秋葉原ヲタク白書46 eゲーマーの憂鬱
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第46話です。
今回は、大陸から亡命して来た天才eゲーマーは元新体操選手で…何とヲタク・コンプレックスの持ち主w
母国は、彼女の身柄確保のために秋葉原に腕利き?女スパイを差し向けますが、彼女達は警官隊に包囲され…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 "少女の自由"財団
「私達はGL」
僕より先に、サエないおばさんと太め少女のカップルが御帰宅してるw
ん?カップルでいいんだょね?女性の同性愛カップルで are you OK ?
「あ、何か今、あんなコトやこんなコト、勝手に妄想して誤解したでしょ?でもソレ、全部違いますから。私とこの子の間に性的な関係は一切ありません。むしろ、その逆」
「おかえりなさいませ、御嬢様方。別に百合でも、そうでなくても、ようこそ御帰宅くださいました…でも、じゃそのGLって何なのょ?」
「人権保護の国際NGO"少女の自由"財団の極東支部長でサツキと申します。そして、コチラの中華系美少女はリリル。上海から」
"上海帰りのリリル"か。
"リ"がひとつ多いケドw
しかし、美少女って太めもOKだっけ?
ココは、僕の推し(ているメイド)ミユリさんがメイド長を務める、アキバでも老舗の御屋敷。
アキバと逝う宇宙で生命の星を探す最前線なので"地球外生命探査バー"とも呼ばれている。
「私達の財団は、児童労働、人身売買、健康被害の世界的撲滅を目的とし、特に人権侵害に晒されやすい少女の立場から、少女婚、少女売春、教育機会の剥奪などと敢然と戦う国際NGOなのです」
「ヤタラ漢字が多いけど了解。"美少女保護"には日頃から取り組んで来たが、普通の少女にまで範囲を広げるとは斬新な視点だ。で、僕達に何の用?」
「みなさんは、このアキバに"スウェットショップ"があるのを御存知でしたか?リリルはソコから脱走し、今朝、私達の財団に無事保護されたトコロなの」
"スウェットショップ"は低賃金かつ劣悪な労働環境で働かせる"搾取工場"のコトだ。
非正規労働者専門の"ブラック企業"で、貧困女性や移民児童などを主な労働源とする。
その多くは開発途上国にあり、バングラデシュでは2013年、耐震性を無視したビルの崩落で1000人以上が死亡する事故も起きている。
ソレが…アキバでも?
「建て付け上は、あくまでパソコンのリサイクル工場なの。でも、実態は…リリル、この人達に話してあげて」
「実際には、中古パソコンをハンマーで叩き壊すのが仕事。防護マスクも与えられず、高レベルの毒性重金属に晒される毎日だった。ゴミ溜めのような部屋に押し込まれ、ソコから、歯ブラシとワイヤ入りのブラを使って脱走した。工場長は、大企業と契約して、タダ同然で私達を使い潰す。有害物質は東京湾岸の埋立地へ深夜に投棄してた」
「こんなコトが許されていいの?しかも、秋葉原のど真ん中で行われてるコトなのょ?アナタ達、秋葉原のヲタクにも責任があるんじゃないの?」
いや、ないだろw
で、どーしろと?
「事実を暴き、世の中に公表して欲しい!貴方達の責任で!」
「ええっ?何でそぉ何でもかんでもアキバのヲタクの責任にしたがるのか理解不能だけど、頼まれれば嫌と逝えない三代目江戸っ子なンで、とりあえず、事実確認だけはしてみましょうか?で、一体ドコにあるんですか?その"スウェットショップ"って」
「山手線と神田川が交差する高架下。ふれあい橋の袂でアキバ側岸」
げっ!"リトル広州"だっ!
