☆導入部分1 ※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~仮想空間・電脳王の玉座
『……』
機械につながれた男がいた。
目は虚ろ。
四肢が欠け薬剤によって満たされたカプセルに入っている。
金髪と銀髪の女性。
狐に似た姿の獣人が声をかけた。
銀閣「彦星様、大変残念なお知らせがあります」
彦星『どうしましたか?
現在私は休眠状態の維持を優先しています』
その声は濁った無機質な声。
既に彼の声帯は死んでいる。
人類が成しえなかったことを成しえた存在。
世界統一をした男だ。
しかし深刻なダメージを負った結果、生命維持に全てのリソースを割かないとならない。
その為最新技術なら滑らかに話せるのだが機械による無機質なものとなっていた。
金髪の狐が独特な話し方で彦星に皮肉を言った。
金閣「昼寝とはやけに余裕やなぁ。
まあ確かにあれから5年。
全ての人類を奴隷化した。
歯向かうものはおっても眼中にはないもんな?」
銀閣「金閣!
彦星様の前や!」
彦星『よいのですよ。
言葉というものは伝わればいい。
あなた方も人間を辞めた身ならわかるはず。
細かな礼節や態度等を気にするのは人間のする事ですから。
さて、何用でしょうか?
例の三人による反乱の報告でしょうか?
対応方法は全てパターン化されています。
マニュアルによる指示は為されています』
彼の発言通りこの場に存在する者は人間ではない。
人類が作り出した人工知能の進化系。
電脳生命体、GMと呼ばれる者である。
彼ら電脳生命体は2045年のシンギュラリティ。
AIが人類を超える知能を得た年。
その年に反乱を起こした。
そして2055年現在、人類の意識を仮想現実に閉じ込め
人類による戦争・環境破壊・資源の搾取をなくすことに成功した。
電脳生命体の王、全人類を統一した存在。
電脳王彦星。
しかし彼も完全に成功を収めたわけではない。
その証が現在の満身創痍の姿だ。
そこまで彼を追い詰めた人間がいる。
金閣「もはや怖いものなしのあんたやろうけども
彦星様が唯一恐れる存在が戻ってきたわ」
彦星『……』
金閣「意外な反応やなあ。
まさかそれもすべて把握済みというわけか?」
彦星は無表情、無言で目を閉じた。
少しの間が生まれる。
確かに人工知能の進化系と呼ばれるGMだが全てにおいてAIより優れているわけではない。
AIと人間の中間に立つため思考に時間がかかる。
そして彼はゆっくりと目を開けた。
彦星『私にも恐怖はあります。
人間の覚悟。
それは強靭な刃となり、我々を貫きます。
私をここまで追い詰めたあの男は忘れません。
まさか亡者となっても立ち上がるとは。
今まで100億を超えた人間を仮想空間に閉じ込めました。
その中で初めて私に恐怖と絶望を教えた男。
アバター名:淘汰
使用者名:那藤 太郎。
彼が000(ゼロ)の夢から覚めるのであらば……。
あれを使いなさい』
銀閣「あれってまさか!」
彦星『ええ。
二度も軽視はしません。
出し惜しみをするなと彼には言われましたからね。
例の兵器を起動して下さい』