謎の充填
全ての謎が明かされる。
雪深い、長野の山にペンション古屋は建っていた。そのペンション、、、正確にはその隣の古びた空き家に向かって、1人の男が歩を進める。足元には雪が積もっていた。
「うん、問題の空き家はここか」
男は神名探偵事務所の主人であり、探偵である神名 保である。
保は今、件の空き家に調査に向かおうとしている最中だった。
するとどこからか大きな怒鳴り声が、保に向かって飛んできた。
「あんた何やってる。よそもんが、そこに近づくんじゃねえ!」
「あぁ、すいません。警察の方ですか?」
「!あんな奴らとは一緒にしないでくれ」
そう言いながら、ペンションから1人の男性がやって来た。男の目には深いクマがくっきりと浮かんでいる。
「というとあなたは、、、古屋 仁さん。私の依頼人ですか?」
保が目の前にやってきた男性に話しかけ、自身の名を名乗ると、男は目から涙を流して保をペンションに招き入れた。
男からは疲労の色が見て取れた。
保は心の中で、この事件の早期解決を自身に課した。
「さっそくですが、ご主人。今回の依頼の確認と、当時の現場の状況を教えてください。この事件。すぐにでも解決して見せましょう」
ペンションに入り、椅子に座ると保は早期解決を目指して、情報の収集を始めた。
「あぁ、お願いだ。頼むよ探偵さん。依頼料はあれで足りたかい?」
「ご心配なく。正直言ってもらいすぎなほどでした」
「じゃあ、場合によっちゃ返してもらわんとな。しかし、俺にはそれだけ出す価値があると思ったんだぜ」
「ありがとうございます。では事件の詳細を」
ズレそうになった会話からすかさず、保は話を戻す。
「あぁ、すまねぇ」
そう言って、事件後から今日に至るまでの情報が、男の口から語られた
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犬神家のチェックアウトを10:00に済ませた後、その日は客の宿泊の予約がなかったこともあり、10:30ごろ、恵は服を買いに行くことにした。
宿泊の予定は無いとはいえ、宿を空にする訳にはいかず、仁は1人ペンションに残ることにした。
そして10:50分、仁は恵が財布を家に忘れている事に気づき、妻に「財布を届けに行くから駅で待っていてくれ」とメールを打つと、山の麓の駅に向けて走り出した。
ペンションから駅までは歩きでちょうど30分かかる。
駅に着いた時、恵は駅にいなかった。
どこかですれ違ったかも知れないと仁は思い、ペンションに引き返した。
ペンションに帰宅しようとした仁は、隣の空き家に向かって足跡が続いていることに気がつき、それを追った。
足跡は昨晩降った雪についたものだった。雪は4センチほどの深さだった。
そして足跡を追った先で、仁はあるものを発見した。
そこには、首から血を流した恵が倒れていた。
妻は息をしていなかった。
仁は慌てて警察を呼んだ。
警察が着くまで、仁は片時も妻の元を離れようとはしなかった。
警察が現場に到着すると、現場の検証が始まった。
足跡は警察のものを除けば、25センチのものが道から空き家に向けて1本。27センチのものが空き家に向けて2本ついていた。
足跡は恵と仁の靴の大きさと一致した。恵の靴は25センチ、仁の靴は27センチだった。しかし、雪が浅いことと、雪が溶けかけていたこともあり、下足痕はうまく採取できなかった。
そして凶器は切り口からナイフのような物であると分かった。
現場には血を拭いとろうとした跡があり、血のついていないナイフも1つ落ちていた。現場の血は亡くなった恵のマフラーで拭き取られていた。近くに血に濡れたマフラーが落ちていた。
警察は足跡から古屋 仁を犯人だと疑ったが、証拠がないため逮捕を見送り、証拠固めを行うこととした。
警察はペンションの宿泊名簿から犬神家を次の容疑者と考えた。
4人家族の犬神家はみんなで山登りに出かけており、4人それぞれが自身とその家族のアリバイを主張した。
仁は家族ぐるみの犯行を疑ったが、警察は足跡のこともあり、仁の話を聞き入れてはくれなかった。
それ以来、警察は仁が空き家に向かって妻を殺害した後、後ろ向きに空き家を出て、その後足跡の上を踏むようにして現場に戻ったと考え、仁に任意同行を求めたが、仁はそれを拒否した。
以来、仁は保がやってくるまでの5日間、現場を保全するために空き家を寝ずに見張り続けた。
〜〜〜〜
「現場には他に何かなかったんですか?何かトリックに使えそうな何かが」
保は尋ねた。
「いえ、ありませんでした」
「その日は雪が降ったり、除雪車を使ったりして足跡が消えるような出来事はありませんでしたか?」
「もちろん。警察にも聞かれましたが、そんな出来事はありません」
「……分かりました。では最後に確認ですが、あなたは犯人では無く、あれ以来あの空き家を出入りする人はいないんですね?」
「そればかりは信じていただく他ありません。第一、私はあなたの依頼人です。そこは信じていただきたい。あと、空き家はしっかりと見張っていました。出入りは間違いなくありません」
「なるほど。となると、信じるに足りるストーリーはコレくらいしか無いな。幸いなことに、あなたはずっとあの空き家を見張ってくれていたんですから、あとは警察を呼べば解決ですね」
探偵は当たり前のことを告げるように言う。「謎は解けました」
仁が妻の生死を確認するほど余裕なのはご愛嬌ということにして下さい。次回、解決編!
久々に書いたので、登場人物の名前を間違えてないか心配です。
次回3月3日昼
→→
道→→空き家
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