その界隈は、一見、閉店したパーツショップが並ぶシャッター街なんだけど…
裏はヲタクグッズのコピー商品を企画・生産・輸出してる一大クラスターだw
ソコを仕切るのは、AIに操られ半分廃人になってる通称"センム"。
確かに、あのセンムなら、その位のコトは平気でやりかねないなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、センムのアイドルショップを訪問したら…
「ふざけンな!ヲレが搾取工場なんかやるハズねぇだろ!見損なうな!ってか、近頃はマジ人手不足で、完全に売り手市場なんだっ!この前なんか休みの日に、身銭を切って全員を(ディズニー)シーに連れてったら当然だ、みたいな顔されちゃって…ホントだぞ!」
「わ、わ、わかったょ。そんなに怒んないでょ、センム。あ、この"ひろみんが履いた靴下"って¥3000は安くね?買ぉうかな…」
「それから、最近じゃPCの中古部品も由来が厳しくチェックされるようになってンだ。だから、ウチも流行りの"ブロックチェーン"で生産プロセスの"見える化"ってのをやらされてる。コレをやんないと企業として生き残れねぇって変な世の中なンだ。ウソだと思ったら調べてみろ…ってテリィにゃチンプンカンプン(死語w)だろうから、あの何チャラ逝う女サイバー屋に調べさせてみろ。あのトランジスタグラマーの」
相変わらず昭和なんだょなセンムは。
トランジスタなんて知らないょ僕は←
「で、お前がココに来るだろうコトは、実は薄々気づいてた。でも、珍しくミユリを連れて来なかったコトだけは褒めてやる。ヲタクがメイドの尻に敷かれて喜んでるのを見るのはもーたくさんだ。で、ソレに免じて、今日はひとつ良いモノを見せてやろう。よーく拝んでけ。ちょっちだけょ」
「え、何が出てくんの?それからさ、ミユリさんの尻に敷かれるのもAIの尻に敷かれるのも、どっちも同じでしょ?あ、念のために逝っとくけど"ひろみん靴下"なら、もう買っちゃったから」
「バカ野郎。コレだょ」
センムが取り出したのは…フィギュアだ。
白レオタードに身を包んだ新体操選手が赤いボールを片手に爪先立ちしてバストとヒップを思い切り突き出す"萌え萌えポーズ"だ。
「え?コレって何かのヒロイン?"私達、新体操戦隊!私はボールピンク!(桃園ミキの声で)"なんちゃって?」
「顔だ、顔。よく見てみろ。見覚えアルんじゃないか?」
「え?…あ、あれ?コレってアニメじゃないンだね?ん?ま、まさか!」
リリルだw
しかし…何と逝うべきか、一言で逝うとツマリ"太めでナイ"。
造形の妙もあろうが、ソコソコに筋肉質な鍛えられた肉体美女。
あの"太めのリリル"とはエラい違いだ。
ほとんど、使用前・使用後って感じだょ。
どっちが使用前?
ってか何を使用?
「リリルって…新体操やってたの?かなーり昔に」
「やってたなんてモンじゃねえ。あの女は"国家隊"の候補だったんだ。オリンピックにも控えで逝ってる」
「えっ?!」
第2章 ヲタクが天敵
リリルは14才まで、大陸の国が威信を賭け推進してる国民的スポーツ新体操の花形選手。
ユース大会で全国3位となり、省代表として故郷に錦を飾り"国家隊"の候補にもなる。
日本から逆輸入された彼女のフィギュアが大陸の地下で出回ったのも、この頃だw
「でも、順風満帆だった私の新体操人生もソコで終わりだった。転機は、思いがけない形で、しかも、突然やって来た」
センムから話を聞いた僕は、胡散臭いサツキさん抜きでリリルを呼んで話を聞いている。
貧民窟?から脱走したてで、さぞかし空腹だろうとアキバ最強のホットドッグ屋で会う。
でも、リリルはチリドッグに手をつけない。
あれ?お腹は空いてないのかな。奢りだょ?
「ある日、国家体育総局の呼び出しを受け、私は"eゲーマー"への転身を迫られた。もう今日から、お前は新体操はやらなくて良い。今日からお前は"eゲーマー"になるんだ、と」
「え?国からゲームやれ、とか逝われちゃうワケ?すげぇな。ある意味、夢のような話で羨ましいけど」
「6才の時から新体操漬けの日々を送って来た。天分(才能)もあったと思う。自分も含めて国家が選んだ精鋭揃いの中で、決定的な挫折もなく、結果も出して来たハズだった。でも、誰かが私を見限った。コイツの新体操はココまでだと」
レオタードを脱いだリリルが送り込まれたのはeゲーマーが集うNTCと呼ばれる施設。
ソレが"ナショナルトレーニングセンター"の略と知ったのは随分後になってからだ。
そのNTCは上海にある。
アキバの約30倍の規模の電気街を有する上海のシリコンバレー"華強北"の一角。
そのビルは2階建てで全寮制、中では常時50〜60人がゲーム漬けの日々を送る。
大陸の国のゲーム人口は約5億人。
そのトップに君臨する"上海50"。
その居城NTCは、1階がトレーニングセンターで、2階に居室、食堂、洗濯場がある。
ただ、ヤタラと巨大な吹き抜けがあり、全体がeゲーム用のアリーナのようなつくり。
内装は億万長者の屋敷みたいに豪華だが…いや、ゲーム関連スタートアップのオフィス?
