☆メインストーリー2-4「最後の試練」※挿絵有
~仮想空間・天空城への架橋
一難が去った。
ちび女が再び話しかける。
織姫「私達元々はギルドに所属していたの。
仮想空間組織ギルドego。
自分のエゴを叶える事を謳ったギルド。
所属してたメンバーは私、あなた、じいさん。
【ぽちの飼い主】ねこさん。
【厄災軍師】天裁。
【酔剣士】レイブン。
【菓子魔法使い】チャラ民。
その7人。
特にねこさんとチャラ民は幼馴染で仲が良かったわね。
ねこさんとあなたの関係について。
現実世界で上手くいってなかったみたい。
だけど本音を出せる仮想空間では家族のようだった」
そうかそうだったのか。
絶海の塔で浮かび上がった光景。
嘆くぽちの前に倒れていた誰かの面影を持った少女。
ぽちの主人は000(ゼロ)だったんだ。
そして正体はそのねこさん。
過去の俺が彦星と戦うことになった理由は彼女の死。
これまで全く意図がつかめなかった。
仮想空間にダイブできるアイテム、天使の輪を渡した事。
助けを呼べば助けると歩み寄ってきた事。
彦星の人工衛星による攻撃を阻止した事。
ぼんやりとした感覚だが理由が伝わってきた。
淘汰「000は仲間なのか?
ねこさんの件を踏まえると」
織姫「割と早く000の正体に気付いたわね。
ただ000が味方かは分からない。
関係が複雑なのよ。
元はと言えばあなたの影響が強かったの。
今のあんたは記憶が飛んだから忘れてるだろうけど。
彦星以上に人間を嫌悪感を持っていた」
淘汰「なんだそりゃ、人間なのに」
織姫「だから前はパンダ姿のアバターだったのよ。
まあ別に今更人間嫌いにならなくてもいいけど。
そしてねこさんはあなたの思想に強く影響を受けた。
人間の心はあまりに穢れてるって。
それが今の000と彦星を生み出したの」
淘汰「彦星が関係している?」
どういう関係性か気になったが遮られた。
立ちふさがる者がいたのだ。
織姫「天空城が目前、そして最後の敵がお出ましね」
目の前に現れたのは金色のパンダであった。
心の中でステータスの表示を呟く。
エルダーパンダ(金)
Lv999
HP:1/1
MP:1/1
ATK:1 DEF:1
INT:1 DEX:1 LUCK:1 SPD:1 OVERALL:1 or 999,999
特殊ステータス クイズに解けなきゃ即死よ☆
淘汰「おいおいなんだこれは一体」
金パンダ「そこの三十路疑惑のばばあに問題よ☆
[た]を十個集めると誰になる?」
パンダがおかまのような声で話しかけた。
いきなりクイズかよ。
しかもなぞなぞか?
それにしてはあまりにも安易な問題だ。
答えは"十た"。
つまり"とうた"だ。
これは多分俺の名前を……。
織姫「答えは【くそ雑魚コミュ障陰キャ野郎】
って私を三十路とか宣うなんてぶっ殺されたいの?」
金パンダ「大☆正☆解!
[た]を10個集めても会話には使えない。
結果としてはコミュ障突入決定☆」
織姫「私に喧嘩売ってる事含め大正解?
三十路とか言われもない侮辱よ!
これは宣戦布告ね」
いきなりメンタルがえぐられるような感覚がした。
こいつ今までのパンダとは大違いだ。
この瞬間だけで二人に精神的ダメージを与えてきた。
金パンダ「じゃあそこの犬……。
あらごめんね会話できないバカ犬の場合は回答権ないの。
じゃあそこの親子に問題、心無い職は?」
ぽちだって人の言葉は分かる。
めちゃくちゃ吠え散らかしている。
さて新しい問題か、心無い?
これは分からねえな。
って親子?
織姫「答えはくそ犬よ!
ねえ、親子って私を母親呼ばわりしてるの?」
金パンダ「大☆正☆解!」
織姫「ぽちあいつに特攻なさい!
あんた非常食って呼ばれてるわよ?」
なるほど、心がない職。
非情な職。
非常食か!
ただ非常食呼ばわりしているのは回答者のような。
しかしこのパンダは本当煽り上手だ。
基本煽る側の織姫が見事に手の平の上で踊らされている。
金パンダ「じゃあ最終問題ね。
そこのナイスノンケガイなアンタ。
定積分、∫π0 xcos2x dxの答えは?」
はぁ?
