
織姫は強い視線を向けたが000は先程までの反応とは違った。
000「初めて他者と居るのは楽しいと思えた。
けど私は過去の私じゃない。
人間を辞めてしまったから。
だから今の私として接する事にする」
その言葉は瞬間的には頭に入らなかった。
しかし間を置いて少しだけ把握した。
スミスが俺に話していた000の正体。
"幼なじみであった少女ではない"
それに言及するものであるのは確かだ。
織姫はスミスの話を受けていなかったのか眉をひそめ怪訝そうに000を見ていた。
Mr.B「複雑な気持ちお察します。
ああ失礼致しました、こちら側の話です!
さぁもうすぐ出口!
アクアリゾートは目前です!」
仮面の男はにこりとこちらに笑いかけた。
あまり深追いはしない方が良さそうだ。
すると000が立ち止まりため息をついた。
000「当たりたくない奴に出くわした。
Mr.B、ヘラヘラしてる場合じゃない。
あいつがいる」
その相手を探す必要はなかった。
前を向くだけで視界に入ってきた。
怒号が響き渡る。
現れたのは機械でできた巨大な亀だった。