何しろ、ゲームロゴやキャラクターグッズの類が、ソコラ中に溢れかえっているからね。
リリルの話は続く。
「NTCでは給料まで出た。訓練生から国策ゲーマーまでランクがあるけど、訓練生なら年収200万円、中堅ゲーマーだと5〜600万円、国策ゲーマー、つまり私クラスだと1000万円を超えてた。因みに、NTCから一歩外に出たトコロにある町工場の工員の手取りは訓練生の約半分。しかも、NTCなら、宿泊費、食費は全額国家負担で一切無料な上でこの給料。極東にいる私達が、世界のゲーマーとオンラインゲームを戦い腕を磨くには、夜通し起きている必要がある。だから、起床はいつも昼過ぎ。結局決まった食事は、昼と夜だけになるけど、常に5〜6品がケータリングで運ばれて来てた。炒飯やら青椒肉絲、青菜の炒め物などの家庭料理が全て無料。新体操時代の厳しい栄養管理やカロリー計算とも無縁の世界で、大盛りOK、オカワリ歓迎。だから、私は…太った。す、少しだけだが」
いや、少しでは…
思わずクスリとやってしまったが、どうやらココは笑うトコロではなさそうだ。
無料中華の話に釣られ、またも順風満帆な日々ゲットで良かったネと思えたが…
「私は、常に不安だった。生来の反射神経の良さもあり、難なくトップeゲーマーの一角に食い込んだ。新体操より自分に合っているとさえ思えた。ところが、新体操の世界にもいたが、この世界にもいた。そう"ヲタク"がいたのだ。国家に選ばれた精鋭達との切磋琢磨は毎日が死闘だ。容赦ない試練に、どんな強靭な神経の持ち主でも、必ず傷つきボロボロになり、燃え尽き廃人になって行く。ところが、そんな中にも、ソレを楽しみ、自ら進んで廃人になる一握りの"ヲタク"がいた。"ヲタク"は、好きなコトにトコトンのめり込み、廃人になるコトを決して恐れない。むしろ、廃人化してからの方が強い。私は、そんな"ヲタク"に勝つコトは絶対に出来ないと思った。私は、心の底から"ヲタク"に恐怖した」
うーん。でも、ソレはもはや"ヲタク"ではなく、宇宙人か何かでしょ。
いやぁ、リリル。ソレで君はアキバに逃げて来たのか。そぅかヨシヨシ…
え?何?何だょ、その目つきw
「ついに堪え切れなくなった私は、先月NTCのセキュリティを破り脱走した。世界の"ヲタク"首都、秋葉原で真の"ヲタク"に出逢うために"亡命"したのだ。そして、遂に私は出逢った。真の"ヲタク"に。その人の名は…」
「ま、まさか。ぼ、ぼ、ぼ…」
「人工知能"アキバ皇帝"だ。"皇帝"は素晴らしい"ヲタク"であると同時に、世界最強のeゲーマーだ。チェスや囲碁の名人が次々AIに敗れ去るように、何れeゲーマーも次々AIに敗れ去る日が来るだろう。ところで、"皇帝"の代理人である"センム"は、テリィたんのお友達と聞いたが」
僕は少し慌てる。
「いや、決して友達ではナイんだ。センムとは。でも、ソレじゃ"リトル広州"が"スウェットショップ"だなんて逝ったらダメじゃないか。アソコは"皇帝"の直営工場なんだぞ」
「そこら辺の都合はよくわからない。私は、センムに言われてサツキとか言う女に口裏を合わせただけだ。因みに"スウェットショップ"の話は全部ウソ。私は、秋葉原駅に近いホテル"24"のスイートに泊まってる。金はあるので」←
「うーん。わかったぞ、センムだか皇帝だかは、何だかワカんナイけどサツキのコトをハメようとしてるンだな?サツキはサツキで、そうと知ってか知らズか、ヤタラ自分じゃなくて、アキバのヲタクの責任であーしろこーしろと指図してるワケだな?未だピースが足りなくてパズルの全体像は見えないけど、ココまでで十分に胡散臭過ぎる。"スウェットショップ"も大ウソとバレたし僕達は手を引こう。本件、コレにて一件落着!」
と宣言したトコロで店に入って来たのは…
「げっ!また、テリィたんかwどーして貴方は、いつもモメゴトの真ん中にいるの?」
「わっ!マスターキーじゃないか?!と逝うコトは…コレも国家対国家の複雑怪奇なモメゴトの産物?ソレもド真ん中かょ?あのなぁ外交問題をアキバに持ち込むのはヤメてくれ!」
「あぁ。またまた手間が倍になるわ。どーして秋葉原に来ると、いつも貴方がいるの?」
超ミニのチャイナ服を着た中華メイド登場。
彼女の名はマスターキー。大陸の女スパイ。
第3章 シネコンジャック!