ナイスノンケガイとかいうパワーワード。
それ以上にいきなり出された数学の問題に焦る。
やべえよ、数学の勉強は学校ではしてたけどさ。
cos!?
dx!?
なんだ定積分って!?
しかも俺数学は一番苦手なんだよ、物理・化学も苦手。
そんで英語や地理・歴史、古文・漢文も苦手だ。
勉強嫌いだから豆知識とかをネットで調べるくらいで……。
金パンダ「ああもう仕方ないわね。
ヒントはあんたが向き合うべき人。
それが分からない最低男はここで退場ね」
急に金パンダは低いおっさんの声で話しかけた。
怖えなこのパンダ。
でも向き合うべき人か。
いきなり言われると頭が真っ白になる。
織姫「何ボケっとしてるのよ、数式の答え分かったわ。
電脳生命体の権限【脳内ネットワーク】を使ったの。
んでリスナーに聞いたから確認は取れてる。
さっき話した会話にヒントがあるじゃない?」
淘汰「リスナーって誰だよ?
いやそれよりさっきの会話か」
不意に000が思考をよぎった。
改ざんされた記憶ではあるが確か彼女は勉強が得意だった。
天使の輪に手を伸ばす。
~仮想空間・???
000「答えを知りたいの?」
声が聞こえ気付くと顎を掴みこちらを睨む000がいた。
赤い螺旋状の瞳が心を見透かすようだ。
淘汰「勉強、お前頑張ってたなって。
俺の16歳までの記憶が正しければの話だ。
確か高校受験時、私立大学付属を目指してただろ?」
000「でも父親に命令されてやってたの。
別に好きで勉強してたわけではない。
むしろあの父親や周りの人間共思い出すから反吐が出る」
000は顎から手を外す。
白い空間に一つだけ置かれた椅子に座った。
指鳴らしをしてピンクの酒が入ったワイングラスを掴む。
一瞬彼女が酒を手に取った事に戸惑った。
だがそうか俺以外の同級生はみんな成人してる。
淘汰「赤ワインか?」
000「いえ、これはロゼ。
赤ワインの濃さと白ワインの飲み口の軽さの良い所取り。
君も飲む?」
淘汰「遠慮するよ。
俺は16歳で時が止まっているんだ」
それを聞いた000は悲痛な顔をした。
ワインを飲みながら取り出した紙に何かを書き込み始める。
000「私【悪意の塊】とか【7つの大罪をまとめた者】
そう呼ばれてるけど、正直君には酷いことをしたって思う。
でも話さなければ君は私がどういう想いかは分からない」
淘汰「こんな言い方はしたくない。
ただ5年間の俺の記憶。
それをお前は都合よく消しては改ざんを繰り返した。
その事実は変わらない」
000はグラスを一気に飲み干すと、文字を書きなぐる。
000「すぐに理解しろとか分からせるとかはない。
やった事は悪い事と思ってるけど後悔する気もない」
淘汰「勝手な奴だな」
000「でもすれ違った考えを戻したい、やり直したいから。
はいこれ」
俺は紙飛行機を渡される。
記されていたのは先ほどの難しい数式の答えだった。
~仮想空間・天空城への架橋
淘汰「その答えはゼロだ。
難しくて詳しいことは言えないが」
このパンダが出す問題の答えは表面と内面を備えている。
表面では文字通りの答え、内面はそれに該当する人物。
金パンダ「まあ正解としておくわ。
その答えはあなたが成長する中で知る内容なのだから」
それだけ言い残すと金パンダは姿を消した。
目の前には目指していた天空城があった。
すると無線が繋がったようだ。
ホログラムからじいさんが顔を出した。
スミス『大丈夫だったか!?
パンダの上位種の反応があった、あれは初見殺しだ!』
淘汰「ああ、色々考えさせられる敵達だったよ」
今更来たのかと半ば呆れてはいたがある事実を聞く事に。
スミス『あいつら下級魔法フニラムで消せる。
織姫がそこらへん知っとるから楽じゃったろ?』
淘汰「はぁ?」
全く予想外の返事に素っ頓狂な声を上げてしまった。
おいおい、じいさん達が知ってたってことは……。
織姫「あら、GMでもど忘れすることはあるのねぇ」
他人事のように視線をそらし歩み始める電脳生命体。
文句を言おうとしたが下手くそな口笛で有無を言わせない。