コードネーム"マスターキー"は大陸の最強サイバー軍である総参謀部第3部2局61398部隊所属の天才ハッカーで目下、国内潜伏中。
あらゆる電子錠を開けるが、実は僕が通報して逮捕されるも捕虜交換で釈放され札幌でメイドやりつつ北海道の買収wに従事中だが…
何でアキバにいるの?
「実は、本国からの指示でモンハンやりに来たのょ。あ、ゲームのモンハンじゃなくて。私が狩るのは、ソコにいるリリル。彼女のコードネームを知ってる?"電子竜ナンだから」
「えっ?狩るってどーすんだ?まさか殺すワケじゃ…そーいえば、いつぞやお騒がせメイドのリンカの彼氏を末広町駅のホームから突き落として殺そうとしたょな!」
「人聞きの悪いコト言わないで!結局、重体で死ななかったでしょ!とにかく、今回は最初は国家体育総局からの指令だったからユル〜く考えてたら、さっきイキナリ、ステーキ、じゃなかったイキナリ、軍の作戦に格上げになった。だから、一刻の猶予もならないの。じゃゴメンね。追わないで。面倒臭いから」
そして、彼女はリリルの腕を掴んで小さな筒を床にコロコロ転がす…音響閃光手榴弾?
「伏せて!」
と、いつもならミユリさんが叫んで床に押し倒してくれルンだが生憎、今日はお一人様w
何が起きたのかニワカにわからズ、呆然と立ち尽くしていたら…急にヤタラと眠くなる。
意識が消え、僕は床に崩れ落ちる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後…なのかな?僕は目覚める。
先に目覚めたYUI店長がTVを見てる。
「おい、テリィ!またまたやってくれたな!あの中華娘、お前の客だろ?何も注文しないクセにベラベラまくし立てて、お前の連れて来たデブ専と一緒に出てったぞ。そしたら、何か急に眠たくなって…でも!そんなコトより、昭和通りが大騒ぎだ!映画ファンがシネコンをジャックして勝手に自分だけのロードショーやってんだってょ!何か愉快だょな」
「え?何?しかし、てっきりRX-78だと思ったら催眠ガスとはね。どの位、気を失ってたのかな。リリルは?マスターキーが拉致?
え?"秋葉原でひとりロードショー"だと?何ソレ?最近のワイドショーの見出しってヤタラと秀逸なのが多くね?」
「だから、熱狂的な映画ファンが、ハリポタの最新作を誰より早く見たくて複合映画館をジャックしたんだってょ。万世警察が包囲してるが、犯人はハリポタ見終わったら投降すると言ってるらしくて、上映が終わるまで万世橋は突入を見合わせてるそうだ」
え?"ハリーポッターと謎のサングラス"?
ハリーの丸眼鏡が黒サングラスになる奴だ!
ぼ、僕も観たいょ!
と、ソコへ早馬が…
「テリィさん!ああ、やっぱりココにいた。クイーンがお呼びです。例のシネコンジャックの件で…大至急"パレス"までお願いします!」
彼は、昭和通りを仕切るストリートギャング"セクシーボーイズ"の伝令だ。
クイーンと逝うのは、ヘッドの妹ジュリのコトなんだが彼女が僕を呼ぶ時は…
まぁロクなコトがナイw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
セクボの溜り場は昭和通り沿いにある国民的ハンバーガー店の地階で通称"パレス"。
伝令くんのキックボードに便乗?して駆けつけると既に電源席に関係者が集合してる。
あれ?ミユリさんもいる。
しかもメイド服のママだw
「あ、テリィ様。多分マチガイダだろうと思ってジュリに伝令さんを出してもらったのです。見つかって良かった」
「テリィたん!ミユリに隠れて、いつぞやの中華メイドと逢い引きしたみたいだけど、全部お見通しだから!アキバのメイド、なめんなょ!」
「ジャックされたシネコンから凄まじい電磁波が出てる。テリィたんの中華なお友達はウルトラ大容量なデータを宇宙に向けて送信中って感じ。一体何をしてるのかしら?ハリポタ最新作を宇宙人と鑑賞中?」
頭が上がらない系アキバ3女子の大集合だw
先ず1人目は、もちろんミユリさんで、御屋敷をつぼみんに任せて抜け出して来た模様。
同じくコッソリ抜け出した僕の行先と相手まで知ってるとはホント、僕達は以心伝心だ←
そして2人目は、セクボのヘッドの妹ジュリでアラサーなんだけども平気でセーラー服。
裏でスクールキャバやってルンで仕事着と逝えば仕事着なんだがヤタラとAVぽく見えるw
最後はセクボお抱えの女サイバー屋のスピアで電源席辺りに何台もPCを並べお仕事中。
でも、ハリポタを宇宙に向けて配信中って何?今、宇宙に逝けばハリポタが見れるの?
「しかし、僕の愛する大切女子3人組がお揃いとは、美し過ぎて、眩し過ぎて、夜なのにもう目が開けられないょ!今宵は女子会なンだね?楽しそうで良いなー。じゃね」
回れ右スル僕の襟をミユリさんが摘むw
「ジュリのトコロのギャングさんが、ジャック直前のシネコンへ超ミニの中華メイドが入って逝くトコロを見かけて、写メを送ってくれたのです。マスターキーさんは、マチガイダ・サンドウィッチズでテリィ様と遭われた後、シネコンへ直行したみたいですね。あと、多分リリルさんが御一緒だと思います。後ろ姿だけですが、太め女子も写っていたので」
「だ・か・ら!いつぞやの中華メイドは太めちゃんを連れてシネコンに籠城ナウなワケょ。あぁ!ついにリンカを超えるお騒がせメイドの誕生ねっ!今、現場は警察やらマスコミやらで大混乱、万世橋が非常線を張ったから、シネコンの中には誰も入れない。でも、とりあえず、ウチのチームを近くに張り付けてある。だから、走れ!テリィたん」
「最近のシネコンって、新作は全部デジタル配信になってるから、ウルトラ超高速で大容量データのやり取りが出来る。余計なコトを逝うけど、アキバ界隈で軍事レベルのハッキングが可能な回線があるのはシネコンだけ。あと、シネコンには入れないみたいだから、ますます余計なコトだけど、この手のサーバーって凄い勢いで冷却しないと逝けないので、誰かがいるとしたら、ソレはシネコンの最上階だから」
あ、念のために逝っておくけど、コレは全部3人が同時に喋ってルンだ。
で、コレを瞬時に聞き分けられるのはアキバ広しと逝えど多分僕だけw
10秒後、僕は再びキックボードの人となるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あぁ、テリィさん。もういらっしゃらナイのかと思いました。マチガイダで、中華メイドと逢引きしてたんですって?クスクス。しかし、大胆だな。怖くナイんですか?ミユリさんが」
シネコン前の非常線界隈は、今や野次馬でごった返し、頭上にはヘリが飛び交う騒ぎだ。
人混みに紛れて僕を待っていたのはセクボの精鋭、追跡チーム率いるリーダーなんだが…
誤解してる!笑
「頼むょリーダー。話せば長いンだ」
「OKですって。ところで、万世橋が来る前から界隈をグルグル回ってる黒いSUVがいて、実は気になってたんですが、さっき、シネコンの裏にある楽屋乗り込み口のある辺りに止まって、中から出て来たのがコイツらです。写メっときましたが、御存知の方々ですか?」
「うーん知らないwでも、制服警官が3人か。制服警官って普通はペアで動くのに3人連れはマズいょね。せっかくの制服が急にコスプレに見えてきちゃうな。まぁ車から降りるトコロを見られた時点でもうアウトなんだけど」
リーダーとシネコンの裏に回る。
シネコンは巨大な建築なので、昭和通りからかなり入った裏側は殺風景で非常線もない。
そもそも出入口も見当たらないが、目印みたいに制服"ニセ"警官3人組がタムロしてる。
よーく目を凝らすと植込みに非常口がある。
さらに目を凝らしてると扉が開いて中から…
出て来たのはマスターキーだょビンゴ。
止めるリーダーをかわし僕は飛び出す。
「おい!君達、ニセ警官だな?コスプレがヘタクソ過ぎるので逮捕する!」
「え?え?何者だ?お前は?」
「あらあら、テリィたんじゃない?よくココがわかったわね。でも、ホント、世話の焼ける人」
マスターキーが呆れた顔で僕の前に立つ。
僕は絶対に聞こうと思ってたコトを聞く。
「ハリポタ、結末どーなるの?ハリーはホントにサングラスになっちゃうのかな?似合う?」
「ダメょ!ここじゃ"ヘリの目"もあるから、早く車に乗りましょ。ホラ、御心配のリリルちゃんもこの通り元気でピンピンしてるから(誰も彼も殺すワケじゃナイのょw)。好きなトコロで落としてあげる」
「テリィたん!私、一世一代の大勝負に勝った!ありがとう、秋葉原!ありがとう、テリィたん!」
いきなり(太めの)リリルが突進して来て、棒立ちになってる僕をアッサリ押し倒すと、そのままマスターキーが発車を命じる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田橋から首都高外回りに乗ったSUVは、昭和なビルの谷間を疾駆する。
おーい、マスターキー!好きなトコロで落としてくれルンじゃナイのか?
ところが、マスターキーは部下を叱責中。
「…何を考えてンの?ソレにアンタ達、アキバのヲタクとは逝え、素人に変装を見破られてどーすンのょ。そもそも…え?テリィたん、何?取り込み中なンだけど」
「いや、何処で落としてくれるのかなって。まさか、このまま僕とリリルを人目のないトコロで始末…」
「や・め・て!ほとぼりが冷めるまで、秋葉原を離れて時間を潰してるだけょ。もうすぐだから待ってて頂戴。ホラ…」
マスターキーがカーナビをTVにスイッチ。
「…しました!シネコンジャックの犯人が、ついに警官隊に投降しました!予告どおり、ハリポタの最新作を見終わったのでしょうか?!…おおっ!女性です!"秋葉原シネコンジャック事件"の犯人は女性でした!」
レポーターの絶叫と共に、ヤタラ堂々と"シネコンジャック犯"が登場。
まるでオスカー女優のようにステップを降りカメラに向かってVサイン。
あ、あれ?サツキさんだ!
いや、サツキ…容疑者か?
「うーん。やっと投降したわね。何をグズグズしてたのかしら。やっと私の描いた"絵"になったわ。ねぇ、この車、アキバに戻して頂戴。JRの昭和通り口、で良いかしら?テリィたん」
「え?電気街口が良いな。少しひろみんの御屋敷で遊んで…じゃなかった、頭を整理スル時間が必要だ、僕には。ってか、マスターキーの描いた"絵"って何だょ?わ、わ、わ、何だょリリル?何か用か?僕に」
「テリィたん!私、貴方に相談がある。私はプロゲーマーになる。もう迷いは消えた。この秋葉原で、私はプロゲーマーとして、世界一有名になりたい!で、相談だけど、どうしたら有名になれると思う?」
なーんだ。そんなコトか。
そんなの簡単じゃナイか。
第4章 Lirixデビュー!
今や"AKIVAZ"は国内では最大規模のeスポーツのフェスだ。
会場となる東京湾岸の国際展示場には約1万人が押し寄せる。
ある晴れた日曜日、僕もミユリさんを誘って参戦している。
何しろ1日で3億円の賞金が動くのだw観客にもオコボレが…
あるハズないね笑
照明が暗転し1万人が固唾を飲む中、突如レーザービームが飛び交い、焔が焚かれる。
クラブDJのMCで登場した選手達は、大歓声に応えて手を振り次々とコクピットへ。
「エントリーNo.7!Lirix!」
リリルだ!彼女は見事に減量したボディを新体操"国民隊"のレオタードに包み登場!
瞬間、呆気に取られた1万人だが、数秒後、会場は爆発的な歓声と熱狂の渦だ。
僕もミユリさんも、もう周囲のみんなも全員が総立ちで拳を振り上げ"Lirix"をコール。
でもね"Lirix"のネーム入りのウチワを持ってコールしてるのは僕とミユリさんだけだ←
僕達をソンジョソコラのニワカなファンとは一緒にしないでくれ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて、今回も色々ピースが集まって、どうやらパズルの全体像が見えて来る。
コトの起こりは大陸の国の宇宙軍オペレーティングルームへのハッキングだ。
"醜女"を名乗るハッカーが全システムをハッキング、地上と船団をオフラインにする。
軍の対抗手段はことごとく"醜女"に妨害されて船団は自由を失い軌道を離脱し始める。
天才ハッカー"醜女"を倒すためには"醜女"を上回る反射神経、操作精度、高度な戦術理解の出来るeゲーマーを探す必要がある。
そして、白羽の矢が立ったのがリリルだが、彼女は前月NTCを脱走しアキバに潜伏中w
直ちに腕利きの女スパイ(マスターキーだね)に指令が飛び、リリルの身柄は確保される。
その後のリリルと"醜女"の戦いは熾烈を極めるが、瞬時に集中しソレを持久するリリルのアスリートとしての資質が勝敗を決する。
シネコンから発信されてたウルトラ大容量のデータは自由を取り戻した船団にファームウェアを仕込み直すために発信されたモノだ。
やっぱりハリポタじゃなかったねw
え?その"船団"って何の"船団"かって?
ソレが…どうも月移民船団だったらしいょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから"少女の自由"財団極東支部長のサツキさん、じゃなかったサツキ容疑者の話。
彼女は、まぁ正義漢ではあるが、惜しいコトにやや間違った正義の信奉者だったようだ。
つまり、人種差別主義者だったんだね。
彼女は彼女の心情を発信する場を求めてアキバを訪れ"センム"と出逢う。
持て余した"センム"は、最初は僕達に押し付けようとしたりしたようだ。
そうこうする内に、マスターキーの目に留まりシネコンジャック犯にされてしまう。
彼女は、逮捕の瞬間に殺到するマスコミ相手に一席ぶちたかったようだが失敗する。
パトカーに押し込まれる直前、高々とVサインを掲げるも、マスコミはソレも完全無視。
因みに"醜女"も同じ主義で、ホント、人種差別主義は負け犬を呼び込む格好の装置だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ゲームが始まる。
会場にDJ調の実況と解説がガンガン流れる。
決め技の1つ1つに大歓声と悲鳴が交錯する。
選手の表情は、数々の大画面に次々と写し出されるのだが…Lirixの回数が圧倒的に多い。
どうやら、僕のプロeゲーマーを目指すマーケティング指南に間違いはなかったようだ。
ショービジネスの常としてローアングルのショットも多いが、試合中のアスリートが発する緊張には淫靡と対極にある研ぎ澄まされたsexyがある。
アメリカンフットボールのチアリーダーに、アジアンビューティーは負けてない。
かつて、日本はインベーダーゲームで世界を席捲したが、その結果、ゲームと逝えば1人で黙々とやるアングラ感の強いモノとなる。
しかし、デジタル世代のeゲームは、そうしたアングラ感とは異次元の熱狂を、世界全体で共有する、良質なエンターテイメントだ。
そのeゲーマーの世界に今宵スターが誕生。
戦隊ヒロインに新体操選手が現れたのは1982年だが、新体操自体がオリンピック種目になるのは、その2年後の1984年のロス五輪から。
そして今、eゲーマーに新体操選手が現れ"AKIVAX"に挑み、彼女の視線の先にはeゲームがオリンピック正式種目となる未来がある。
その時、僕達は今宵と同じ熱狂と興奮の中で、新たな歴史の目撃者となるのだ。
おしまい
今回は海外ドラマでもよくモチーフに使われる"eゲーム"をネタに、天才eゲーマー、彼女を狙うNGO支部長や女スパイなどが登場しました。
TVで見聞きするNYの都市風景を秋葉原に当てはめながら、ネタを整理しつつ物語を展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。